2007年12月02日

豊潤なる企業 税務訴訟の専門家が語るひと味違った内部統制

豊潤なる企業―内部統制の真実


タイトルに惹かれて読んでみた。

社会的な成功である豊かさと、心の満足である潤いを加えてこそ、成功といえるという意味を込めてこの本のタイトルを付けたという。

著者の鳥飼重和さんは、税務訴訟の専門家で、企業法務の法律事務所では、最も多くの税務訴訟事件を担当しているだろうと語る。


西国立志編/自助論

最初の部分はサミュエル・スマイルズ著、中村正直訳の「西国立志編」、現代語訳は物理学者の故竹内均東大名誉教授訳、「自助論」を内部統制の本質を理解するために最も良い教科書として紹介している。

西国立志編


ある大企業の役員から、引きこもりの娘に送ったら「これが、私が求めていたものよ」と娘の自立に役立ったとの手紙を貰ったという。それが「西国立志編」だ。

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫


西国立志伝は550ページあまりの文庫本だ。この本で紹介されていたので、筆者も再度読み直しているが、19世紀のヨーロッパのおもだった人物が登場するので、なかなか面白い。

アメリカのエンロン、ワールドコムなどの大型不正経理事件をきっかけにして誕生したアメリカのSOX法、日本でも西武鉄道、カネボウ、ライブドアなどの不正経理事件が原因で、金融商品取引法(J−SOX法)が制定された。

2008年4月から待ったなしでJ−SOX法の施行が始まるが、J−SOX法に基づいた内部統制は、大変なペーパーワークがつきもので、企業の現場では負担に感じている人が多いと思う。


内部統制の2つの考え方

鳥飼さんは、内部統制の考え方として次の2つがあると語る。

1.内部統制を法規制と考えるやり方 
  これだと法規制をクリアさえすれば良いと考えがちなので、企業の成長には寄与しない。

2.内部統制を高い水準の経営管理と考えるやり方
  企業がさらに成長するための高い水準の経営管理と考えれば、企業の成長に寄与するものとなる。

内部統制の真の目的は、高い水準の経営管理の実現を通して企業価値の向上を達成することだと語る。

不祥事が起これば、企業に対するダメージは計り知れない。それは西武百貨店、カネボウ、ライブドアの例を見れば明らかである。

今までは法令遵守と売上確保が「車の両輪」だったが、これからは法令遵守がすべてに優先する「優先順位論」を取るべきであると。

企業のトップは、法令遵守が守られないのであれば、売上はいらないという明確な態度を示す必要がある。

法令等に違反する場合には、もはや議論の余地はない。

今や企業のトップが、不祥事が起こって「知りません、聞いていない」では済まされない。トップが知らないということ自体が、内部統制ができていないという重大な問題だからである。

ダスキンのミスタードーナッツでの肉まんの未認可食品添加物の問題では、ダスキンの社外取締役はマスコミに知られる前に、公表すべきだと提言したにもかかわらず、経営陣は握りつぶし、後に組織的な隠蔽をしたと見なされ、訴えられた。

マスコミで報道され、会社の信用を喪失する結果となったので、大阪高裁はダスキンの取締役に責任があると判断したのである。


節税目的の内部統制

鳥飼さんは税務訴訟の専門家なので、節税を目的に内部統制を構築することを提唱する。

アメリカの企業は、「税法の遵守管理」を目的に内部統制を行っていることを忘れてはならないと語る。

鳥飼さんは、1.日本では経営者が節税は経営上の課題と考えていない、2.適法な節税をする専門家が育っていない、3.適法な節税を法律問題と考えず、会計問題と考えていると指摘する。

節税分野は税理士も弁護士も弱い分野である。

しかしながら、うまく節税すればキャッシュフローが最大化でき、企業にとってのメリットは大きい。

経営者は、キャッシュフロー経営の本来の意味を理解すべきだと語る。


長期成長企業J&J

最後に鳥飼さんは、自助の精神という原則を応用して成長し続けている企業の代表として、ジョンソン&ジョンソン(J&J)を紹介している。

J&Jは創業して120年という長寿企業であり、実に74年間増収、23年間増益、44年間増配という記録を続けている。時価総額で世界11位、最も尊敬される企業の10位にランクされている。

J&Jは我が信条というクレドを持っており、経営方針に定めるとともに、従業員に対して社会的責任を自覚した行動をとるように定めている。

次のような内容だ:

「…恒常的な成功は、より高尚な企業哲学を遵守していくことによってのみ可能になる。…社会に対する包括的な責任を受け入れ、それを全うすることが、企業のより高度な利益の追求方法なのだ。」

J&J







J−SOX法による内部統制は、膨大なペーパーワークといい、普通は重荷と考えがちだが、いわば「攻め」の内部統制を鳥飼さんは提唱しており、参考になった。


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Posted by yaori at 23:41│Comments(0) ビジネス