2008年01月12日

ウェブ時代をゆく ウェブ進化論の梅田望夫さんのウェブ版「学問のすすめ」

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)
著者:梅田 望夫
販売元:筑摩書房
発売日:2007-11-06
おすすめ度:4.5
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ウェブ進化論の著者梅田望夫さんの新著。「ウェブ進化論」に次ぎベストセラーになっており、1月12日現在アマゾンの売上ランキングでは57位だ。

この本は、福沢諭吉西洋事情学問のすすめの2つの書物の関係になぞらえて、「西洋事情」が「ウェブ進化論」、そしてこの本が「学問のすすめ」にあたるウェブ時代の生き方について書いたものだと梅田さんは語る。

「ウェブ進化論」のように教養書として知識を得ようとすると、新規性が少なくて失望するが、ウェブ時代を生きていく人に対する指針として書かれたものだ。


梅田さんの経歴

梅田さん自身は、慶應の工学部を卒業後、東大の情報科学科でマスターを取った後、趣味の将棋や数学を生かした職業などを考えていたが、アメリカのバッテル研究所にあこがれ、それに近い会社としてADリトルに最低年俸で良いとして入社する。

ジェネラリストの経営コンサルタントではなく、専門性の高いコンサルタントをめざし、「レジス・マッケンナ」というテクノロジー・マーケティング戦略に特化したコンサルをロールモデルとして、ADリトルでも仕事をした。

その後社内エクスチェンジ制度を利用して、ADLサンフランシスコ事務所で勉強し、帰国して「ADL情報電子産業フォーラム」を立ち上げ、企業会員を集め、朝食会を中心としたフォーラムを3ヶ月に一度開催し、最盛時は年間1億円の売上をあげた。

このフォーラムの顧客人脈がその後のコンサルティングの仕事につながり、また梅田さんが1994年に独立してシリコンバレーに移住した時から現在に至るまでの顧客人脈となっているのだという。

ブログという新しいメディアに出会ってからは、自分の時間という希少資源を思いっきりブログにつぎ込み、自分のブログをスタートさせた。

有名なベンチャーキャピタリストジョン・ドーアは「若い心をもって、スタンフォード大学やMITを毎日うろうろ歩く」ことを若き日にやっていたというが、梅田さんもこれをロールモデルにして、CNET Japanを立ち上げた山岸さん(現グリー副社長)を窓口に、日本に出張するときは、山岸さんがこれぞと思う若い人材と会うことに努めていると語る。

そして会った一人がはてなの近藤社長だ。

ソフトバンクの孫さんが、Yahoo!を発掘する前に、まずアメリカのITに強い出版社ジフ・デービスに出資し、ZD Netを通じて、有望な企業の情報を集めたのと同じ発想だ。

梅田さんは500枚入る名刺ホールダーに、自分が仮に組織をやめて一人になったときに、自分の能力に正当な対価を払ってくれそうな人の名刺を埋めていくことをすすめている。

"in the right place at the right time"(時宜を得て)、運をつかむことができるための種まきだ。


学習の高速道路とその先の大渋滞

この本の主題になっているのは、「ウェブ進化論」で紹介されていた将棋の羽生善治さんとの対談で、羽生さんが言っていた、「学習の高速道路とその先の大渋滞」という言葉だ。

インターネットの発達により、知識は非常に手に入りやすくなったので、それを生かして、いかに生き、いかに仕事を選ぶのかが問題だ。

アップルは"iTunes U"というスタンフォード、UCバークレー、MITなどの全米の大学の講義を無料配信するサービスを2007年5月に始めたという。

i Tunes U






これからは世界のどこにいても、全米トップクラスの授業を、iPodにダウンロードして講義を受けられることになった。

学ぶ気持ちがあれば、いつでもアメリカの一流大学の授業を聴講できるのだ。

Googleは人類のあらゆる知識をデータベース化するGoogle Book Searchを2004年から始めている。日本語版も既にスタートしている。

趣旨に賛同したハーバード大学、スタンフォード大学、ミシガン大学、オックスフォード大学、ニューヨーク公共図書館と共同でスタートし、その後日本の慶應大学を含め多くの大学が参加し、既に100万冊のスキャンを終えたという情報がある。

マイクロソフトも大英図書館や、コーネル大学と組んで同様の活動を始めている。

人類の叡智として取り込むべき図書は数千万冊なので、丁寧にスキャンすれば一冊20ドルとして、数千億円の予算があればできる。

そのうちネットで検索すれば、過去の本すべてが読めるようになるのだろう。

梅田さん自身は「高速道路」を下りて、「けものみち」を20年近くも歩いてきたと語るが、ウェブ時代を生き、高速道路を走る「ネットアスリート」に対して、次のキーワードを挙げている:

1. Only the paranoid survive(偏執狂のみが生き残る)インテルの元会長のAndy Groveの有名な本の題名だ。競争の激しいIT業界、半導体業界で、一時は日本とのメモリー競争に敗れ、倒産しかかったが、CPUビジネスに転換し、生き延びたインテルのグローブ元会長ならではの言葉だ。

Only the paranoid survive






2. Entrepreunership 不屈の企業家精神 

3. Vantage point 見晴らしの良い場所に出て、自分のまわりを見渡すこと 


今の日本の若者には、力があっても自信がなさすぎるという。米国の若者は力がなくとも、自信ばかりある人が多い。両極端であると。


「18歳の自分に対するアドバイス」

梅田さんは、「18歳の自分」に対するアドバイスとして、次のようなウェブ・リテラシーを持つ事をすすめるという。

1.ネットの世界がどういう仕組みで動いているのかの原理は、相当詳しく徹底的に理解している。

2.ウェブで何かを表現したいと思ったら、すぐにそれができるくらいまでのサイト構築能力を身につけている

3.「ウェブ上の分身にカネを稼がせてみよう」みたいな話を聞けば、手をさっさと動かして、そこに新しい技術を入れ込んだりしながらサイトを作って実験ができる。

4.ウェブ上に溢れる新しい技術についての解説を読んで独学できるレベルまで、ITやウェブに対する理解とプログラミング能力を持つ。

これらが、ネットとリアルの境界のフロンティアで、新しい職業に就く可能性を広げるためのパスポートだという。


二人の日本人プログラマーが、例として紹介されている。

世界のオープンソースコミュニティで尊敬されている日本人として「まつもとゆきひろ」という天才プログラマーがいる。

島根県に住んで、島根県松江市のネットワーク応用通信研究所に勤務しているが、1993年にRubyというプログラム言語をつくった。

Rubyは世界で数十万人が使う、日本初の数少ない世界プログラミング言語である。

まつもとゆきひろは世界のプログラミング言語オタクのアイドルで、島根県議会は「地域資源」(人間国宝?)として捉えているのだという。

もう一人梅田さんの親しい石黒邦宏さんというプログラマーも紹介されている。

現在はシリコンバレーに住んでいるが、寝ても覚めてもプログラムを書いているという。石黒さんはシリコンバレーに移住し、IP Infusionという会社を立ち上げ、日本のアクセスに会社を売却し、創業者利益を得た。

自分の作品として自信を持って言えるプログラム、美しい作品を作るのだという。石黒さんはいままで、こいつはすごいなあと言えるプログラマーに一人だけ会ったという。

食事しているときと寝ている時以外は、ずーっとプログラムを書くか勉強しているのかのどっちかだってことが、コード見て分かるという。


最後に梅田さんは、「自助の精神」がより求められると語る。自助の精神に基づく勤勉の継続が求められるのだ。

先日サミュエル・スマイルズの「自助論」を再度読んだが、梅田さんのウェブ時代を生きるためのアドバイスも「自助」である。

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫


スマイルズの「自助論」は1858年の発刊だ。ちょうど150年前に出版された本だが、今も輝きを失っていない。いつの時代も目標を設定して、それを達成するために地道に努力する人が勝つ。

「ウェブ進化論」とは趣が異なる本だが、梅田さんの21世紀の日本、日本人に対するあせりを含んだ期待感がよくわかる Nononsenseな(きまじめで真摯な)本だ。


参考になれば次クリックお願いします。


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Posted by yaori at 23:28│Comments(0)TrackBack(0) インターネット | 梅田望夫

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