2008年01月16日

下流志向 多作多芸な内田樹教授の下流論

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち


専門は現代フランス思想論ながら、映画論、武道論、アメリカ文化など、幅広い分野で積極的に情報発信している内田樹(たつる)神戸女子大教授の下流論。

昔の仕事仲間で、24万社の顧客を持つ日本最大の間接資材のネットストアMonotaRO(ものたろう)の瀬戸社長にすすめられて読んでみた。

内田樹の研究室というブログが、多くの本を生み出している。

この本は、ひところの下流論ばやりの頃のベストセラーだ。

内田さんは1950年生まれということで、ほとんどのページに’’’(強調点というのだろうか?)で修飾された部分がある。最近の本には、この強調点はほとんど見られないので、ひさしぶりに学生時代の頃の本に出会ったような気がした。


エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」

最初に主題が、「学びからの逃走・労働からの逃走」だと説明されている。

筆者も学生時代に読んだエーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」のように、子供達の学びからの逃走、若者の労働からの逃走が起こっているのだと。

自由からの逃走 (1951年) (現代社会科学叢書〈第1〉)


筆者が学生の時に読んだのは、まさにこの表紙の本だ。当時の教養学部では、組織論とか現代の人間とかいったゼミが人気で、フロムの本も教科書の一つになっていた。

フロムが描いたのは、20世紀前半に市民が自由主義を捨て、ナチスドイツなどの全体主義に傾斜していく現象だが、現代でも同じような逃走が学びや労働で起こっていると東京大学の佐藤学教授は指摘している。


日本の子供は世界で最も勉強しない子供?

OECDの統計によると、日本の子供は世界で最も勉強しない子供になっているという。

にわかには信じがたいが、中学2年生の校外学習時間は1995年の世界平均が3.0時間で、日本では2.3時間だった。これが1999年に1.7時間に下がり、当時の調査国37ヶ国中35番めだった。たぶん現在は調査国中最低になっていると思われると。

ネットで検索してみると、次の資料が中央教育審議会の議論のなかで示されてた。

校外学習時間調査






この本の中で引用されているデータと若干違うが傾向は同じだ。2003年の調査では、主要OECD13ヶ国のうち、下から3番目の週6.48時間だった。

筆者の率直な印象としては、日本全体の平均はこの調査の様になっているかもしれないが、私立と公立の差が大きいではないかと思う。


勉強は何の役に立つのですか?

今の子供は「先生これはなんの役に立つんですか?」と聞いてくるという。ひらがなを学ぶといった小学1年生の学習からもだ。内田さんは「新しいタイプの日本人の集団」という。

「人を殺してなぜいけなんですか?」など、内田さんは答えることのできない問いには、答えなくてよいと語る。

気に入ればやる、気に入らなければやらない。そんな選択権があると思っている子供がいる。授業を受けるという不快を耐えているのに、先生にとやかく言われる必要はないと考えているのだと。


不快通貨論

このように不快が「通貨」として流通している。その起源は家庭だという。家庭内通貨として「他人のもたらす不快に耐えること」が機能しているのだと。

家族の中で、誰が最も家産の形成に貢献しているかは、誰が最も不機嫌であるかに基づいて測定されるのが、現代日本の家庭のルールだという。

「不快通貨論」面白い指摘だ。


青い鳥症候群

自分探しの旅で、世界を旅する人は人間的に成長する可能性は低い。本当に自分探しなら、親や近親者にロングインタビューした方がよっぽど分かるはずだと。

むしろ目的は、自分についての外部評価をリセットすることではないか。

勉強は何の役に立つのかと逃げだす子供、仕事をすぐに投げ出す若者は、捨て値で未来を売り払っているのだと内田さんは語る。

未婚化・非婚化と言われているが、現実には高学歴で高収入の人たちの方が、結婚率は高く、収入と学歴が下がるにつれて離婚率、未婚率が上がる。実は社会的弱者ほど、支援者が持てないシステムになっているという。

勉強しなくても自信たっぷりで、自己決定して学校の業績主義から離脱することが良いことだと思っているのが、低い階層の出身者の傾向であると。

労働からの逃走では、自己決定フェティシズムともいうべき、「自己決定したのであれば、それが結果的に不利益をもたらす決定であっても構わない」というメンタリティがある。

日本型ニートは、このような「自己決定」する若者たちの一つの病態と考察すべきものだという。

「青い鳥」を求めて、「こことは違う場所」を求めて、「今、ここでベストを尽くすこと」を拒否しているうちに、どうにも身動きならなくなってしまった。

日本版ニートはそのように形成されているのではないかと、内田さんは分析する。


こうすれば良いという示唆を出している訳ではないが、分析はなるほどと思う。参考になる本だ。



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Posted by yaori at 23:34│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション | 教育論

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