2008年05月23日

10年先を読む長期投資 澤上さんの長期投資のすすめ

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書 108)


さわかみ投信の澤上篤人社長の長期投資のすすめ。

日本のファンドマネージャーの中でも澤上さんは長期投資の第一人者だ。

澤上さんは37年前から長期投資の実践を始め、現在はさわかみファンドという長期投資専門のファンドをつくって、サラリーマンなど一般人を中心に12万人が投資し、資産規模も2,000億円に達している。

長期投資は、経済指標、相場動向、企業の業績見通しなどはすべて無視する。そのかわり「将来どんな社会を築いていきたいのか」をひたすら考えて、将来像を実現できるような企業を選び出し、株主として支援する。

社会をよくすることができ、自分の収入も増えて豊かになるのが長期投資の目標だ。花や野菜が育つのを待つのと同じ非常にシンプルでマイペースである。

澤上さんは預貯金信仰は今も根付いており、たしかに預貯金利率が7%前後の時は、預貯金が確実な運用先だったが、今、預貯金では財産を食いつぶしてしまうと指摘する。

「バビロンの大富豪」のあらすじで紹介した通り、「自分のお金にも働いて貰う」ことが必要なのだ。

長期の株式投資は定期預金金利よりも高利回りで、複利で運用することで、お金にも働いて貰うのだ。

日本の貯蓄率は世界でも群を抜いて高いと言われてきたのは、昔のこととなってしまった。日本の貯蓄率は高度成長時代の1975年には23%に達し、おおむね10%で推移していたが、2000年代に入って下落し始め、2004年度にはなんと2.7%にまで下落している。これは1949年以来の低い水準だ。

給料が伸び悩んだことと、社会保障費負担がふえたことが貯蓄率下落の要因だ。

貯蓄するどころか生活費まで削って暮らす人たち、貯蓄を食いつぶしていく人たちが急速に増えているのだ。

株式会社の原型は、大航海時代に船に出資して数年後安全に戻ってくれば利益を配分するというものだ。これは現代の長期投資と同じ考えであると。

澤上さんの基本となる考え方は次の通りだ。

1.株価はいつも景気や業績に先行する
その理由はいつの時代でも投資家の心理が行き過ぎてしまうからだと。

2.景気のおおきなうねりを先取りする

3.みんなで豊かになることを意識する

4.暴落したらご機嫌で買う

澤上さんは村上ファンドショックで株が下落したときも、サブプライムショックで下落したときも大量に株を買ったという。

バブル崩壊の時も、澤上さんの様な長期投資家がたくさんいれば、買って買って買いまくることで相場の自律回復も呼び込め、土地や株価の下落にブレーキを掛けられたのではないかと語る。

事実アメリカでは2001年9月11日の後、取引再開の9月17日から一週間で14%下落したが、出来高は市場最高水準だった。売りが殺到して市場がパニックになっている状態で、長期投資家たちは大量の買いを入れてニューヨーク市場を支えたのだと語る。

長期投資の実践は次の通りだ。

1.5年先、10年先の社会が必要としているものを考え、それを供給しようとしていて応援したい企業を徹底的に考えて選び出しておく。

2.そういった企業の株を相場暴落等の時に思いっきり買う

3.あとはのんびり5年、10年待つ

4.景気が上昇段階に入って、株価が上がってきたら保有株の一部を売る
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長期投資をしたい企業を選ぶには、自分が将来どいう社会をつくっていきたいのか、子どもや孫をどんな社会に住まわせたいのかを考えて将来像を描き、それを実現してくれそうな企業を長期投資で応援するのだと。

たとえば高齢化社会の日本で、介護人口の不足が予想される場合には、介護ロボットをつくっている企業を長期投資で応援するとかだ。

よく経営者を見て判断するというアナリストがいるが、澤上さんは、そういうアナリストは傲慢なだけで、経営者にすれば失礼な話だと。経営者はアナリスト対策でなく、経営に徹して貰えば良いと。

長期投資の売り時は、景気のうねりに乗って上昇期に入り、そろそろ良いところに来たなと思った時だという。さっさと利益確定の売りを出すという。

街に人出が出て、活気づいたり、若い人でもお金を派手につかっていると感じたときに、そろそろ利食いしようと感じるという。

ただし持ち株のすべては売らず、2/3とか4/5ぐらいを利食うのだと。そしてその利益を使って、景気下降場面でまた同じ株を買うのだと。

長期投資には「損ぎり」はないが、「縁きり」はあると。見込み違いの場合には縁を切るのだ。

澤上さんは、2000年にブリジストンがファイアストンのリコール問題で最大顧客のフォードと対決したときも、3日考えて結局応援することを決め、株を買い増ししたという。


投資信託

投資信託は信託財産なので、安全性は預金よりも高い。あとは運用能力の問題だ。

3,000本もある投資信託から銀行などにすすめられるままに買っては、銀行が儲かるだけだ。

日本の個人資産に占める投資信託の割合は、2004年の2.1%から2007年9月には5%にまで上がってきた。しかしまだ米国の14.3%などに比べて低い。

アメリカやヨーロッパでも1980年代には投資信託は1%程度だったのが、インフレ下の不況が長期化して、預金だけに頼ってはまずいと思った人たちが投資信託に資金を振り向け、10%を超えたのだ。ちょうど今の日本の状況と似ている。

投資信託には販売手数料と信託報酬の2種類がある。

5年以上にわたって流入が流出を上回っているのは10本ちょっと。毎月のペースになると1本か2本だという。

投資信託は販売努力を重ねるものではなく、売れてしまう物だと澤上さんはいう。アメリカでは2005年では54%がノーロード型(販売手数料ゼロ)だと。

澤上さんの勧める投資信託の選び方は次の通りだ。

1.10万円ほどの資金を用意する

2.販売手数料の高い投信は外す

3.運用期間を設定していたり、継続投資ができなかったりする投信もはずす

4.運用している純資産額が安定的に増えている投信を中心に、これはと思う物を1万円ずつ10本ほど購入する。

5.体験してみたファンドの中に、長期投資を基本的な運用方針に据え、真に投資家の財産作りに貢献するというところが見つかれば継続投資していく。

この方法ならすぐにでもできるし、リスクもないと思う。

これがさわかみファンドの運用方針である。

アメリカにはインベストメントカンパニーオブアメリカという過去74年間の運用実績が12.8%というすごいファンドがある。これは販売手数料を5.75%取るが、普通はICAファンドを10年、20年保有するはずなので、販売手数料の5.75%なんて気にしないはずという理屈だ。

高い販売手数料を課すことで、短期投資家を足切りし、長期投資家だけを対象にして純度の高い資金を運用して大成功し、現在の運用資産は11兆円だという。

直接販売の投信会社がねらい目で、さわかみファンドもそうだという。

ありがとうファンドというありがとう投信株式会社が2004年に設定した長期投資型のファンドがある。

札幌、甲府、長崎、富山、水戸の有力税務会計事務所を母体として、地元の人々の財産作りをお手伝いするために設立されたのだと。

地元の会計士達と澤上さんがファンドオブファンズの形で世界に投資している。

クレディセゾンが運営しているノーロードのバンガード社のインデックスファンドと、ファンドオブファンズの2本も注目だという。

澤上さんは日本各地で講演しているが、一般人の投資家が増え、おらが町の投信をつくり、資金が地元企業に使われ、地域経済の活性化につながるというような理想型で、長期投資が民間版の景気対策につながることを望んでいると語る。

筋肉質の企業かどうか見極めるには付加価値分析を使えという。付加価値とは経費と経常利益をすべて足したもで、5年から10年の期間で見る。

これからのインフレの規模は70年代の数倍になると澤上さんは予測する。というのは70年代は世界の人口は40億人だったが、先進国の人口は7億人で、30億人近い人は社会主義の計画経済にいた。しかし今や世界の人口は70億人で、先進国は14億人、中国沿岸部やインド南西部などの発展著しい地域の人口を加えると20億人。残りの50億人弱も計画経済ではなく、先進国の生活を目指している。

だからあらゆるものが不足するのは目に見えている。世界規模のインフレが起こる。一方給料は上がらず、実質的な収入は下がることになる。

長期投資には今が最高のタイミングだと語る。最高に熱い夏になるだろうと。


最後に澤上さんは「長期投資は国語ですね」という言葉を紹介している。

「どう生きるのか」、「どのような社会を築いていくのか」といった人間としての意志や思い、価値観を反映させたものである。

「世の中思い通りにはいかない」という達観も長期投資を楽にさせてくれる。

投資運用の初心者向けに書いた本で、明日にでも実行可能だ。自社のさわかみ投信のことを全然すすめないのも好感が持てる。

まずは1万円で投信を何種類か買ってみようという気になる。

お金を銀行に預けず投資するなら、おすすめの一冊である。


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Posted by yaori at 12:00│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | Financial Intelligence

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