2008年06月05日

パーソナルグローバリゼーション コミュニケーション能力は訓練可能だ

パーソナル・グローバリゼーション―世界と働くために知っておきたい毎日の習慣と5つのツール

パーソナルグローバリゼーション






筆者が駐在していたピッツバーグにあるカーネギー・メロン大学Institute for Software Research InternationalのProgram Directorで、グローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ社長の布留川勝さんのグローバル人材の要件。

布留川さんは2000年にグローバル・エデュケーションアンドトレーニング・コンサルタンツ社を設立し、現在は100社以上の人材開発プログラムのコンサルティングをしているという。

CMUの国際人材開発プログラムのプロモーターでもある様だ。

このブログでも紹介しているトム・フリードマンの「フラット化する世界」で通用する日本人に必要な要件を、「グローバル・プロフィシエンシー」として次の5つの構成要素に分けて説明している。

1.ビジョナリーシンキング
2.セルフエンパワーメント
3.コミュニケーション
4.ダイバーシティ
5.グローバルイングリッシュ


1.ビジョナリーシンキング

ビジョンがあなたのポテンシャルを決める。

筆者も好きな言葉だが、インテルのアンディ・グローブの本のタイトルの"Only the Paranoid survive"という言葉を紹介している。梅田望夫さんの「ウェブ時代をゆく」でも、これからの時代を生き抜くキーワードとして、Andy Groveの言葉が紹介されている。この本は梅田さんの座右の書だそうだ。

Only the Paranoid Survive: How to Exploit the Crisis Points That Challenge Every Company


ビジョナリーリーダーの代表の様なアンディ・グローブだが、偏執狂のみが生き残るとは強烈な言葉だ。

布留川さんは、妄想的(偏執狂的?)なビジョンを抱いて、狂信的に(一途に?)やり遂げる行動力がグローバルビジネスには必要だと語る。

ビジョンを実現するために、プロアクティブ(自ら積極的)に行動するのだ。


2.セルフエンパワーメント

年功序列の今までであれば、「私は課長(部長)ができます」というジョークの様な調整型人材でもやっていけたが、これからのエンプロイアビリティの高い人材であれば、次のように答えるだろうと。

「私は50名規模の部下のマネジメントであれば十分にこなすことができます。英語でのコミュニケーションも問題ありませんので、部下の国籍は問いません。得意なのは変革時に求心力を失った組織の立て直しです。具体的な私の実績としては…」。

自分の意見をはっきり述べるアサーティブ(Assertive)な態度がセルフエンパワーメントの実現には必要だ。

アサーティブとは、長期的な全体最適を可能とする思考力・実行力を兼ね備えたWIN−WIN志向の人物だという。

折れない心、オープンマインド(相手を受け入れる心)、セルフコンフィデンス(自信)、WIN−WIN志向などが具体的要件だ。

グローバルビジネスで評価の対象となるのは成果であり、そのために重要なのは問題解決のため、PDCAをまわして仮説に基づいて実行し、検証を行うロジカルなプロセスだ。


3.コミュニケーション

これがこの本で大変参考になった点だ。

布留川さんは、コミュニケーション力とは才能や経験ではなく、トレーナブルなスキルなのであると語る。

たとえば現在民主党の大統領候補を争っているヒラリー・クリントン議員とオバマ議員は、選挙コンサルタントがついて、何をどのように話すべきか毎日コーチングを受けている。

たしかに選挙戦序盤でヒラリーが冷たいという印象があり、予備選挙に負けつづけだしてから、時には涙を浮かべるなどエモーショナルな面を強調する戦術に転換したことは記憶に新しい。

コミュニケーション力の要件として次が挙げられている。

(1)メインポイントファースト
結論まずありき。たとえば「今日の話は3点あります」と話をはじめよと。

日本人同士のコミュニケーションでは最後まで結論を言わない傾向があるが、国内とグローバルなシーンと別の考え方をすべきだと布留川さんは指摘する。

(2)エレベータートーク
数十秒で本質を伝える能力。

エレベータートークとは、シリコンバレーで或る起業家が偶然を装って有名な投資家とエレベーターに同乗し、手短に事業内容の魅力を訴え、資金調達に成功したという実話に基づいた言葉だ。

エレベータートークのトレーニングに最も効果を発揮するのは、インプロンプトスピーチ(即興スピーチ)であると。1分程度で考えをまとめ、2分ほどスピーチをするというものだ。

(3)非言語表現
意識してことば以外を使う。身振り手振り、表情などだ。目を見て話すことは対日本人だと逆効果だが、グローバルなシーンでは重要だ。

(4)ストローク(自尊心を満足させる行為)
たとえば同僚に向かって"Good job!"とか声を掛けたり、相手をほめることだ。

アメリカ人相手の場合、良い点を過剰なほど評価し、感謝し、さらに直すべき点について"It will be even better 〜"といった切り出し方をして、改善を促す。

筆者もアメリカで部下のPerformance appraisalを半年に一回行っていたので、よく使っていた言い回しだ。


(5)質問力
大前さんは「質問する力」という一冊の本まで書いているが、布留川さんも重要性を語る。質問は理解を深めるだけでなく、質問者自身の視点や教養を表現する手段ともなる。

質問する力 (文春文庫)


体系的な質問スキルを習得している日本人はまだ少ない。

日本人によくあるクローズド・クエスチョン(答えがある質問)と、オープン・クエスチョン(多様な答え方ができる質問)を比較説明している。

布留川さんがアメリカのビジネススクールと共同で日本でセミナーを開催した時に、次のような質問が出された。

クローズド・クエスチョンはたとえば「あなたの大学は現在ランキング何位ですか」といったもので、答えるのは簡単だが、なぜ質問したのか意図がわからないことが多い。

それに対しオープン・クエスチョンは、たとえば「当社にはこういった問題があるのだが、あなたの大学ではどのように解決できますか?」といった質問だ。これには教授も生き生きと答えられ、盛り上がったという。

ちなみに筆者の座右の書、松下幸之助の「道をひらく」に次の文があるので引用して紹介しておく。

なぜ

こどもの心は素直である。だからわからぬことがあればすぐに問う。「なぜ、なぜ」と。

こどもは一生懸命である。熱心である。だから与えられた答を、自分でも懸命に考える。考えて納得がゆかなければ、どこまでも問いかえす。「なぜ、なぜ」と。

こどもの心には私心がない。とらわれがない。いいものはいいし、わるいものはわるい。だから思わぬものごとの本質をつくことがしばしばある。こどもはこうして成長する。「なぜ」と問うて、それを教えられて、その教えを素直に自分で考えて、さらに「なぜ」と問いかえして、そして一日一日と成長していくのである。

大人もまた同じである。日に新たであるためには、いつも「なぜ」と問わねばならぬ。そしてその答えを、自分でも考え、また他にも教えを求める。素直で私心なく、熱心で一生懸命ならば、「なぜ」と問うタネは随所にある。それを見失って、きょうはきのうの如く、あすもきょうの如く、十年一日の如き形式に堕したとき、その人の進歩はとまる。社会の進歩もとまる。

繁栄は「なぜ」と問うところから生まれてくるのである。


出典:松下幸之助 「道をひらく」

道をひらく


(6)I(アイ)ランゲージ
「あなたは、気が弱い」というYOUランゲージを使わず、「私はあなたがさらに強くなれると信じている」という様なIランゲージを使うのだ。

(7)ビジョンを語るスキル
ホンダが低公害のCVCCエンジンを開発したときに、本田宗一郎氏は「これでフォードに勝てる!」と喜んだが、開発した技術者達は「子ども達に青空を与えたかったのです」と宗一郎氏に意見したという話が紹介されている。


4.ダイバーシティ

多様な文化の違いを認識する知識と理解力。

DIEが重要だと。DはDescribe、IはInterpret、EはEvaluateで、これらが短絡化すると偏見や固定観念となる。

たとえば男二人が手をつないで歩いているのを見て、=同性愛者=気持ち悪いと発想するようなものだ。同性愛者であるかどうかわからないし、ましてや気持ち悪いというのは侮蔑だ。

以前は寿司やさしみを食べる外国人はまれだった。生の魚=野蛮人という発想が欧米人にはあった。

異文化を理解するためには水面下の価値観を知る必要があり、相手にあわせるスタイルシフトも重要だ。


コンテクストの違いと説明責任
人種によるコンテクストの違いがあるという。

ローコンテクストの社会では、言葉によって意思を伝えあうことが重視されている。代表的なのはスイス、ドイツ、アメリカであると。まさにアカウンタビリティ(説明責任)という発想が出てくるゆえんだ。

ハイコンテクストの社会は、日本、サウジアラビア、インドネシアなどだ。いわゆる「ツーカー」や「あうんの呼吸」といったものが通用する社会だ。

島国のイギリスは中間だという。


スピーチパターン
海外での討論で日本人がなかなか議論に入れないというケースが良くあるが、布留川さんは、これはスピーチパターンの違いだという。

ラテン系は前の発言が終わる前から発言しはじめ、アメリカ人は前の発言の終わりから発言し、日本人は前の発言との間に1秒程度間をおくという。

筆者はアルゼンチンに2年間、米国に9年間駐在していたが、布留川さんの説明のような「間」、スピーチパターンの違いは意識したことはないが、ビジネススクールの様な多人種が集まる場所だと特徴が顕著にでるのかもしれない。

5.グローバルイングリッシュ
英語を母国語とする人口は世界で3億4千万人だが、英語を公用語とする人口は14億人と言われている。

文法的な正確さよりも流ちょうさが重要だ。たとえば日産のカルロス・ゴーンさんや、元ソニーの出井さんがいい例だと。間違いを恐れるのは受験英語までで、英語学習は質より量である。布留川さんのグローバルエデュケーションのサイトには英語の勉強法が紹介されている。


最近企業派遣のMBAは減少しているという。

MBAにはこだわらないグローバル化が企業の研修の主流となってくるので、布留川さんの会社は、日本国内で1年間のグローバル人材強化プログラムを提供しているという。

特に欧米人とのコミュニケーションの注意点がよくわかる。参考になる本である。



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Posted by yaori at 12:23│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 趣味・生活に役立つ情報

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