2008年07月01日

ウェブ時代 5つの定理 梅田望夫氏の選んだ名言集

ウェブ時代 5つの定理 この言葉が未来を切り開く!


「ウェブ進化論」で一躍有名になったシリコンバレー在住の梅田望夫氏の最新作。

梅田さんは毎日4時とか5時に起きて毎日3−4時間も読書しながら、今まで1万冊もの本を集め、シリコンバレーを中心としたアメリカのビジョナリーピープルの言葉を研究し、変化の予兆を捉えようとしてきた。

そしてその金言を著作の中に、隠し味のようにして織り込むことで勉強してきたという。

いわば砂漠での砂金探しのように、膨大な量を読んだり聞いたりしても金言は本当に少ないが、いざ見つかると、だれもが生きるヒントを得られ、仕事に生かせる。未来を切り開く言葉だという。

そんな梅田さんが推奨する金言をこの本では紹介している。

最初のアントレプレナーシップ(起業家精神)では、梅田さんがメンターと仰ぐゴードン・ベル(DECの初期コンピューターPDPシリーズを設計したコンピュータ産業の先駆者の一人)の言葉(プログラム言語)を紹介している。

驚いたことにGordon Bellはすべての自分の著作、プレゼンテーション、論文などを自分のウェブで公開している様だ。

以下は彼のサイトに掲載されている"High-Tech Ventures"の梅田さんがピックアップした一節だ。

Start a high-information-technology company

if frustration is greater than reward

and greed is greater than fear of failure

and a new technology/product is possible then begin

exit (job);

get (tools to write business plan); write (business plan);

get (venture capital);

start (new company);

もしフラストレーションが報酬よりも大きかったら、そして失敗の恐れよりも欲の方が大きかったら、そして、新しい技術や製品がつくれるのなら、始めよ。
(仕事を)辞めよ
そして(ビジネスプランを書くツールを)揃え
(ビジネスプラン)を書き、
(ベンチャーキャピタルから)資金を集め、
(新しい会社を)始めるのだ。


この言葉はゴードン・ベルの"High-tech Ventures"の最初のページにプログラム形式で書いてある。


このような至言をシリコンバレーで活躍する人を中心に34人ピックアップしている。

それぞれ別のシチュエーションで発言したものを集めて、5つのカテゴリーに分類しtているので、次のようなマトリクス表をつくって整理してみた。

Visionary matrix





5つのカテゴリーとは:
1.アントレプレナーシップ
2.チーム力
3.技術者の眼
4.グーグリネス
5.大人の流儀だ。

スティーブン・ジョッブスは、4.のグーグリネスを除いてすべてのカテゴリーに登場している。梅田さん好みの起業家、ビジョナリーだということがわかる。

他にはグーグルのエリック・シュミット、ラリー・ペイジ、冒頭に登場した梅田さんの隣人だというゴードン・ベル、インテルのアンディ・グローブ、アマゾンのジェフ・ベゾスなどの言葉が上位に出てくる。

それぞれどの分野で発言が取り上げられているかを見ると、傾向がわかると思う。

グーグルのところでは「グーグルカルチャー」とか、「グーグル10ヶ条」とか発言者のわからない言葉も取り上げられており、全体では120以上の名言が紹介されている。

最後の部分では、先日紹介したスティーブン・ジョッブスの伝説のスタンフォード大学の卒業式でのスピーチで締めくくっている。

印象に残ったいくつかを紹介しておこう。


1.アントレプレナーシップ

☆パラノイアだけが生き残る。 アンディ・グローブ(インテル創設者)
 Only the Paranoid survive


インテル戦略転換


梅田さんの専門はIT企業の経営だが、考え方の核となったのはアンディ・グローブの考えであり、経営について指針となる本を一冊選べと言われたら、迷わずこの本を挙げるという。

筆者は英語の本は大体オーディオブックで聞いているが、この"Only the Paranoid survive"のオーディオブックを探したが、出ていないので、次のカセットでアンディ・グローブの話を聞いた。

アンディ・グローブがみずからの生い立ち、インテルでの汎用メモリーからマイクロプロセッサーに絞る戦略転換を語っていて、内容はほぼこの"Only the Paranod survive"と重なる。

このオーディオブックでは他にフェデックスのCEOとか伝説のマジェラン・ファンドのファンドマネージャー ピーター・リンチとかがインタビューされていて、参考になる。

Forbes: Great Minds of Business


☆「全く見ず知らずの人間でも信頼できる」ということを、eベイは1億2千万人ものひとたちに分からせたのだ。

eベイの創業者のピエール・オミディアの言葉だ。売り手の信用度をみんなで評価するシステムなどの歯止めはあるものの、この言葉通りネットの世界では性善説で行動でき、トラブルは思いの外少ない。

☆シリコンバレーの存在理由は、「世界を変える」こと。「世界を良い方向に変える」ことだ。そしてそれをやり遂げれば、経済的にも信じられないほどの成功を手に出来る。

アップルのスティーブン・ジョッブスの有名な言葉だ。シリコンバレー特有の世界観と、アントレプレナーシップの真髄を現していると梅田さんは語る。


2.チーム力

☆間違った人を雇ってしまうくらいなら、50人面接しても誰も雇わないほうがいい。会社の文化は計画してつくられるものではなく、初期の社員から始まって、徐々に発展していくものだ。

アマゾン創業者のジェフ・ベソスの言葉だ。一人では何もできない。ケミストリー(相性)があう同僚と働くことで、会社の成長は加速する。グーグルでは当初、5,000人くらいの規模までは、一緒に働く全エンジニアが個別に面接して、一人でもノーと言ったら採用しないというシステムを採っていたという。


☆人がなぜチームスポーツを好むのか、チームの一員となることを好むのか。リナックスを見ればよくわかるよ。

リナックスの発明者リーナス・トーバルスの言葉だ。

ネットでは顔も知らない見ず知らずの他人と共同することで、複雑なOSまでもが作られてしまうのだ。


3.技術者の眼

梅田さんが「ウェブ進化論」で冒頭に引用したのが、インテル創始者ゴードン・ムーアのムーアの法則だ。元々半導体性能は1年半で2倍になるというものが、現在ではより広く、「あらゆるIT関係製品のコストは、年率30%から40%下落する」という意味でも使われている。

これが基本中の基本であると。


☆私はただ「ムーアの法則」を追っかけ、その成り行きについてちょっと推測しただけだ。

シリコンバレーのベンチャー・キャピタリストの重鎮、ドン・バレンタインが語った言葉だ。ドン・バレンタインはアップル、ヤフー、シスコ、グーグルすべてに投資しているセコイアキャピタルの創始者だ。

「ムーアの法則」がインターネット業界で生きていることが分かる言葉だ。


4.グーグリネス

☆私たちは、グーグルを「世界をより良い場所にするための機関」にしたいと切望している。

グーグル創始者のラリー・ページの言葉だ。本当にそれを信念にしてやっているのが、グーグルのすごいところだ。


☆採用候補者は、技術的能力だけでなく、その「グーグリネス」によっても判断される。「グーグリネス」とは、人と協力することを楽しむ性格、上下関係を意識しない態度、親しみやすさなどからなる。

これは「ファイナンシャルタイムズ」に載っていた言葉だという。


☆会社は答えによってではなく、質問によって運営している。(中略)ずばりその通りの答えを提示するのではなく、質問をすることによって会話が刺激される。会話からイノベーションが生まれる。イノベーションというものは、ある日朝起きて「私はイノベートしたい」と行って生まれるようなものじゃない。質問として問うことで、よりイノベーティブなカルチャーが生まれるのだ。

グーグルCEOのエリック・シュミットの言葉だ。

大前研一さんの「質問する力」を以前紹介したが、質問によって会社を運営するという考え方が、グーグルの経営を貫く考えだ。

「一からすべて命令してほしいなら、海兵隊へ行けばいい」、「私たちは混沌を保ちながら経営していると思う」というのも、同じエリック・シュミットの言葉だ。

海兵隊のように命令に一糸乱れず従う組織ではなく、質問することによって、みんなが考え、それから会話が生まれ、ある意味活気ある混沌の中でイノベーションが生まれるという考えだ。

5.大人の流儀

シリコンバレーには、「2ちゃんねる」に代表されるような日本のネット社会特有の匿名文化とは異なる成熟した大人の流儀があるという。

☆私たちはフェースブックをオンラインコミュニティとして認識していない。実際に存在するコミュニティを強化する名簿として提供している。フェースブックに存在するのは、リアルライフに存在するもののミラーイメージだ。

ハーバードの学生名簿から始まったフェースブックの創業者マーク・ザッカーバーグの言葉だ。まじめに何か書き込む時は、実名を使うという文化である。

そしてパブリックという意識が最も顕著に表れているのが、ウィキペディアだろう。

☆ボランティアの人たちと働くことは、伝統的な意味でのマネジメントとは全く異なる。私は何かをしろと誰かに言うことはできない。私にできるのは、励まし、動機づけ、ガイドすることだけ。マネジメントなんか必要ないとも言える。ボランティアたちはじつに頭が良く、モチベーションが高く、自分自身をマネジメントできる人たちだから。

今や250言語に対応しているウィキペディア創始者ジミー・ウェルズの言葉だ。

梅田さんは「学習の高速道路」という言葉を「ウェブ進化論」でも羽生さんとの対談で仕入れた言葉として使っていたが、英語圏のウィキペディアの情報がどんどん蓄積されるのに対して、日本語のウィキペディアの情報は薄いということが、今後大きな差になってくるのではないかと語る。

「私たち一人一人がネット空間を知的に豊穣なものにしていこうという、決意を持つかどうかにかかってくる」と語る。

筆者はまだウィキペディアには投稿したことがないが、たしかに日本語のネット文化を作り上げると言う意味では、積極投稿も考えるべきだと感じた。


☆自分がやらない限り世に起こらないことを私はやる。

これはサンの共同創業者のビル・ジョイの言葉だ。サンはSPARCと呼ばれるチップ、JAVAプログラム言語を生みだし、ネットの世界を変えた。

最後に梅田さんはアップルのスティーブン・ジョッブスのスタンフォード大学での2005年の卒業式スピーチを引用している。

☆偉大な仕事をする唯一の方法は、あなたがすることを愛することだ。まだ見つかっていないなら、探し続けろ。落ち着いちゃいけない。まさに恋愛と同じで、見つかればすぐにそれとわかる。そして素晴らしい人間関係と同じで、年を重ねるごとにもっと良くなる。だから見つかるまで探し続けろ。探すのをやめてはいけない。

このスピーチの字幕入りビデオは以前紹介しているので、参照して欲しい。


カリフォルニア、シリコンバレーというと、筆者などは昔のママス・アンド・パパスの「カリフォルニア・ドリーミング」を思い出す。



筆者はシリコンバレーで仕事はしたことがないが、世界を動かす仕事の多くはシリコンバレーで生まれている。

梅田さんがシリコンバレーに惚れ込んだ理由がわかる。テンポ良く簡単に読めるので頭にスッと入る名言集である。


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Posted by yaori at 00:30│Comments(0) インターネット | 梅田望夫