2008年07月15日

サマージャンボ宝くじは有楽町で買うべきか?さおだけ屋完結編

2008年7月15日追記:

サマージャンボ宝くじが昨日(7月14日)より発売された。早速有楽町の西銀座デパート横の宝くじ売り場には長蛇の列ができている。

いらないお世話とは思うが、宝くじのあたる確率についてのクイズが載っている「『食い逃げされてもバイトは雇うな』なんて大間違い」のあらすじを再掲する。

「そんなの関係ない!」、「並んで買うプロセス、ワクワク感が楽しみなんだ!」という人もいるだろうと思うが、話のネタ、旬の話題なので再掲する。


2008年7月11日初掲:

「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 禁じられた数字〈下〉 (光文社新書)


前作「食い逃げされてもバイトは雇うな」に次ぐ下巻がこの「『食い逃げされてもバイトは雇うな』なんて大間違い」だ。

上巻のタイトルを下巻で否定するというタイトルなので、ふざけていると感じるだろうが、読んでみれば納得する。

いずれも「禁じられた数字」というコンセプトで首尾一貫している。

上巻は1時間弱で読めたが、下巻は240ページと若干厚くなったこともあり、筆者でも1時間強掛かった。あとがきにある山田さんの見込み通りだ。それでも軽妙なタッチで書かれているので、読みやすく、内容も参考になる。

山田さんは、数字には「日常で使われる数字」と「会計で使われる数字」の2種類があるという。

「日常で使われる数字」では、いかに人の感情をゆさぶるかがポイントになる。たとえば前作でも例として出されていたリポビタンDの「タウリン1000ミリグラム」だ。1000ミリグラムというと多いように感じるが、実はたった1グラムだ。

一方、「会計で使われる数字」は、いかに数字に感情を入れないかがポイントとなる。

そして「会計で使われる数字」は、「使うべき数字」と「禁じられた数字」があるという。それがこの本の主張だ。

ところどころにドリルがあって、それぞれ面白い。例えば:

☆「宝くじは有楽町で買うべきか?「この売り場から1億円が12本でました」という有楽町の交差点の宝くじ売り場がある。宝くじのシーズンになるといつも長蛇の列だ。はたしてこの売り場で買うのが正解か?

→答えは続きを読む参照。


☆自分のコンビニ店のすぐ近くにライバル店があります。資金をふんだんに使えるならば、あなたはどうしますか?(但しライバル店の買収はできないものとします)

コンビニ1






→答えは続きを読む参照。


禁じられた数字

山田さんは「禁じられた数字」は次の4パターンがあるという。
 

1.作られた数字

たとえば次のようなアンケートがある。

次の都市のなかで、一番行きたいところはどこですか?

A.ロンドン
B.パリ
C.ローマ
D.ハワイ

結果はハワイがダントツだったが、だからといって今ハワイが人気があるということにはならない。都市3つのとリゾート1カ所から選択させるというアンケートの質問がおかしいからだ。

よく見る投資信託のコピーで、「当社の投資信託10本はすべて素晴らしい運用成績です」というのは、100本投資信託を作って、運用成績が悪い90本はやめてしまえば良いのだ。

またアマゾンで売れ行きNo.1というもの作られた数字だ。関係者にしめし合わせて、1時間に集中してオーダーすれば、アマゾンのランキングは1時間単位なので、トップになれるのだ。


2.関係のない数字

冒頭のクイズの1億円が12本というのも関係のない数字だ。1億円が12本過去出ていても、自分に当たるかどうかは全く関係ない。

映画などでよく見かける「構想7年」とかいうキャッチコピーも、制作7年なら超大作だが、アイデアを7年考えていたからといっても、なんの意味もない。単に、なんらかの事情で映画化されなかっただけかもしれない。

政治家がよく言う、「この空港をつくるために、すでに800億円も費やしており、利用者が少ないからといって、いまさら中止できない」という話だ。過去のコストは「埋没原価」(サンクコスト)なので、大事なのは、今後採算がとれるかどうかであり、工事を続行した場合、赤字が拡大するなら辞めた方が良いのだ。第2東名高速なども、この基準で見直したらどうなるだろう?

つまり800億円というインパクトの強い関係ない数字を、思考停止させる道具として使っているのだ。


3.根拠のない数字

たとえば新しく上場した会社などは次のような計画を発表する。

2006年 売上 10億円(実績)
2007年 売上 20億円(実績)
2008年 売上 40億円(予測)
2009年 売上 80億円(予測)

これまで倍増で来ているので、大丈夫だと社長は言うが、そもそも市場規模が200億円程度の場合、毎年倍増はありえない。

この単純な思考から生じた「予測」という根拠のない数字は、本当によくあるケースだという。

「○○の優勝で、経済効果1000億円!」というのも、分析者によって経済効果の対象に含める範囲が異なり、「優勝セールで買ったから、冬のバーゲンでは買わない」というマイナス効果は当然計算されていない。


4.机上の数字

☆クイズ あなたは次の広告を見てどう思いますか?

「時給 1000円。月30万円可。寮完備」

時給1000円で月30万円だと、月300時間働くことになる。つまり休みなしで、毎日10時間労働だ。だから寮があるのだ。


役所が出してくる数字にも「机上の数字」が多い。

例えば国税庁の「中小企業の7割が赤字」。そもそも中小企業は本当は黒字なのに、赤字決算をして税金を納めないというところも多いので、実態とは異なる。

平均値も良し悪しはわからない。

たとえばセブンアンドアイホールディングスの鈴木敏文さんは次のように語っている

「例えばコンビニエンスストアでも、過疎地区ながら、ご用聞きなどのサービスを積極的に行って1日の売上が50万円の店と、過密地区で競合もほとんどなく、環境に恵まれて1日売上50万円の店では、同じ50万円でも全く意味が違う。平均値は全部足してならしたもので、そんな平均値と比べて高いか低いか考えても意味がありません。」


「計画」「予算」で多い「禁じられた数字」

ビジネスでは計画と予算で「禁じられた数字」が生み出されやすいと、山田さんは指摘する。

証券アナリストは予算を着実に達成することを評価する。予算を上回ると予算の精度が落ちる会社と思われ、逆に予算を下回ったら散々だ。

だから経営者の中には、予算ぴったりに収めるという人もいるが、これが計画信仰を産むのだと。

営業マンにノルマがある場合は、最低でも予算はクリアしたいから、みんな下めの数字でノルマを決定する。だから多くがノルマを超えて達成することになり、結果的に予算や計画を上回る。

山田さんは、オダギリジョーの出ているライフカードのコマーシャルのように、計画よりも選択肢(カード)だという。



成功するグラビアアイドルたちは、グラビアに出ているうちに、話術がうまいとか、演技がうまいとか、ブログを毎日更新とか、グラビア以外のカードを揃えている。だからチャンスが来たらそのカードを切って成功するのだと。

それと同じように、期日を切った計画を立てず、この場合はこうやるという選択肢をあらかじめ考えておくことが実際的だと山田さんは語る。


山田さんがすすめる二分法

会計人が好んで使う「費用対効果」という言葉と並んで、山田さんがすすめるのが「二分法」という考え方だ。

二分法を使えば、論理的に見え、そしてものごとをわかりやすくすることができると。

たとえば書評を書く場合、山田さんは読んだビジネス書が面白かった場合、「共感できた」か「新しい発見があった」のどちらに当てはまるのかまず考えるという。

本は新しい発見がなくとも共感できればそれなりに満足するし、また共感できなくても新しい発見があれば損した気分にはならないのだと。

山田さんが会計士として経営者にアドバイスするときも、「売上を伸ばす」か「費用を減らす」かどちらにするかといった二分法から本題にはいるという。


「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い?

「食い逃げされてもバイトは雇うな」というのは、たとえ店番がいなくて食い逃げされても、食い逃げの損よりアルバイトを雇うコストの方が高いので、バイトを雇わない方が良いという会計学的発想だ。

しかし、これは机上の計算で、実際にバイトをやとえば、店番以外にもバイトにチラシ配りをやらせるとか、バイトを教育して2号店をオープンさせるとか発展的なアイデアもある。

二分法による2者択一ではなく、両方とも一挙に解決する「妙手」を考えるのが経営であると。


ここでまたクイズだ。

☆あなたは地方都市にある主に専門書を扱う書店のオーナーです。地方では大型店ですが、ネット書店の台頭とか、全国チェーンの書店の進出にさらされて、このままで行くと尻すぼみです。この状況を打開する妙手はどんなものが考えられますか?

答えで挙げてあるのは、ジュンク堂の取った戦略だという。

→答えは続きを読む参照。


ヘンリー・フォードの妙手

ヘンリー・フォードはT型フォードで成功したが、世間からはさらなる自動車の低価格化が要望されていた。一方工場では低賃金で働く労働者の高い離職率に悩まされており、低価格化と賃金の利害が対立していた。

そこでフォードは当時1日1〜2ドルの日当が普通だったのに、一挙に労働者の賃金を1日5ドルにアップして、自社の労働者が車を買えるようにして、自動車市場を拡大させ、売上を伸ばして高賃金でも継続できる効率的な生産方式を編み出したのだという。


最後に山田さんは、「会計がわかればビジネスがわかる」的な過大な評価に対するアンチテーゼとしてこの本を書いたという。元々はもっとどぎつかったのだが、内容を何度も書き直してマイルドにしたのだと。

計画や効率化で「禁じられた数字」を生み出す風潮に違和感を覚えていたのだと。

この本で数字のセンスをつけて、複数の視点を持ち、妙手はないかと考える力を鍛えるのが、この下巻の使命だと。


たしかに面白く考えさせられる本だ。またもやベストセラーになるだろう。簡単に読めるので、是非一読をおすすめする。


参考になれば次クリックお願いします。



ドリルの答え:

☆「宝くじは有楽町で買うべきか?

→どこで買っても宝くじの当選確率は同じ。


☆自分のコンビニ店のすぐ近くにライバル店があります。


→答えは「挟み撃ちする」だ。こうすればよっぽどBチェーンが好きな人でない限り、Bチェーンで買う人は根絶やしできる。

コンビニ2







☆あなたは地方都市にある主に専門書を扱う書店のオーナーです。

→必ずしも正解は1手だけではないだろうが、ジュンク堂の施策は、「座り読みコーナー」を設けるだ。



Posted by yaori at 13:01│Comments(1)TrackBack(0) ビジネス | 山田真哉

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この記事へのコメント
初コメントです。
「monotaro」さんと検索して来ました。
この会社は米amazonより一枚上手だと思います。
瀬戸社長にも触発されて起業の準備をしている24歳です。
瀬戸社長は、やはり頭の回転が早い方ですか?
Posted by tahara at 2008年07月18日 18:37