2008年07月27日

アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書

アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書


最近出版されたアメリカの高校生が学んでいる経済の教科書の要点を解説した本。

同じような題では、2005年に出版された次の本がある。

アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ


実は後者は、アメリカの高校で教えている経済学の授業で使われている教科書をそのまま訳したもので、大和総研教育事業部が出した本だ。

今年大学の経済学部に入った息子にもこの本を読ませた。日本の大学の経済学の授業よりも実戦的で、役に立つと思う。

アマゾンで載っている出版社のコメントを引用すると:

「アメリカで高校の教科書として版を重ねている書です。
内容は、もくじをみるとオーソドクスにみえますが、中身はかなり、いやまったく違います。日本のそれとは。
何が違うのか?
大学で経済学を学ぶある学生はこう感想をもらしました。
「こわい」
そうなんです。リアルな経済学なんです。
キーワードは「意思決定」。
機会費用、トレード・オフ、クリティカルシンキング、知識よりは考え方が重視されていて、おそろしいほどよくわかります。
使われている概念は大学レベルですが、数式を使わず、経済的思考を身につけ、概念を使いこなせるまでを目的としています。
高校生、大学生はもちろんのこと、特にビジネスマンにはことにお勧めしたい書です。アメリカのビジネスのパワーはこんなところにあったのか!と目からウロコです。」


なにせ高校の1年間の教科書なので、翻訳でもボリュームがある。原著は1万円もするようだ。

Economics: Principles and Practice


別の本の紹介が長くなったが、なにが言いたかったのかというと、こちらの本は実は「アメリカの高校生が読んでいる経済学の教科書」ではないのだ。

正確に言うと、NCEE(アメリカ経済教育協議会)の高校生の経済学講義についての指導要領20項目に従って、日本の大学生など向けに解説した本である。

だから前者と後者は全く別物なのだ。

どちらが良いともいえないが、この本は翻訳ではなく、指導要領に沿った解説本なだけに、わかりやすい。

目次と20項目とは次の通りだ。

第1章 家計の経済学
 希少性
 インセンティブ
 効率的な選択
 取引とお金
 労働
 税金
 利息

第2章 企業の経済学
 起業家
 企業
 企業は競争する
 均衡価格の作り方 その1 市場価格
 均衡価格の作り方 その2 消費者の気持ち
 均衡価格の作り方 その3 売り手の気持ち
 賃金

第3章 金融の経済学
 家計と銀行
 企業と銀行
 金利
 パーソナルファイナンスで見る金利

第4章 政府の経済学
 パーソナルファイナンス国債編
 財政政策
 経済成長と生産性の向上
 市場の失敗

第5章 貿易の経済学
 貿易
 外国為替市場

それぞれにつき、簡単な解説と図が載っている。

いくつか印象に残った点を紹介しておく。


72のプリンシプル(預けたお金は何年で2倍になるか)

この本の「はじめに」で紹介されているが、預けたお金が何年で2倍になるかは、72を金利率(パーセント数)で割ればよい(複利計算)。

たとえば現在の低金利の1%であれば、資産を倍にするには72年掛かる。

これが5%だと14.5年。10%なら、7.2年で倍になるのだ。


学歴別のアメリカ人の平均年収

今週ワーキングプア特集であろうか、高校を中退して同棲している日本人のティーンエージェーの生活が紹介されていたテレビ番組を見たが、高校をやめて仕事を探すようになって、はじめて高校卒業という資格が大きく採用基準に影響していることを知ったと語っていた。

この本では次の表が紹介されている。

アメリカ人の平均年収

16歳で高校を中退した人     $18,876
高校を卒業した人         $26,208
大学卒業生            $42,796
大学院修了生           $54,600

出典:アメリカ労働省 2000年統計

上記はあくまで平均であって、ハーバードなどの一流MBAを卒業した人が、投資銀行やコンサルなどで働く場合の初任給は20万ドル前後だという。初任給が20万ドルということは、実力があれば100万ドル年俸などざらだ。


ちょっと横道にそれるが、実はアメリカは高校までが義務教育なのだ。

日本の様に国が「義務」として決めているわけではないと思うので、正確な意味では「義務教育」ではないのかもしれないが、K−12と言って、幼稚園年長から高校3年生までは公立学校ならば学費はほとんど無料だ。

その代わり住民が不動産に賦課されるSchool taxで教育費を負担する。このSchool taxが不動産価格の1%から3%とかになるのでバカにならない。筆者の場合は米国で20万ドルの家を持っていたので、年間6千ドルくらいSchool taxを払っていた。

筆者の住んでいた町はschool taxがピッツバーグでは最も高い町だった。

School taxが高いと、教育予算が大きく、教師の給料も高いので、質の高い教師が集まる。そうなると町の人気が上がって、不動産価格も上がる。不動産価格が上がれば、転売するときにも利益が出るので、School taxが多少高くても問題ないという循環なのだ。

普通であれば、高校は卒業できるのが当たり前で、アメリカでは高校中退する人は実際にはかなり少ないはずだ。

ところが日本の場合は、高校は義務教育ではないので、公立高校でも学費負担に耐えられずに中退してしまう人が多くいるということをテレビで言っていたので、驚かされた。

日本ではここまでの年収差はないかもしれないが、ちゃんと統計を調べて高校生に教える必要があると思う。

テレビで取り上げられていた高校中退カップルは、単に家計が苦しいし、高校に行く意義が見いだせなくて中退したそうだが、上記のような現実がわかれば、たとえ苦しくても高校を卒業する必要性がわかるのではないだろうか。


この本は2色刷りで、わかりやすくきれいなことは良いのだが、著者が早稲田大学の先生なので、赤字の部分が試験に出るので暗記しろと言っているように感じる。

内容もわかりやすく簡単で、内容としては高校生レベルだろう。

筆者としては、どちらかというと大和総研の本をおすすめするが、アメリカの高校生がどんなことを学んでいるのかを簡単に知るには、こちらの本も役立つと思う。


参考になれば次クリック投票お願いします。





Posted by yaori at 22:04│Comments(0)TrackBack(0) 経済 | 趣味・生活に役立つ情報

この記事へのトラックバックURL