2008年09月12日

メイドインチャイナ 「現場学者」関教授の中国進出企業レポート

メイド・イン・チャイナ―中堅・中小企業の中国進出メイド・イン・チャイナ―中堅・中小企業の中国進出
著者:経営労働協会
販売元:新評論
発売日:2007-12
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以前紹介した「現場学者中国を行く」の一橋大学関満博教授による2007年12月のレポート。

中国に進出した102社の日本の中小企業の現地での苦労話を中心にレポートしている。

102社もの話を読んでいると、それぞれの地区の特徴がよく分かる。

大連地区が33社、上海を中心にする長江デルタが39社、珠江デルタが30社だ。

大連など旧満州地区は日本語が話せる人材も多く、日本とのつながりが深く、製品は日本への持ち帰りが中心だ。

長江デルタは機械やコンピューターなどの多くの産業の集積地で、中国最大の需要地でもあるので、進出企業は中国の内需(日系企業向けも含め)向けが多い。

珠江デルタは電子部品の一大生産地で、「広東型委託加工」と呼ばれる工場の建物と従業員は現地側が提供する「合作」型が特徴で、最近は自動車産業も拡大しており、労働者の確保が難しくなってきているほどだ。

この地域は基本的に輸出基地だったが、最近は日系を中心に電機メーカーや自動車メーカー向けの販売も増えている。

日本の本社は従業員100人以下の中小企業が多いので、東京にあった工場が、東北に移転し、それから中国に移転した会社が多く、取引先に要請されたりして中国に進出し、日本にはもう会社がない企業もある。

まさに背水の陣で中国に進出してきているのだ。

個別の企業の話もそれぞれ面白い。

たとえば最初に紹介されているのは、日本の有力電子メーカーの中国進出のモデルと言われているカーオーディオのアルパインだ。

1988年に元社長の沓沢さんが少年時代に住んでいた遼寧省の丹東を訪問し、その後訪れた瀋陽で東北大学のソフトウェア技術に驚いたことが、同社が中国に進出したきっかけだ。

日本を引き払って社長自らプレス機1台で深圳テクノセンターに飛び込んだヒサダは、まさに背水の陣の典型例だ。現在はプレス機15台、従業員は260人の規模になったという。

日本ではマスコミに顔を見せたことがないという伝説の女性経営者、ミドリ安全社長を50年間勤める松村元子さんも写真入りで紹介されている。ミドリ安全は元々安全靴の生産のために広州に進出し、なめし革の工場をブラジルに持っていることを利用して、ホンダをターゲットに自動車シート生産を中国で始めたという。

ミドリ安全の作業服の合弁会社は中国側にマジョリティを売り、現在は中国人女性が社長となっている。

人間模様も面白い。

関教授の持論である「台湾企業が日本企業より成功しているのは、経営者が現地に駐在しているかどうかだ」という点についても、102社のうちわずかに5社のみで経営者自身が駐在しているが、経営者の親族が駐在している会社は6社あり以前より増えてきたという。

3年程度のローテーションのサラリーマン駐在者では、新たなことに取り組むことは期待しにくく、失敗しないように前例踏襲で行動しがちだという。

商社やメーカー出身の中国経験の長い人をスカウトして社長に据えている会社もあれば、中国人の日本留学経験者を採用したりして中国人をトップに据える会社も17社ある。

第二の人生として中国事業に賭けるシニアもいれば、20代の現地責任者もいる。

102社をレポートする600ページ弱の本なので、全体はざっと読み、興味のある会社や分野の企業についてじっくり読むと良いと思う。

それにしても関満博教授のエネルギーには感心する。中国各地、台湾、ベトナム、モンゴル、日本の地方活性化など400−700ページの本ばかり何冊も出版している。

定価7,000円という高い本なので、まずは図書館で探して読むことをお勧めする。


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Posted by yaori at 00:48│Comments(0)TrackBack(0) 中国 | 企業経営

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