2008年09月26日

臆病者のための株入門 プロにカモられないために知っておくべきこと

臆病者のための株入門 (文春新書)臆病者のための株入門 (文春新書)
著者:橘 玲
販売元:文藝春秋
発売日:2006-04
おすすめ度:4.5
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このブログでも「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」など何冊か紹介している異色の経済・投資ライター橘玲さんの2006年の著作。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門
著者:橘 玲
販売元:幻冬舎
発売日:2002-11-26
おすすめ度:3.5
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投資の入門本としてベストセラー作家の勝間さんの「お金は銀行に預けるな」を紹介したが、勝間さんの本は机上の議論という感じが強い。

これに対して橘さんは、1ヶ月で100万円を1億円に増やすべく自ら実行したり、実践の裏付けがあるので、説得力がある。

この本は「投資の専門家」とはどういう人たちかなど、独自の見方で解説しており、目からうろこの素人向け入門書である。

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)
著者:勝間 和代
販売元:光文社
発売日:2007-11-16
おすすめ度:4.0
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アマゾンのなか見検索に対応していないので、目次を紹介しておく。

はじめに 臆病者には臆病者の投資法がある

第1章  株で100万円が100億円になるのはなぜか?

第2章  ホリエモンに学ぶ株式市場

第3章  デイトレードはライフスタイル

第4章  株式投資はとういうケースか

第5章  株で富を創造する方法

第6章  経済学的に最も正しい投資法

第7章  金融リテラシーが不自由な人たち

第8章  ど素人のための投資法
   1.アセットアロケーション
   2.国際分散投資
   3.為替リスク
   4.トーシロ投資法
   5.世界市場ポートフォリオ
   6.トーシロ投資法VSプライベートバンク

あとがき 追証がかかった日


株の本を読んでもわからない

筆者の橘玲さんは「海外投資を楽しむ会」の創設メンバーの一人で、Perpetual traveler(常に海外を渡り歩き、一つの国に半年以上滞在しないので税金も納めなくて良い?ライフスタイル)を追求している。

橘さんは元々サラリーマンだったが、阪神淡路大地震があった年にビルゲイツの「ビル・ゲイツ未来を語る」を読んで感銘を受け、マイクロソフトの株を買いに行ったら売ってくれなかったことから、それなら自分でやると決心して、株研究本を何十冊も読み株で大もうけしようとたくらむ。

ビル・ゲイツ未来を語るビル・ゲイツ未来を語る
著者:ビル・ゲイツ
販売元:アスキー
発売日:1995-12
おすすめ度:5.0
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しかし何冊読んでも全くわからなかったという。それぞれが違うことを言い、ファンドマネージャーは神のお告げの様に語り、ファイナンシャルプラナーはハイパーインフレが来ると脅す。

結局、株の本は理解できないように作られていることが分かったという。

株は欲望が生み出した迷宮で、次になにが起こるか誰にもわからない。だから臆病なしろうと向けにこの本を書いたのだと。


100万円を1億円に

最初に橘さんの経験談がある。

1999年のインターネットバブルの時に一念発起して1ヶ月で100万円を1億円に増やすという計画を思いつき、NASDAQの株価データを統計解析し、インターネットでアメリカの先物会社に口座を開き1999年10月に投資ポジションをつくった。

明らかなトレンドが存在するときに、上がり相場は買いまくり、下がり相場は売りまくるという「モメンタム戦略」を採れば、平均的な運用成績を10%以上上回れるという研究を知り、100万円をレバレッジ20倍で約20万ドルにしてシカゴの株先物で運用し、利益が出ればさらにポジションを積み増すという戦略で投資を開始した。

アメリカの証券会社を選んだ理由は、投資で損失が発生してもアメリカから日本まで追証を取り立てにくるわけないし、たとえ裁判に訴えられても家もマイカーもないので、儲けは無限大で、損失は最初の100万円に限られると思ったからだと。今から思えば恥ずかしいと橘さんは告白している。

当初の予定では儲かっていればシカゴの大引け前に追加で買い、損していれば自動的にストップロスを発動するというものだった。

空前の上がり相場の時だったので、利益が出ては、さらに信用買いで先物を積み増して買うということを続けて投資金額も順調に拡大したが、もしストップロスが発動しないと破産するとの強迫観念で眠れなくなった。

そして一晩中株価ボードを見つめ、1時間程度の仮眠の後会社に出るという生活を2週間続けていたら突如色彩のない白と黒の世界になって、このままでは死んでしまうと思ったので、結局その日のうちにポジションを手じまった。

そのまま続けていれば12月31日に運用額は80億円に達し、4億円近い利益を手にして、そして1月3日にはさらに2億円儲け、ポジションは100億円に達するが、翌1月4日の暴落で結局7億円損したはずだという。

筆者もちょうど1999年ー2000年に米国でインターネット関係で投資したことがあるので、この頃のことを思い出す。Janusのインターネットミューチュアルファンドを買い、インターネット株をIPOで取得したのだ。

ミューチュアルファンドは完全な高値づかみだった。結果的にピークで買ったので、それまでは年率40−50%のリターンだったものが、2000年は一挙にマイナスに転じ、結局平均30%のロスだった。

IPO株は約40ドルで買ったものが、1ヶ月弱でピークは300ドル超、半分は200ドル強で売り抜けたが、半分はそのまま持っていたので10ドル台となった。まさにローラーコースターである。


無職・無資産でないとできないこと

2005年12月のジェイコムの誤発注で20億円を儲けたジェイコム男は27歳無職男性だという。

要は最悪無一文になってもかまわない無職の若者でないとレバレッジをかけたハイリスク投資はやれないし、ハイリスク投資で勝ち残るのはほんの一握りだということだ。

ジェイコム男がプロを上回る実績を出せたということは、たまたまそうなったからであり、株式はじゃんけんと同様に本来プロもアマも同じだ。

多くの失敗した人は表に出てこないが、成功した人は珍しいので本を書けるまでになる。そうするとあたかも誰でも成功できるような錯覚に陥るので、またカモネギが増える。

本来「金融のプロ」なんていない、単なる確率の世界なのだ。


ホリエモンの冒険

しかし単なる確率の世界でも、降ってわいた儲け話もある。金融システムの欠陥を追求するのだ。

ホリエモンがやったのは、株式を100分割すると新たにつくられる99株は信用買いはできても、空売りはできないという規制を逆手に採った手法で、残りの1株は自動的に高値になるというシステムの欠陥を突いたものだ。

自社株買いは厳しく制限されているが、投資組合に適当な会社を買収させ、ライブドアの自社株と相手企業の株を交換すると、いくらでも自社株が発行できる。これはいわばお札を印刷しているようなものだ。

これは株式市場の歪みであり、彼らはこれを利用しただけなのだ。

ところでホリエモンが情報発信をを再開している。「六本木で働いていた元社長のアメブロ」というブログを再開している。

昔のようにアクセスNo.1になるはずもないが、何を書くつもりなのか、彼の人間性が判断できるだろう。


株式市場はゼロサムゲーム

株式市場はゼロサムゲームだ。誰かが得すれば、誰かが損する。

たとえばひところ株価が100円以下になると、機関投資家はストップロスの内規により自動的に売るので、必ず翌日は下落するという現象があった。いわばオンラインゲームのように、みんながインターネットで情報交換してターゲットを撃沈することをやっていたところ、機関投資家が裏をかく行動に出て、個人投資家を食い物にしだしたという。

債券投資は将来の金利を予想するゲームで、株式投資は会社の将来の利益を予想するゲームなのだ。だから使われる指標はEPS(一株利益)とPER(株価収益率)だ。

このゼロサムゲームというのは、筆者自身もふくめて株をやるうえで頭にたたき込んでおくべき事だろう。


バフェットの法則

オマハの賢人ウォレン・バフェット氏は昨日(9月24日)今の金融危機は「経済のパールハーバー(economic pearl harbor)」だから、政府も議会も一致団結して金融システムを守らなければならないとテレビで訴えていると豊島逸夫さんのブログに書いてあった

バフェット氏は2000年のインターネットバブルの時も、ネット企業に全く投資しておらず、その先見性で名声を高めたが、今回の中国株や新興国株の下落でも、11−14%保有していた中国最大の企業ペトロチャイナの全株をピークの2007年10月の直前の9月と7月に売りぬけ、またもや名声を高めた。

(もっともバフェットのペトロチャイナへの投資は、ペトロチャイナがスーダンのダルフールの石油開発に携わっているので、バフェットも20万人もの虐殺や強姦を支援していると非難されていたので、ある意味手を引く時期だったのかもしれない)


そのバフェットの法則は次の通りだという。

1.企業に関する原則
 ・その事業は簡明で理解しやすいか
 ・安定した業績の記録があるか
 ・長期の明るい展望があるか

2.経営に関する原則
 ・合理性を尊重できる経営者であるか
 ・株主に対して率直で誠実か
 ・横並びの強制力に負けないか

3.財務に関する原則
 ・1株当たり利益ではなく株主資本利益率を重視する
 ・「フリーキャッシュフロー(オーナー収益)」を計算する
 ・売上高利益率の高い企業を探す
 ・留保資産1ドル当たり、少なくとも1ドルの割合で株価に反映していることを確認する

4.マーケットに関する原則
 ・企業の真の価値を確定する
 ・企業の価値に対し大幅に割安な価格で買えるか

どれもオーソドックスなものばかりだ。


金融のプロとは

バフェットのもっとも嫌っているのが「金融のプロ」のアナリスト達であるという。彼らが投資家に損をさせているからだと。儲かる銘柄を知っている人は、人に教えたりせず、黙って自分で買う。

橘さんはバフェットのようにアナリスト達を全否定はしないが、彼らの機能は安心を売ることだ。だから「買い」と「中立」ばかりで、「売り」はほとんどないのだと語る。

カリスマ評論家になるには、当たったケースばかりを並び立て、はずれた予想は無視するのだ。そのうち人は忘れるからだ。


経済学的に最も正しい投資法

経済学的に最も正しい投資法について、マーコウィッツジェームズ・トービンウィリアム・シャープなどの歴代ノーベル賞受賞者の説を紹介している。

結論は簡単でインデックスファンドを買えというものだ。

橘さんは過去のデータを統計解析してノーベル賞学者の理論が正しいことを確認したという。市場平均を上回れるファンドは3−4割しかないのだ。

これに対してウォール街の金融マン達は、効率的市場仮説などはありえない、株式市場の歪みを利用して6兆円を稼いだバフェットがいるではないかと当然反論した。しかし運用実績の話になると、とたんに黙ってしまう。

手数料の差もあり、長期にわたってインデックスファンドを上回るファンドはほとんどないのだ。

日本の株式市場はバブルのピークに近づくことすらない。これは一国の株式市場だけに投資していてはダメなことを物語っている。

経済学的に最も正しい投資法は、世界市場全体に投資することだと。


銀行・生保にも気を付けよう

銀行の外貨預金や投資信託キャンペーンなども銀行に販売手数料が継続的に入る商品ばかりで、「ぼったくり」を目的としている商品ばかりだと橘さんは語る。だから金融リテラシーが必要だと。

元本保証型ファンドも手数料でがっぽり稼いでいる。ヘッジファンドは成功報酬制でプラスのパフォーマンスに対して通常20%の報酬が請求され、利益は実現していなくても良い。

生命保険も「家族の愛情」とか称して非常に分が悪い保険を売ると橘さんは語る。

筆者も生命保険では驚いたことがある。筆者は掛け捨ての生命保険しか掛けない主義だが、米国に駐在していたときに取った生命保険の見積もりでは死亡保障50万ドル、30年間料率固定で月々110ドル、30年間の保険料合計が37,500ドルというものだった。

当時アメリカの保険会社は空前の好決算を迎えていたので、こんな長期低料率の保険が出せたらしく、そのうちに最長でも10年までしか料率が固定できなくなったが、78歳まで同じ料率で、しかも漸増する追加料金を払えば95歳(!)まで延長可能というものだ。

life insurance2










たぶん95歳までには死ぬと思うし、78歳までに死ぬ確率も結構あるのではないかと思うが、78歳までに死亡すると50万ドルが支払われる。

合計4万ドル弱の保険金で50万ドルの保障が得られるのである。

本当は現在価値に置き換える必要があるが、単純計算だと78歳までに死ぬ確率が7.5%を上回ると保険会社は損をするという計算になる。

日本人男性の平均寿命は79歳。平均余命だと2年ほど伸びるがそれでも78歳までには10%を超える人は亡くなっていると思う。筆者の高校の同級生でも50人のうち2人(4%)が亡くなっている。

喫煙者の場合は保険料は倍だった。それだけ喫煙者の死亡率が高いということだ。

日本の場合には高齢者になると死亡保険は掛けられなくなり、料率も極端に高くなる。最近ネットで生命保険の料率を見積るサービスもあるが、5千万円で70歳までの保障とすると保険料は月々5万円を超える。

「ぼったくり」とは言わないが、掛け捨てでも高すぎる様な気がしてならない。ましてや満期割り戻し保険をやだ。

世の中にフリーランチはない。誰かが得すれば誰かが損するのだ。


トーシロ投資術

最後にトーシロの投資法として、サラリーマンは自分自身が最大の資産なので、いわば数億円のサラリーマン債券を保有しているのと同じである。だから無鉄砲に上司と喧嘩して飛び出したり、痴漢や飲酒運転でクビになったりしてサラリーマン債券の価値を毀損してはいけないと橘さんは語る。

また新築マイホームは買ったとたんに値段が1−2割下がる非常に分が悪い不動産投資であると。

だから結論としては世界ポートフォリオに投資することだと。

橘さんの「黄金の黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」に詳しく手法が書いてあるので今度紹介するが、MSCIコクサイ・インデックスTOPIXを85:15で組み合わせるか、信託コストを下げるならEFTでSPYとEFAを組み合わせることを勧めている。

もっとも橘さん自身は「経済学的に最も正しい」インデックスファンド投資をやっていないという。たしかにインデックスファンドでは投資の興奮は味わえないので、橘さんの言うこともわかる。

人には正しくないことをする自由もあるからだと。


みずから実践した者のみが語れる迫力があって面白い。目からウロコの投資入門書である。



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Posted by yaori at 01:57│Comments(0) 橘玲 | 投資