2008年09月16日

不謹慎な経済学 細切れトピックで読後感「?」

不謹慎な経済学 (講談社BIZ)不謹慎な経済学 (講談社BIZ)
著者:田中 秀臣
販売元:講談社
発売日:2008-02-21
おすすめ度:2.5
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今度紹介するリチャード・クー氏の本に、田中秀臣氏への反論が取り上げられていたので読んでみた。

田中秀臣氏がまずクー氏の「バランスシート不況」という考え方について2004年に経済論戦の読み方 (講談社現代新書)で批判。それをクー氏が2006年の「「陰」と「陽」の経済学」で反論。

「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのか「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのか
著者:リチャード クー
販売元:東洋経済新報社
発売日:2006-12
おすすめ度:4.5
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それに対して2008年2月のこの本でクー氏を再批判。それに対する再反論が今度紹介するクー氏の2008年7月の最新刊「日本経済を襲う二つの波」だ。論争は第2ラウンドといった感じだ。

日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方
著者:リチャード・クー
販売元:徳間書店
発売日:2008-07-03
おすすめ度:4.0
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本で論戦すると一つ一つの主張の間に一年くらいインターバルがある。主張を知るには本を読まなければならないが、読者は論戦に興味があってそれぞれの本を読むわけではないだろう。

それ以外にメディアがないわけではないので、キャプティブな読者を対象に本で論争するのは止めて欲しいという気がする。


目次は次の通りである。このブログとしてふさわしくないと感じた章題は省いている。

はじめに 「お金がすべてではない世界」を創るために
第1章  パリス・ヒルトンが刑務所で得たもの
第2章  人間関係が希薄化したのは、みんなが望んだからだ

第5章  官僚の天下り、本当は正しい!
第6章  ニートもハケンも、役人の利権を生むだけだ
第7章  経済の安定は攻撃的ナショナリズムを和らげる
第8章  ボランティアを義務化すると、経済格差が拡大する
第9章  最低賃金を引き上げると、失業も雇用も悪化する
第10章 ノーベル賞受賞者は、なぜ人種差別主義者と呼ばれたのか
第11章 アルファブロガーはラーメン屋に行列する人と同じ
第12章 リークと無責任の海に沈んでいくトンデモ中央銀行
第13章 クーデターが戦前の日本をデフレ地獄に突き落とした
第14章 「主権在米経済」が失われた10年に幕を下ろした
第15章 W杯や五輪が終わると、開催国は不況になる
第16章 世界最大の債務国アメリカの経済はいつ崩壊するのか
おわりに エコノミストは横並びがお好き

週刊誌の中吊り広告の様なタイトルを並べた目次という感がある。

細切れとなったトピックの中で、印象に残ったのは、第7章のなかで猪瀬直樹氏が「週刊文春」に書いた「『右の左翼』のプロパガンダで孤立する靖国神社」というタイトルの記事。

靖国神社の遊就館の映画や図録では、「日米開戦は、アメリカが不況を脱出するために日本に戦争を仕掛けてきたものだ」という”事実”が宣伝されていると猪瀬氏が書いていることを紹介している。

筆者は実は花見以外は靖国神社を訪問したことがないが、この点をたしかめるためにも訪問しなければならないという気になった。


ジョセフ・スティグリッツ、ミルトン・フリードマン、ケインズ、高橋是清(「レフレ・レジームとしての高橋是清財政」)、ポール・サミュエルソン、ポール・クルーグマン、ベン・バーナンキFRB議長などの学説の簡単な紹介をトピックとしてちりばめており、軽い読み物にはなっているが、説得力という意味では逆効果ではないかと思える。


最後の「日本経済に奇跡は起こらない」というサブタイトルの結論は次の通りである。

では、どうすればいいだろうか。答えは簡単。日銀が名目経済成長率重視路線を採用し、緩やかなインフレ(2%前後)を目標とするリフレ政策にコミットすることである。」

この方策は、経済学によるきわめて正当な処方箋として、ここ数年来、何人ものエコノミストから主張されてきたが、日銀はいまだに採用していない。しかし、依然として真理であることをやめていないのである。」

たぶんこれが田中さんが一番言いたかったことなのだろう。日銀副総裁の岩田さんもリフレ論者だと聞くが、有力な反対論者もいて「真理」として確立しているわけではない。

リフレについては、はてなキーワードが簡潔な説明なので参照して欲しい。


週刊誌の中づり広告の様なキワモノの話題で注目を得て、多くのトピックをこなす軽い読み物になっているが、たぶんもっとマジメに議論を展開したら説得力も増したのではないかという気がする。

拝聴すべき主張と思えるだけに、残念な本である。


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Posted by yaori at 10:26│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 経済

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