2013年10月11日

金融庁が6カ月の業務停止命令 【再掲】富裕層はなぜYucasee(ゆかし)に入るのか 

2013年10月11日再掲:

「ゆかし」で投資商品を紹介している投資助言会社「アブラハム・プライベートバンク」(東京都港区)が無登録で投資ファンドの運用商品を販売するなど金融商品取引法に違反したとして、金融庁から6カ月の業務停止命令を受けた

「ゆかし」については、このブログで5年前に紹介している。その時も「ゆかし」について疑問を呈しているが、懸念が現実になったようだ。

事件を機に「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか」のあらすじを再掲する。


2008年10月4日初掲:

富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか
著者:高岡 壮一郎
販売元:幻冬舎
発売日:2008-02-08
おすすめ度:5.0
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純金融資産1億円以上が入会資格というプライベートクラブ「ゆかし」を運営する高岡壮一郎さんの本。

高岡さんは三井物産で情報産業、M&A事業に従事した後、退社してアブラハム・グループ・ホールディングス株式会社を創設し、プライベートクラブ「ゆかし」を始める。

「ゆかし」とは日本の古語で、「見たい、知り合い、会いにゆきたい」という意味だという。


東大OBネットの主催者

東大のOBネットも高岡さんがプロモートしている。

東大OBネット





東大を含めた旧七帝大は学士会というOB組織があるが、非常に緩やかなOB会で、会員になっている人も各大学の卒業生のほんの一部だと思う。

たとえば一橋大学などは如水会というOB会があり、結束が強い。今でもそうかもしれないが、以前は大手企業なら会社の如水会があって毎年一橋大学の新入社員を歓迎していた。

医学部とかの一部学部や学科・ゼミなどを除き、東大は全学のOB会がなかったので、高岡さんが学士会に呼びかけて東大OBネットをつくったものだ。ちょうど東大は130周年記念ということで募金活動をしていたので、渡りに舟だったのだろう。

世の中には、思いたったことをどんどん挑戦、実行すべく努力する超ポジティブ人間がいる。楽天の三木谷さんの言う"Get things done"タイプの人だ。高岡さんもまさにその超積極タイプで、三井物産というエスタブリシュメントではあきたらなかったようだ。


相続リッチとインテリッチ

富裕層は、相続リッチとインテリッチの二タイプがあるという。この本ではインテリッチを主に取り上げている。

インテリッチと一般人との違いは、失われた10年と呼ばれる90年代をチャンスととらえ、自らの戦略で果敢に挑戦してきたことだという。

職業は様々だが、外資系金融機関の幹部、オーナー企業や上場企業の社長、ベンチャー企業の役員、医師、弁護士、個人投資家などで、いかにしてリッチになったかの様々なケースを簡単に紹介している。

純資産は1−5億円が75%、職業は経営者40%、医師・弁護士などの専門職が34%で、世帯年収は3,000−5,000万円が最も多く20%で、次が2,000−3,000万円の18%となっている。

たとえば「ウィーンのコンチェルトハウスの命名権が日本人を対象に数十億円で売りに出されている」というような情報が、ゆかしで紹介されているという。

自分が一億円も金融資産を持っていないので、本を読んでも今ひとつピンとこないが、富裕層マーケティングというのは今注目されている分野だ。富裕層を集める手法としてプライベートクラブを開くというのもアリだと思う。


この本の目次

アマゾンのなか見検索に対応していないので、目次を紹介しておく。

序章  すべてはインターネット上のプライベートクラブから始まった
第1章 新世代富裕層「インテリッチ」の誕生
第2章 インテリッチはどうやって富裕層になったのか
第3章 インテリッチが社会を変える
第4章 新世代富裕層の日常としての「ゆかし」
対談  富裕層社会の未来(渋澤建氏を迎えて)
第5章 世界が富裕層を奪い合う
終章  個人が主役になる社会

各章はさらに3−6の節からできており、よくできた目次である。


リッチスタン

日本には資産1億円以上の富裕層が147万人いると言われ、アメリカでは100万ドル以上の富裕層が950万世帯いるという。そんなアメリカでも相続で富裕層になった相続リッチは10%で、ほとんどが一代で富を築いた人たちだという。

アメリカでは原題が「リッチスタン」、邦訳「ザ・ニューリッチ」という富裕層の本がベストセラーになっているという。

ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態
著者:ロバート・フランク
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-09-14
おすすめ度:4.0
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富裕層向けの情報が満載

ゆかしの会員になると会員同士の口コミコーナーや、ゆかしマネーという投資情報が役に立つという。

ある会員は、「マネー誌に載ったら、もう売りだが、ゆかし会員が興味を持っている情報は自分も関心を持つ。成功者についていくことができるからだ。」と語っているという。

ゆかしで紹介されている情報は、ゆかし限定のドナルド・トランプ倶楽部への案内とか、イタリアの名門クラブの入会資格付きの高級別荘、5億円のクルーザー、名門英国ロイヤルスクール入学、400年の歴史を持つ有名レストランのオーナーシップ、有望なロシア人アーティスト、オランダ人写真家についてとかといったものだ。


富裕層を惹きつける国

世界で最も富裕層が増えているのはシンガポールで、増加率は21%だという。国策として世界の金融業の中心となることを目指しているので、所得税の最高税率も18%と低い。最近ではシンガポールに日本の金持ちが移住する傾向が増えているという。

高給取りが集まっている金融業界を惹きつけようとしたら、所得税・法人税を安くするのが効果的だ。だからアジアでは香港とシンガポールの税率が低い

昔はモナコとかが金持ちの集まる国として有名だったが、シンガポールもそれを目指している。

所得税の料率は低くとも、仮に年収1億ドルの人が新たにシンガポールに移住してくれば、シンガポールの税収は1,800万ドルの純増となる。

金持ちから税金を徴収した方が効率も良い。要は絶対額の勝負なのだ。

日本の一人当たりGDPは昨年シンガポールに抜かれ、アジアNo.1の座をゆずったが、その裏には所得税や法人税が低いので、村上ファンドの村上さん以外にも世界の富裕層が移住しているという事情もあったのだ。


国民一人当たりGDP

次が国民一人当たりのGDPだ。日本はシンガポールの次の22位で、すぐ次はクウェートだ。


順位  国名     2007年(単位 ドル)
― 世界[18] 8,354.95
― 欧州連合[19] 33,251.80
1 ルクセンブルク 104,673.28
2 ノルウェー 83,922.50
3 カタール 72,849.07
4 アイスランド 63,830.08
5 アイルランド 59,924.42
6 スイス      58,083.57
7 デンマーク 57,260.95
8 スウェーデン 49,654.87
9 フィンランド 46,601.87
10 オランダ 46,260.69
11 アメリカ合衆国 45,845.48
12 イギリス 45,574.74
13 オーストリア 45,181.12
14 カナダ 43,484.94
15 オーストラリア 43,312.32
16 アラブ首長国連邦 42,934.13
17 ベルギー 42,556.92
18 フランス 41,511.15
19 ドイツ 40,415.41
20 イタリア 35,872.42
21 シンガポール 35,162.93
22 日本 34,312.14
23 クウェート 33,634.34


富裕層が「ゆかし」に入る理由

最後に高岡さんは、富裕層が「ゆかし」に入る理由は、今の日本の社会が個人のニーズを十分に充足していないからだと語る。

現代の富裕層は、「個人が主役になる社会」の成功者であり、どこの国でも通用するので、日本が大切にすべき人材である。そんな人々に対して「ゆかし」がより良い環境を提供したいと高岡さんは語る。

日本では白洲次郎が理事長となっていた軽井沢ゴルフ倶楽部とか、東京青山のカナダ大使館ビルにある"City Club of Tokyo"などの超名門クラブが、プライベートクラブにあたるのだろう。

アメリカの主要都市にはプライベートクラブがある。筆者の住んでいたピッツバーグには、デュケン・クラブ(Duqeusne Club)という名門クラブがある。

Duquesne Club





20世紀初頭カーネギーやメロンという企業家が会員となって盛り立てた創立130年の由緒あるクラブだ。

日本人の駐在員で会員になれる人はほんの一握りで、このメンバーシップは金を出せばなれるというものではない。複数の有力会員からの推薦があって、夫婦一緒の面接を含め厳しい入会審査を通らないと会員になれない。

数年に一度USオープンが開かれるオークモントというカントリークラブもピッツバーグにある。2007年のUSオープンの優勝スコアは5オーバー、タイガーウッズでさえ6オーバーという難コースだが、ここも入会金は数万ドルとたいしたことはない。

Oakmont





しかし会員になるのが非常に難しく、審査まで数年待ちで、定期的に交代する駐在員では会員にはなれない。WASP中心のクラブで、以前はユダヤ人は会員になれないという噂があったくらいだ。

会員になるために他の会員の推薦が必要だし、地元の名士として認められないとダメだ。本来クラブとはこういうもので、メンバーになりたくてもなれない希少価値があってこそ、クラブの価値がある。

「404 Blog Not Found」の小飼 弾さんもこの本を読んで、試しに「ゆかし」の会員になってみたそうだが、小飼さんのブログにゆかしについての続報は見あたらない。

小飼弾のアルファギークに逢ってきた [WEB+DB PRESS plus] (WEB+DB PRESS plusシリーズ)小飼弾のアルファギークに逢ってきた [WEB+DB PRESS plus] (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
著者:小飼 弾
販売元:技術評論社
発売日:2008-04-15
おすすめ度:4.0
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まさにこの点が問題だと思う。「ゆかし」の知名度を上げるためにはネットの有名人の小飼弾さんは、本音はなんとしても入って欲しい会員だと思うが、富裕層一般に受ける人ではない。あえて落とすことで希少価値を上げるという手もあったのではないか。

小飼さんは、勝間さんとか本田さんなどと親しいし、影響力のある人なので落とされたら逆に宣伝になったのではないかと思う。

自分には縁のない話なので、勝手なことを言って著者の高岡さんには申し訳ないが、メンバーになりたくてもなれないクラブ。それこそが富裕層が列を作って入りたがるクラブではないのか?

ベンチャー企業には難しいとは思うが、本当に希少価値のあるクラブをつくるなら、電話2回の質問で会員にするなどとということをせず、すべて面接で会員を審査し、当初は経営は赤字でも、少数の超選りすぐりの会員組織をまずつくり、それから徐々に口コミで広げていくやり方の方が長い目で成功する道ではないのかと思う。

本を出して宣伝するというやり方も疑問が残る。

富裕層向けにプライベートクラブを開くというのは目の付け所は良いと思う。はたしてプライベートクラブという業態が成功するのか。注目されるところだ。


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Posted by yaori at 12:45│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 起業

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