2008年10月15日

無法バブルマネー終わりの始まり 投資家で金鉱山オーナー松藤民輔さんの本

無法バブルマネー終わりの始まり──「金融大転換」時代を生き抜く実践経済学無法バブルマネー終わりの始まり──「金融大転換」時代を生き抜く実践経済学
著者:松藤 民輔
販売元:講談社
発売日:2008-01-16
おすすめ度:4.5
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昨年からサブプライム後の金融バブル崩壊の警鐘を鳴らしている松藤民輔さんの本。

松藤さんは日興証券、メリルリンチを経て、ソロモンブラザースで年収2億円の敏腕トレーダーとして勤務。その後独立して牛之宮という投資クラブ?を設立してメルマガで情報提供している。

ペーパーマネーから実体マネーに移るとの見込みのもとに、1995年に株式会社ジパングを設立して、2003年にアメリカの金鉱山のオーナーとなる。

松藤さんは船井総研の船井さんと親しいようで、船井さんのブログに松藤さんの活動が紹介されている

昨年から世界金融危機に関していくつもの刺激的な本が出されているが、松藤さんも昨年からサブプライム問題や金融危機に関して数冊の本を出している。

今回松藤さんの本を初めて読んだが、億のサラリーを貰っていたトレーダーをやめ、金鉱山オーナーになったという異色の経歴だ。

「これからは商品の時代」と商品・金投資を提唱するジム・ロジャースのことを紹介し、結論として金投資を進めている。

この種の本は他にもいくつも出ているが、結論として警鐘を鳴らしているだけで、書いている人自身がどうしたらよいのかわかっていないので、苦し紛れとしか思えない無茶なことを書いている本が多い。

評論家なら本に書いてそれで終わり、いわば書き捨てなのだろうが、松藤さんの場合、自分で10億ドルといわれる金鉱山を所有しているので説得力が違う。

この本の目次は次の通りである。大体目次を見ただけで内容が推測できると思う。各章は10ほどの節にわかれており、わかりやすい構成だ。

第1章 サブプライム・ショックの本当の恐怖
第2章 中国の不都合な真実
第3章 ロシア資源戦略の「限界」
第4章 これから10年は、金と金鉱株の時代
第5章 500年目の「黄金の国ジパング」

松藤さんはアメリカネバダ州の金鉱山のオーナーなので米国の事情にも詳しく、サブプライムショックに対する解説もわかりやすい。


アメリカの不動産ローン事情

筆者はアメリカの地方都市、ピッツバーグに二回駐在したが、ピッツバーグには貸家が少ないので、二回めの駐在の時の1997年には家を買ってモーゲージ(住宅ローン)を借りていた。

Mortgage






30年ローンで当初7年間の金利は7.6%というものだった。頭金はわずか5%で、18万ドルくらいの家だったので頭金とその他費用や税金等を入れて、1万5千ドルくらい初めに払った。(金利は店頭に表示されている金利そのままで、プレミアムはついていなかったので、「プライムローン」ではあった)

その時は気がつかなかったが、今再度モーゲージ契約書を読み返してみると、借り手が返済できない場合は、貸し手が不動産を没収すると書いてあり、いわゆるノンリコースローンである。

よくテレビ等で報道されているので、お分かりの方も多いと思うが、アメリカの不動産ローンは個人でなく、物件に対してのローンなので、ローンが返せなかったら、不動産からウォークアウェイ(退去)すれば、支払い義務から逃れられるのだ。

この日米の不動産ローンの根本的な差が、今回の不動産バブルがはじけた後のサブプライムローン問題を引き起こしているひとつの要因だ。

それと不動産をローンで買うと、税制上の数々の優遇がある。だからたとえ裕福な人でも家を買うときは手持ち資金では買わず、必ずローンを組むのだ。

今も変わらないと思うが、アメリカの場合、家2軒分までは金利や税金・諸費用が所得から控除できる。

筆者の場合は、アメリカの家の住宅ローン金利と税金、日本に持っていた家の賃貸ロス(駐在の間は日本の家を貸していたので、受け取る賃貸料から住宅ローン金利と減価償却・税金など諸費用を引いたときの損失)がすべて所得から控除できた。

タックスリターンと呼ばれる確定申告で税金が戻ってくる分は毎年1万ドルを超えており、ばかにならない金額だった。

さらに不動産鑑定士の家の評価額が20万ドルを超えていたので、ローン17万ドルとの差額の3万ドル程度をホームエクイティローンとして借りて、家の改装(浴室を日本風に改造し、タイル張りにしてジャクージーも入れた)にあてた。

築40年弱の家だが、居住性も良く全く問題ない。アメリカではむしろ1970年代の石油ショック前後に建てられた家は材料も工事も手抜きが多く、むしろ1960年代以前の家の方が堅牢に建てられているのだ。


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このホームエクイティローンの金利も不動産ローン金利として所得から控除できるので、限度額まで借りた方が得という非常にメリットあるものだった。

アメリカの場合、ローン債権がしばしば譲渡されるので、貸し手が変わることがよくある。筆者の場合にも4年間の間に貸し手が2度変わった。


サブプライムショックの本当の恐怖

今回のサブプライム問題では、ローン債権が譲渡されるだけでなく、さらにデリバティブに組み込まれ、全く別の高い格付けの新規証券として売買されるという債券の流動化が、問題の根を深くしている。

今度紹介するジョージ・ソロスの「ソロスは警告する」では、CDS(Credit Debt Swap)やCDO(Collateralized Debt Obligation)のデリバティブの残高は42.6兆ドルと推定している。

ソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオソロスは警告する 超バブル崩壊=悪夢のシナリオ
著者:ジョージ・ソロス
販売元:講談社
発売日:2008-09-02
おすすめ度:4.5
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この42.6兆ドルという推定が正しいのかどうかわからないが、もしそれに近い数字だとすると、米国の7,000億ドルの金融支援が焼け石に水になる可能性がある。

だから誰もサブプライム問題の全体の金額がわからないという現実を引き起こしているのだ。

松藤さんは、サブプライム問題は世界の金融機関を悩ます「ガン細胞」だと呼んでいる。まさにその通りだと思う。

サブプライム問題は自動車業界にも「飛び火」しており、北米マーケットの終わりの始まりだと語る。

日本の金融機関はサブプライムにはあまり首を突っ込んでいないので、松藤さんはこれからは日本の一人勝ちになると予想している。―本当にそうなってくれればよいのだが...。


中国の不都合な真実

昨年政府系ファンドが注目され、日本でも政府系ファンドを立ち上げるべきだという議論が活発になったときに、中国が2003年に設立した中国投資有限責任公司が、アメリカのヘッジファンド最大手のブラックストーングループの8%の株式を取得したことが話題になった。

取得株価は新規公開時の35ドルだと思うが、ブラックストーンはサブプライムでもやられているので、株価は下落の一方だったが、なんと昨今の株価急落で直近では8ドル以下になっている

誰が責任を取るのか知らないが、なんと約8割の株価下落である。

役人に資産の運用など任せられないという典型例が中国の政府系ファンドだ。


このブログでもたびたび紹介しているウォーレン・バフェットのペトロチャイナ株の売りぬけなどについて解説している。

スーダンのダルフール紛争へのペトロチャイナのかかわりなどが、国際的にも非難されたが、バフェットは中国株の売却はあくまでタイミングを見てのものであり、政治的な圧力を考えた訳ではないと語っている。

その後原油相場の下落もありペトロチャイナの株も下落が止まらない。直近では6ドルまで下落したが、まだ先が見えないところなので、まさに見事なプロフィットテイキングである。

バフェットのみならず、フィデリティグループもバフェットに先立つこと3ヶ月で、ペトロチャイナ株を手じまっている。

アラン・グリーンスパン前FRB議長も、2007年10月に「中国の株式市場はあらゆる角度から見てバブルの特徴を備えている。バブルの定義を求めたいのなら、これこそそうだ」と語っているという。

松藤さんは中国でバブルが繰り返される理由として次をあげている。

1.1億2千万人を超える個人投資家
2.株式と不動産しか投資・運用先がない
3.金利を誰もあてにしていない
4.わずかな売買で株価が騰落する
5.インサイダーと粉飾がまかり通る

さらに「コピー大国に未来はない」や、「世界中に毒を撒き散らす中国」、「リストラ軍人が中国を破壊する?」と手厳しいタイトルが並ぶ。


ロシア資源戦略の「限界」

ロシアは資源価格高騰で復活しているが、「サハリンII」を強引にガスプロムが過半数を持つ企業体に変えたりして、ロシアのカントリーリスクは世界一だと松藤さんは語る。

政治や軍事の分野では「上海協力機構」をロシア、中国と中央アジア諸国4カ国の合計6カ国で設立し、イラン、インド、モンゴル、パキスタンの4カ国がオブザーバーとなっている。

敵の敵は味方というロジックで、対米連合となっているのだ。

古くはセブンシスターズと呼ばれるオイルメジャー7社、これが現在は4社(BP,シェル、エクソンーモービル、シェブロン)になっている。

今後は新しいニューセブンシスターズ(サウジアラビアのアラムコ、ロシアのガスプロム、中国ペトロチャイナ、イランNIOC、ベネズエラPDVSA、ブラジルのペトロブラス、マレーシアのペトロナスの7社)が今後40年間で世界の90%を押さえるだろうと英国のファイナンシャルタイムズは予測しているという。

しかし時代のトレンドは脱石油なので、ロシアの天下は資源価格下落とともに終わるだろうと松藤さんは予測する。

これからは省エネルギー技術が発達し、原子力技術に強い日本企業が世界をリードするだろうと松藤さんは予想する。ハイブリッド車、燃料電池車、水素車、とくに常温核融合に注目しているという。


これから10年は金と金鉱株の時代


最後に松藤さんのホームグラウンドの金について自説を述べている。松藤さんのポジションはNYダウ暴落、金暴騰が基本であると。ドルはNYダウが暴落しても、一瞬暴騰し、時間を掛けて下落すると予想している。

まさに松藤さんの予想通り、現在これが起こりつつある。

現物回帰が基本で、ジム・ロジャースが「これからは商品の時代だ」と語っている様に、これから10年は金が運用商品の中心になると予測している。

大投資家ジム・ロジャーズが語る商品の時代大投資家ジム・ロジャーズが語る商品の時代
著者:ジム・ロジャーズ
販売元:日本経済新聞社
発売日:2005-06-23
おすすめ度:4.5
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目先の小さな儲けより、歴史の大きなトレンドに乗ることを優先すべきであると。

「有事」になると金が注目される理由は、金は資産として永遠の価値を持っているからだ。

松藤さんが注目するのは、東証版金ETFだという。6月30日に東証に上場され、現在は基準価格を割っているようだが、松藤さんの言うとおり長期トレンドを考えるべきだろう。


筆者の私見

筆者は金についてはタイミングよく大変儲けた経験があるが、長期的に価格が上がるという点は、自信が持てない。

筆者は1978年から1980年までアルゼンチンに駐在していたが、インフレ対策としてペソ建て給料をすぐに金貨に換えて持っていたのだ。

1オンスのメキシコ金貨を何枚か持っていたが、ちょうど1980年はレアメタル高騰の時期で、1オンス200ドル台で買った金貨が、1980年の日本帰国の時に売ったら1オンス650ドル程度で売れて、大変儲かった。

本当は保有しつづけたかったが、金貨なので日本に持ち帰るときに、身に着けて持って帰らざるを得ず、空港とかの手荷物検査で大変だと思って処分したのだ。

しかしその後金相場は20年以上低迷を続けたので、結果的に大正解だった。その時の経験から、本当に長期的に金相場が上昇するのか確信が持てないのだ。

松藤さんは「アル・ゴアのノーベル平和賞が保証する金価格の上昇」と題して、原状回復コストなどの環境対策コストが高いので、新しい金鉱山の開発は事実上無理なので、供給が増えないため金価格は上昇すると語っているが、上記の事情で筆者は半信半疑だ。

最後に松藤さんは、金鉱山こそ、「夢追い人」の目指す山として、日本がかつてジパングとよばれ、各地に金山があったことを説明している。

戦国武将も武田信玄が伊豆の土肥金山などを抑えていたり、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などは莫大な金資産を持っていたという。

21世紀の日本は技術力という「現代の黄金」によって生き残るのだと松藤さんは結んでいる。


テンポ良く読め、わかりやすく面白い本だった。是非おすすめする。


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Posted by yaori at 00:00│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 投資

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