貧困のない世界を創る
著者:ムハマド・ユヌス
販売元:早川書房
発売日:2008-10-24
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2006年度ノーベル平和賞を受賞したマイクロファイナンスのグラミン銀行創始者ムハマド・ユヌス氏の最新作。
巻末にノーベル賞受賞の記念スピーチが収録されている。「貧困は博物館に」が目標だ。素晴らしい言葉、そして実行力だ。
世界の人口の半分は一日2ドル以下で生活していると言われる。
ユヌス氏の始めたマイクロファイナンスは、利用者が2006年末に世界で1億人を超え、ミャンマー、インドネシア、トルコ、ザンビア、コソボ、グアテマラなど世界の多くの国で広まりつつあり、人々を貧困から救うことに役立っている。
バングラディシュの貧民向け無担保融資専門のグラミン銀行は1983年の創設後、現在では7万8千もの村で700万人相手にローンを行っており、その97%は女性だ。
返済率は98.6%である。借り手を5人ごとのグループにわけ、お金を借りたい時は他の4人の許可を得なければならない。それぞれの借り手が自分のローンに責任を持つが、グループとして互いに励まし合うことで、精神的なサポートになるという。
「グループの他のメンバーを失望させたくない」というのが、ローンをきちんと返済する一番の理由だ。
グラミン銀行のスタッフは融資金額では評価されない。
「5つの星」制度があり、担当するすべての借り手(通常600人程度)が100%返済すれば緑の星。仕事で利益が出れば青の星。ローンを預金額が上回れば紫の星。借り手のすべての子どもが確実に学校に入れば茶色の星。そして最後の赤い星は、すべての借り手が貧困から脱却できれば貰えるという。
この本ではユヌス氏とヨーグルトの世界最大のメーカーのフランスのダノンの会長が意気投合して、バングラディシュで子どもの栄養失調をなくすためにヨーグルト事業を合弁で始めたことなどを取り上げている。
バングラディシュで零細酪農家が生産する牛乳を原料とする小規模工場をつくり、ヤクルトレディならぬグラミンレディが毎日20個ずつ販売するというしくみだ。
ヨーグルトは1個7セント程度で販売し、利益はすべて再投資に向けて、配当はしないというのが新しい「ソーシャル・ビジネス」の形である。
この「ショクティ・ドイ」(パワーのためのヨーグルト)と呼ばれるヨーグルトは、バングラディシュの味覚にあわせるためにヤシの木の糖蜜でほんのり甘く味付けされており、カップは有機プラスティックで出来ている。
2006年11月のグラミン・ダノンヨーグルト工場の完工式にはダノンのリブーCEOの他、元サッカー選手のジネディーヌ・ジダンが友情参加して、バングラディシュのみならず世界の注目を集めてスタートした。
ジダン自身も貧しいアルジェリア移民の子どもだ。
ジダンは最後にバングラデシュの大統領と面談し、バングラデシュの子ども達と会うために戻ってくることを約束したという。
ダノンはミネラルウォーターのVolvicのメーカーでもある。
Volvicは異臭がするとしてリコールを発表したばかりで、ミソがついてしまったが、1L for 10Lというボルビック1L買うとアフリカに10Lの清潔な水を寄付するというキャンペーンを行っており、その社会貢献の姿勢に筆者は以前から感心していた。
ノルウェーテレノールとの合弁会社グラミンフォンは加入者数が1,600万人を超え、バングラデシュ最大の納税企業となった。
グラミンフォンでは、村々のテレフォン・レディーが携帯電話を貸すサービスを提供し、貧しい人でも電話が使えるようになった。
グラミンフォンもいずれソーシャル・ビジネスとして非利益企業に転換したいとユヌス氏は語る。
グラミン・シャクティは10万台のソーラーパネルを全国あらゆる場所に設置し、世界最大の太陽光発電供給者の一つとなっている。2012年には100万台まで増やす計画だ。
50ワットのユニットは、通常4つの白熱電球を4時間ともすのに必要なエネルギーを供給するという。
グラミン・カルヤンは医療サービス、グラミン・ウドーグとグラミン・シャモグリーは手織りの美しい織物製造。グラミン漁業とグラミン畜産は読んで字の通り。
グラミン・シッカは育英資金や教育サービスなど、ユヌス氏のグラミングループは、様々なソーシャル・ビジネスを立ち上げ、貧困の撲滅を目指している。
ユヌス氏のマイクロファイナンスのことは、スティーブン・コヴィーの「第8の習慣」で初めて知ったのだが、精力的にバングラデシュ国民、そして世界のあらゆる国の貧しい人を貧困から救おうとする姿勢には脱帽する。
第8の習慣 「効果」から「偉大」へ
著者:スティーブン・R・コヴィー
販売元:キングベアー出版
発売日:2005-04-23
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ノーベル平和賞受賞者には、政治家なども多いが、本当に価値のあるノーベル平和賞受賞者だと思う。
370ページほどの本だが、一気に読める。是非一読をおすすめする。
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