2008年11月20日

建築家安藤忠雄 安藤忠雄さん初の自伝

建築家 安藤忠雄建築家 安藤忠雄
著者:安藤 忠雄
販売元:新潮社
発売日:2008-10
おすすめ度:5.0
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このブログでも東大での講義録「連戦連敗」を紹介した日本を代表する建築家安藤忠雄氏の自伝。

連戦連敗連戦連敗
著者:安藤 忠雄
販売元:東京大学出版会
発売日:2001-09-03
おすすめ度:4.5
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安藤さんは高卒で大学に行っていない。ましてや大学の建築科で学んだこともない。若い頃はペイが良いのでプロボクサーになったが、ファイティング原田を見て自分は才能がないとあきらめ、独学で建築を勉強し、デザインの仕事を探した。

若くして日本各地や世界各地を巡って実際の建築を見てきたこともあり、苦労が実って評価を得て、サントリーの佐治さんや、サンヨーの井植さん、ベネッセの福武さんなどのパトロンも得て、日本を代表する建築家としての地位をつかんだ。

1997年からは東大の教授、名誉教授を勤めている。筆者が最初に安藤さんの話を聞いたのも今年の東大の入学式での記念講演だった。

この本では安藤さんの数々の作品が安藤さん自身の言葉で紹介されている。

「連戦連敗」で紹介されている建築作品は、安藤さんの作品は少なく、そのタイトルが示すとおり安藤さんが競争で負けた作品や、結局採用されなかったデザインなどを集めたものだ。

この本を読んだ人には是非「連戦連敗」も一読をおすすめする。


住吉の長屋

安藤さんの初期の作品で、日本建築学会賞受賞作の「住吉の長屋」についても、「連戦連敗」では、外観デザインだけが紹介されていたが、この本では中の構造、とくに「断熱もせず、冬の寒さはどうなるのか。雨の日には寝室からトイレに行くのに、手すりもない階段を、傘をさしていかねばならないのか」といった住民の側の問題点も明らかにしている。

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「問題はこの場所で生活を営むのに本当に必要なものは何なのか、一体住まうということはどういうことなのかという思想の問題だった。

それに対し、私は自然の一部としてある生活こそが住まいの本質なのだという答えを出した。」のだという。

狭い敷地の中で部屋と部屋の間をオープンな中庭にして、渡り廊下と階段でつなぐという奇抜なデザインは建築学会でも議論を巻き起こしたという。

初期の作品を「都市ゲリラ住居」と安藤さんは名付けていたという。

これ以外にも現代の「懸造り」と呼ばれた六甲山の断崖につくった六甲の集合住宅I、II,IIIが様々な角度からの写真入りで紹介されている。

安藤さんが尊敬するル・コルビュジェユニテ・ダビタシオンを意識してつくったというパブリックペースを広く取った集合住宅だ。

ユニテ・ダビタシオン







筆者が特に気に入ったのは、サンヨーの井植さんに頼まれて設計した淡路島の本福寺の水御堂だ。

地面に楕円形の蓮池用の水盤を設け、その下に建物を埋め込むという設計だ。

本福寺






本福寺水御堂






安藤さんが初めて手がけた寺院建築だが、さすが世界を旅してきた安藤さんだけあって、インドのお釈迦様が暮らす蓮池が再現されたようで、筆者は大変気に入った。

その他にも安藤さんのいろいろな作品が紹介されていて、見ていて楽しい本だ。

建築に興味がある人でもない人でも、是非一度手に取ってパラパラっと見て欲しい本だ。


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Posted by yaori at 12:49│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 自叙伝・人物伝

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