2009年01月10日

無税入門 気になるタイトルなので読んでみた

2009年1月11日追記:

「無税入門」があまりに単純な、サラリーマンも副業をつくり自営業者として開業届けを出して費用を計上しろというものだったので、他の本も読んでみた。

この分野でのベストセラーは次の本だ。

フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
著者:きたみ りゅうじ
販売元:日本実業出版社
発売日:2005-12-08
おすすめ度:5.0
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きたみりゅうじさんという元SEでイラストレーターの人が、税理士にいろいろ質問するという企画のものだ。きたみりゅうじさんは「キタ印工房」というサイトも運営している。

内容は税法の変更にあわせて適宜アップデートされているという。サラリーマンにはあまり参考にならないかもしれないが、グレーな部分も含めて、単刀直入な質問もあり、面白い。

次に元国税調査官の大村大次郎さんという人が、やたら刺激的なタイトルの本を出している。税務署を勤め上げた人は、退職後税理士として働けるが、国税局(?)に10年間勤務しただけで、このような裏技を紹介する本をやたら出しているのはやりすぎという感じがする。

その税金は払うな!その税金は払うな!
著者:大村 大次郎
販売元:双葉社
発売日:2006-11
おすすめ度:4.5
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大村さんはブログもあるが、ほとんど更新されていないようだ。

ホントかどうかわからないが、年収5、000万円までの開業医は約70%の経費が認められるとか、開業医が優遇されているのは日本医師会という強力な圧力団体があるからだとか、言い放題である。

かなりあぶない本である。税金が安くなるなどといった本はタイトルだけでも売れることもあり、玉石混交なのではないかという気がする。

もし実際に個人事業を開業するなら、図書館に行けばいくらでも同じようなマニュアル本がだされているが、参考までに最新刊が図書館にあったので、読んでみた。

一番よくわかる個人事業の始め方一番よくわかる個人事業の始め方
著者:鈴木 克俊
販売元:西東社
発売日:2008-11
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退職後個人事業を始める人を主な対象にした本で、税務署等への届出や税法・簿記の基礎知識、日本政策金融公庫などからの資金の調達法などが詳しく説明されている。

興味のある人は確定申告や税法関係の本はたくさん図書館にあるので、図書館でチェックされることをおすすめする。


2008年12月29日初掲:

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう
著者:只野 範男
販売元:飛鳥新社
発売日:2007-10
おすすめ度:3.0



紹介記事だったか(朝日新聞?)、売上ランキングだったかで見て、気になるタイトルなので読んでみた。

こんな本を出すと当然税務署に目を付けられるのでペンネームではないかと思うが、著者は只野範男(略してタダノリ?)さんとなっている。

37年間も税金(所得税・住民税)を払わないで、教育など国や地方自治体の様々なサービスを受けている人がいるというのは腹が立つ話だが、働いている人の25%は所得税・住民税ゼロだという。

年収325万円以下の子ども2人のサラリーマン世帯、年収235万円以下の65歳以上の夫婦世帯、114万円以下の独身者は所得税がかからないという。勤労者の25%がこのカテゴリーに当てはまる。

日本の課税最低額が低すぎることは、今までもしばしば指摘されている。325万円といえば、今のドル=90円なら36,000ドルになる。

アメリカではZIP CODE(郵便番号)ごとの地域情報データベースを提供するサービスがあり、その地域での平均給与などもわかる。

たとえば筆者が最初の駐在のときに住んでいたピッツバーグのマウント・レバノンという準高級住宅地と、オフィスのあったダウンタウン(中心街)の平均収入分布は次の通りだ。

15234income15219income

出典:http://www.city-data.com/zips/15234.html

マウント・レバノンの平均年収は46,000ドルなので、36,000ドルだとやや低い部類となるが、4割程度の住民が36,000ドル以下だろう。36,000ドルというと悪くない年収で、アメリカの課税最低年収は低いので当然税金を払っている。

ピッツバーグのダウンタウンの年収となると、平均は16,300ドルで7割程度が36,000ドル以下だ。住民も黒人と若い年代が圧倒的で、日本の課税最低標準では大半が無税となってしまう。

余談になるが、この地域情報データベースサービスでは、出身国別や人種別のデータが非常に充実している。やはり自分が住むとなると、その地域の雰囲気に関心が高いのは当然で、たとえばマウント・レバノンとダウンタウンを比較すると、同じピッツバーグでも人種構成に大きな差があることがわかる。

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出典:http://www.city-data.com/zips/15234.html

この辺りの事情は、以前紹介した筆者の先輩の小林由美さんの「超・格差社会 アメリカの真実」に詳しい。

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しようはアマゾンのなか見!検索に対応しているので、目次を見ると大体の内容がわかると思う。

またアマゾンのクチコミで、読んだ人の多くがこの本につきコメントしているので、それも参考になると思う。

著者は年収約500万円の神戸市在住の59歳のサラリーマンで、副業としてイラストレーターをやっている。

いわゆる売れないイラストレーターではあるが、一人前のイラストレーターに変わりはない。

そしてイラストレーター業を自営業として、税務署に「開業届け」を出し、年間30万円程度ある収入から自営業に掛かった様々な経費や家事関係費*を引くと赤字となるので、自営業の赤字と約500万円の給与所得と一緒に確定申告すると、給与やイラストレーター報酬から源泉徴収された税金が還付されるのだという。

*家事関係費:自宅を営業用に使っている場合の家庭用と事業用の経費が一体となって支出された経費のこと。自宅の家賃や光熱費、電話代、車の燃料代、固定資産税、火災保険料などの3−4割を事業用の経費として申告するのだと著者は言う。

イラストレーターの報酬が少ないからといって雑所得(20万円まで申告不要)としては損益通算ができない。

給与所得と損益通算ができるのは、1.不動産所得、2.事業所得、3.譲渡所得、4.山林所得の4種類に限られているからだ。だから、あくまで事業所得として申告するのがミソだという。

著者がこの本を書いた理由は、本が売れて印税が入ってくればうれしいからで、他の無税の人に「無税入門」の発表で、先を越されたくないというのが本音だという。

要は副業をつくって、それを個人事業として開業届けを出し、確定申告して給与所得に対する所得税と住民税を減らせというのが、著者の主張である。

アマゾンのクチコミにも同じ意見が多いが、こんなループホールを税務署が野放しにするはずがないと思う。

いずれ実体を伴わない似非自営業者は税務否認されることになるだろう。

年収30万円のイラストレーター業で、90万円の経費があり、60万円の赤字というのは、どう見ても税金を減らすための方便にしか見えないので、いずれ税務署が網を掛けてくるのではないかと思う。

実体がないのに無理に個人事業にこじつけると税務署に目を付けられ、それが勤務先にも知れるリスクを考えると、59歳の定年間近なサラリーマンはともかく、普通のサラリーマンにはとても負えないリスクだと思う。

本の主張が、煎じ詰めればサラリーマンは自営業兼任となれというだけのことなので、税制の基礎を簡単におさらいする部分を付け足したり、橘玲、野口悠紀雄、森永卓郎の節税術をけなす部分もあったりで紙幅を使っているが、あまり内容はない。

本の帯には”税金払うの、もう、やめませんか?”とか、”全国5000万サラリーマンに贈る「無税のススメ!」”とか、”税金ゼロこそ、手間をコストのかからない、強力な生活防衛術の1つだ”とかいった挑発的なセールスキャッチが書いてあるが、決して真に受けないほうが良いと思う。

この本の挑発的なタイトルに惑わされず、あくまで実体として自営業と言えるほど副業での収入があれば税務署に開業届けを出して正々堂々と申告したら良いというのが筆者の結論だ。


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Posted by yaori at 23:19│Comments(0)TrackBack(0) 趣味・生活に役立つ情報 | Financial Intelligence

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