2009年01月29日

信用偏差値 信用力がその人の一生を決める時代

「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)
著者:岩田 昭男
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
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前回「信用力格差社会」を紹介したが、岩田昭男氏のもう一冊の近著を読んでみた。

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.5
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「信用力格差時代」は信用力が、住宅ローンなどの各種の借り入れ、クレジッドカードなど与信を左右する社会的指標になり、就職にもクレジットヒストリーが必要とされる米国のような「クレジットヒストリー万能社会」に近づきつつある日本の現状に警鐘をならす作品だった。

この「信用偏差値」では、信用力がより重視される社会で、クレジットカード業界が個人向け金融ビジネスの主役に躍り出ようとしている動きをレポートしている。

日本のクレジットカード業界は、1.改正貸金業法の影響、2.メガバンク主導による再編、3.電子マネー陣営による攻勢という逆風にさらされている。

しかし改正貸金業法の影響は、消費者金融業界・クレジットカード業界にダメージを与えたグレーゾーン金利の撤廃というネガティブなものだけではない。

改正貸金業法に基づき2009年6月には、クレジットカード業界、信販業界、消費者信用業界共通の指定信用情報機関制度が始まる。これまでは業態ごとに5つの信用情報機関にわかれていたが、今後は業態を超えた情報交換が始まる。

ちなみに改正貸金業法の概要は金融庁のホームページに公開されているので、一読をおすすめする。

今まで信用情報については、消費者金融業界が銀行やクレジットカード会社、信販会社に比べて優位に立っていた。無担保で信用力の低い人たちに貸して、ちゃんと取り立てられるという経験に基づいたすぐれた信用力管理を行っていたのだ。

それが業界を横串にする信用情報交換が始まると、消費者金融業界の優位性は薄れる。「信用力」を社会生活に不可欠なものとして確立することで、昨今台頭してきた電子マネーに対抗してクレジットカード業界が反撃に移るのである。


この本の目次

この本の目次は次の通りである。「信用偏差値」は、アマゾンのなか見検索に対応しているので、是非なか見検索で、目次を見て欲しい。

第1章 個人に「信用偏差値」を持ち込め!
第2章 電子マネー隆盛の時代
第3章 クレジットカードVS電子マネー 知られざる闘争
第4章 クレジットカード陣営の総反撃が始まった
第5章 信用社会 日米の違い
第6章 信用格差社会を生き抜くカードの使い方

各章が15前後のサブタイトルで構成されており、読みやすく頭にスッと入る構成である。


著者の岩田昭男氏はクレジットカード・電子マネーの第一人者

著者の岩田昭男氏はクレジット、消費者金融業界に精通し、業界の教科書ともいうべき「クレジット・ローン業界ハンドブック」、「電子マネー業界ハンドブック」を書かれているだけに、参考になる情報が多い。EDY、Suica/Pasmo/Icoca、QUICpay、nanaco、Waon、iDなど電子マネー業界の現状も簡単にまとめられている。

図解 クレジット・ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 クレジット・ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:4.0
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図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:5.0
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筆者は知らなかったが、日本で銀行がクレジットカードを発行できない理由は、1960年代にクレジットカードが日本に上陸した時に、銀行にクレジットカードを発行させようとする大蔵省に、信販業界を管轄する通産省が民業の圧迫になるとして反対したためだ。

銀行は子会社を通してしかクレジットカードを発行できなくなった。それで生まれたのがUC,DC,ミリオン、JCB,現三井住友カードなどといった銀行系クレジットカード会社だ。


現金流通量は確実に減少

2007年の資金供給残高は2年連続マイナスで、前年比約8%減少し、88兆円になった。これからも日銀券(現金)の発行量が減少し、電子マネーやクレジットカード利用が増えるという傾向が強まると岩田氏は予想する。

岩田氏によると、経済学者のハイエクは「紙幣や貨幣を造幣するのはもはや国家の専業事業ではなく、貨幣鋳造を民営化すべし」と主張したことがあったそうだ。声高に主張されているわけではないが、事実として電子マネーやポイントの企業通貨が伸張してきており、現金の流通量を減少させている。


金融庁のポイント・電子マネー規制

このようなポイント・電子マネーの隆盛をにらんで、金融庁はサーバー型の電子マネー(ウェブマネーやビットキャッシュ)、ポイント、代金収納サービス、コンビニ払いなどに規制をかけようと多くの学者を集めて「決済に関するワーキンググループ」を組織して昨年から活動していた

結局今年1月9日の最終答申で、サーバー型の電子マネーに対して他の電子マネーと同様の規制をかけるほかは、規制強化を断念した。

逆に宅配便やコンビニ決済などは、あまりに広まっているので、もはや決済機能は金融機関だけに認められるという大原則が通用しないという結論をだしている。


クレジットスコア導入にあたっての3論点

日本でも「信用偏差値」=クレジットスコアが導入されることが予想されるので、岩田氏はクレジットスコア導入にあたっての論点を3つにまとめている。

1.クレジットレポートはともかく、クレジットスコアまで導入すべきかどうか。

2.クレジットレポートやスコアを金融機関がマーケティングの道具としてどこまで使えるか。(たとえば新規顧客勧誘に使えるのか?)

3.金融事業者以外の一般企業がクレジットレポートなどの信用情報をおおっぴらに活用することを認めるかどうか。(たとえば不動産業界や人材派遣業界が使えるのか?)

アメリカのサブプライム問題の根本原因は信用力格差にある。もともと住宅ローン審査に通らないサブプライム層に、住宅価格が上昇することを見越して、ローンを貸し出した金融業界が、不動産バブルの崩壊で自滅したのだ。

だから岩田氏は、アメリカをモデルとせず、日本でクレジットスコアを導入する場合は上記3点の議論をつくすべきだと主張する。

筆者はクレジットレポートの現物を見たことがなかったが、この本では日本版クレジットレポートの実物の写真も掲載されているので興味深い。


クレジットスコア時代を生き抜く最強の2枚のカード

信用偏差値が導入された場合は、サブプライム層になるとクレジットカードもつくれず、ローンも借りられなくなる恐れがある。だから、なんとしてもプライム層にのこるべく、自らのクレジットカードの使い方を見直して信用力を高める使い方をマスターする必要がある。

ライフスタイル別にどのクレジットカードを持ったらよいのか、岩田氏が選んだ「最強の2枚のクレジットカード」の組み合わせが推薦されているので興味深い。

岩田氏によると史上最強の組み合わせはアメリカンエクスプレスのセンチュリオンカード(年会費約36万円のいわゆるブラックカード)とレクサスカードだという。

どちらも欲しくても持てるわけではない。

レクサスカードはビザのプラチナカードサービスが利用でき、車両購入時のキャッシュバック6%、オプションや整備代はポイントが倍になるという。

筆者はハリアーハイブリッドに乗っているが、これが次モデルからはレクサスRXとなることが今週発表された。

アメリカでは元々ハリアーはレクサスRXとして当初から販売されていたので、日本もレクサスの商品群に加えるようだ。

ハリアーからレクサスになると、ほぼ自動的に150万円ほど値段が上がる。

レクサスカードが持てるようになるかもしれないが、車両価格が約150万円上がってもその分中古車価格が上がる保証はなく、レクサスディーラーは自宅から離れた場所にあることでもあり、複雑な気持ちである。


簡単に読めて、現在のクレジットカード、電子マネー業界の動き、それから自分の信用力を守るためにはどうしたらよいのかスッと頭に入る。

クレジットカードの第一人者である岩田氏が、史上最強の組み合わせ以外にも、その人にあった2枚のカードの組み合わせを各種紹介しているので、是非本を手にとってみることをおすすめする。


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Posted by yaori at 12:20│Comments(0)TrackBack(1) 趣味・生活に役立つ情報 | 岩田昭男

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