2009年02月02日

ユニクロ!監査役実録 監査役というより上場コンサルタントの実録

「ユニクロ」!監査役実録―知られざる増収増益の幕開け「ユニクロ」!監査役実録―知られざる増収増益の幕開け
著者:安本 隆晴
販売元:ダイヤモンド社
発売日:1999-05
おすすめ度:4.0
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以前紹介したユニクロの柳井正社長の「一勝九敗」という本で紹介されていたユニクロ監査役で、公認会計士の安本隆晴さんの1999年に出した本。

一勝九敗 (新潮文庫)一勝九敗 (新潮文庫)
著者:柳井 正
販売元:新潮社
発売日:2006-03
おすすめ度:4.0
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どちらの本にも書いてあるが、安本さんの書いた熱闘「株式公開」―いまだから店頭登録入門
を読んで、柳井さんが是非話を聞きたいと連絡してきたのが二人が知り合うきっかけだ。出版直後の1990年のことである。

当時は全部で25店舗、そのうち18店がユニクロで、7店がメンズショップだった。


ユニクロのビジョン

初対面の安本さんに、ポロシャツと綿パン姿の柳井さんは、カジュアルウェアだけを専門に扱う店は日本にはないと語り始める。

「カジュアルウェアはあまり年齢・性別にとらわれることもなく、流行に左右されることもないし、マーケットは相当大きい。スーツなどの重衣料の何倍もあります。多くの人が普段着られて、ちょっとした外出着にもなるものを、買いやすい値段で買ってもらう。そのために、当社が企画した商品を大量発注、完全買い切りでやる。それに、倉庫型店舗でのセルフ販売だから接客業務はほとんどいらない。」

アメリカのウォルマート社やギャップ社を目標としており、日本ではしまむらやセブンイレブンに興味がある。経営を本格的に勉強したいし、今後出店を重ねていき、いずれの日にか株式を上場したいと思っているので、その指導をして欲しいという。

上場がすべてでなく、通過点と思えるようにしたいと。

当時経営コンサルタント会社に勤めていた安本さんはその場でOKしてつきあいが始まった。


柳井さんの役員合宿での宿題

この本の冒頭に柳井社長が1998年12月26日に13人の役員宛に送ったメールが引用されている。1998年12月といえば、東証一部に上場(1999年2月)替えする直前だ。

「次回の役員合宿の質問事項です。この年末年始考えて下さい。
2001年8月までに何をどう改革するのか。
どのように他企業と差別化するのか。
どのようにしたら店長の転勤が3年に1回になるのか。
どのようにしたらパート社員の平均勤続年数が3年以上になるのか。
どのようにしたら店長の年収が倍になるのか。
倍の年収の店長の必要条件は何か。
最高水準の店長だけにするにはどのようにすればよいか。
店長の仕事を労働集約から知識集約にするには、どうすれば実施できるか。
店舗作業の大幅減を、コストアップせずにお客様に迷惑をかけずにどのように進めるのか。
店舗での問題点を店長が的確に迅速に発信するために、どのようにしたらよいのか。
売り場発の情報(顧客ニーズの発見)と本部での的確な対応がまだ不十分だが、この解決方法は何か。
39期、40期の年間最適出店数は店舗の質の大幅アップするという前提で、何店舗が最適か。」
このあと商品、企画生産、店舗開発、広告宣伝などの質問が続き、全部で44項目に及ぶ。

原理原則を洞察し、勉強し、実践し、失敗を恐れず前進を求め、直接的な、真っ向勝負の、気取らない柳井社長の性格がよく現れた文章であると安本氏は語る。

ユニクロでは毎月1回祝祭日に役員合宿と呼ぶ終日の会議を行う。上記が柳井さんの議題メールだ。


この本の目次

この本の目次は次の通りだ:

序章  福音は読者から 資料分析とレビュー報告
2章  要人から友人へ 株式公開コンサルティング
3章  船団始動す 資本政策と初の第三者割り当て増資
4章  社名に託された成功要因 いよいよ公開準備委員会
5章  組織と人、それぞれの成長 会計基準の採用
6章  大事の前に小事起こる 管理規程の整備と運用
7章  時よ空転するなかれ 店舗急増!管理体制と業務基準
8章  いざ行かん故郷へ 公開準備作業軌道に
9章  事務所開きは怒濤のごとく 資本政策立案
10章 難問降りて標的を変える 人的関係会社を整理する
11章 確執から生まれるもの 銀行借り入れと「IIの部」作成
12章 「初値つかず」の果てに 公開申請、審査そして上場

1994年当時のユニクロの店舗数は355店、都心店はまだ少なく、ほとんどがロードサイド店だった。

柳井さんはお父さんの始めたメンズショップを受け継ぎ、1984年に広島にユニクロ1号店をオープン、それから冒頭に書いたビジョンでSPA(Specialty-taylor of Private apparel)事業を拡大する。

1994年に広島証券取引所に上場、97年に東証2部、99年に東証1部に上場したが、この本は広島証券取引所に上場するまでの1990年から1994年までの4年間の安本さんの業務日記をベースにしたものだ。

安本さんは他の会社にもかかわっていたので、ユニクロ以外の話も含まれている。会計監査をして横領を見つけた話とか、ユニクロ以外の話も面白い。


ユニクロの成功要因



「柳井さんはまだ成功していないというだろうが」、という注釈つきだが、安本さんがユニクロの成功要因をまとめている。

「まず先に方針ありき、原理原則を考え、それに基づいて方針を立てる。

世の中の、あるいは業界の常識がその原理原則とかけ離れていて抵抗にあっても、曲げずに実行する。

実行が無理だと判断したらスパッとあきらめるか、時期を待つ。

決まったらすぐに実行し、それが駄目だったら失敗をすぐに認め、次の手をすばやく打つ。

重要なのは『すぐに実行』で、社長の発想を具体化につなげた経営幹部や社員の方々の努力にはすごいものがある。頭が下がる思いだ」

と。


柳井さんの最高の教科書

このブログでもあらすじを紹介している柳井さんが「私の最高の教科書」と絶賛するハロルド・ジェニーンさんの「プロフェッショナルマネージャー」に書いてある通りのことを柳井さんは実践していることがよくわかる。

プロフェッショナルマネジャープロフェッショナルマネジャー
著者:ハロルド・ジェニーン
販売元:プレジデント社
発売日:2004-05-15
おすすめ度:4.0
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柳井さんが最も影響されたという「3行の経営論」を思い出す。

本を読む時は、初めから終わりへと読む。
ビジネスの経営はそれとは逆だ。
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。



柳井さんの「商売の原点」

柳井さんは「常に商売をやっているんだ、ということを忘れずに」とよく口に出すそうだが、次のようなエピソードがあったという。

柳井さんが大学卒業後、小郡商事に入社して商店街の店の店頭に立っていたときに、高校の担任の先生が通りかかった。「おや、柳井くんじゃないか。なぜ、こんなところにいるんだね。」

せっかくいい大学を出たのに小売店の売り子かい、といったような皮肉な口調で、見下されたという。柳井さんは平静を装ったが、その時「一般の人には、商売というのはそんなふうに映るんだ」と思ったという。

これに発奮したことがユニクロ躍進の原点だったかもしれないと安本さんは推察する。


この本はまるで株式公開マニュアル

本のサブタイトルに「知られざる増収増益の幕開け」と書いてあるが、このサブタイトルに惹かれて読むと失望すると思う。

柳井さんの強烈な個性が出る場面がところどころあるが、全体に株式公開準備マニュアルの様な本である。

1999年の出版なので2006年に施行された会社法でかなりの変化があるため見直しが必要だと思う。

しかし筆者も経験があるが、中規模会社が上場するまでに社内規程をいろいろ整備し、人事制度を導入し、資本政策を決め、メインバンクから借り入れを行うなど課題がある。

それについてステップごとに直面した課題も含めて具体的に解説されているのでわかりやすい。


柳井さんの性格がわかる

柳井さんの性格がわかる逸話がいくつか紹介されている。

柳井さんの「店長を教育すべきエリアマネージャーの作業標準ができていない。それに管理職としての認識が甘い。場当たり的な教育しかできていない。そこをなんとかしたいのです」という要望を受けて、安本さんが大手企業向けで実績のある教育研修コンサルタントを紹介した。

一度社員研修会を開こうということになり、コンサルタントが「自分たちで考えてから行動するのが重要」と教えていると、柳井さんが入ってきてそれを聞いて、「今の小郡商事は会社方針が先にあり、それをどうやって実行するかが最優先でしょう」と発言して立ち去る。

そのあと柳井さんから「会社の方針を汲んでくれないし、本人たちの自発性を待つという考え方では遅すぎる。今はトップダウンで行くべき時。単に使われるだけじゃダメ、というように教えるのは大企業になってからでもいいでしょう。」との話があり、安本さんはコンサルタントに電話をかけ断った。

これは1991年のことで、ファーストリテーリングと社名変更する直前のことだが、小郡商事と呼んでいた頃の会社の規模を考えると、大企業向けの教育内容は、当時のやり方に合っていなかったのかもしれない。

なかなか新規融資に応じてくれず、ユニクロの将来性を見ずに担保至上主義に徹しているメインバンクの支店長との衝突の話とか、支店長を飛び越えて本店の部長に話をして、かえって支店長との関係を悪化させた話とかが紹介されている。

安本さんが追記しているが、この支店長が銀行をやめ取引先に転籍したあとに安本さんが街で出会ったら、ヘッドロック?を掛けられて頭をコツンとたたかれたという。

ユニクロはメインバンクを変えようと画策したはずなので、あるいはメインバンクをはずされてうらみ骨髄なのか、よくわからない話だ。

今は隆々としているユニクロが、株式公開前は地方の同族企業として銀行融資の確保に四苦八苦していた様子がよくわかる。

安本さん自身は父親と同居するために東京のコンサル会社をやめて、静岡で独立して自分の会計士事務所をスタートした。

その時にユニクロとの契約を、会社との顧問契約から個人顧問契約に変えて貰ったが、顧問料は安本さんの期待の3割減ではなく、ばっさり半額にされたという。

柳井さんの性格を象徴するような話だと思う。いかに世話になっていても、コンサルタントは使い倒し、自分の判断する適正コストしか払わないということだろう。


1999年に出版された本だが、柳井さんの経営に取り組む真摯な姿勢がよくわかり、またユニクロの様な同族会社を上場する(公開会社にする)時にはどういった点に注意をしなければならないのかがわかり、参考になる本だ。


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Posted by yaori at 13:08│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 柳井正

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