2009年02月05日

ロジカル・シンキング 「コンサルタントの先生」が書いた教科書

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)
著者:照屋 華子
販売元:東洋経済新報社
発売日:2001-04
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


マッキンゼーなどの一流コンサルティング会社で、コミュニケーションのプロとして多くのコンサルタントを教えている照屋華子さんと岡田恵子さんの本。

照屋さんはこの本の実践編の「ロジカル・ライティング」も書いているので、こちらも別途あらすじを紹介する。

普段なにげなく、あまり深く考えずに人と接しているが、コミュニケーションにも原理原則があったのだとあらためて気づかされる。


「自分しか見えない病」と「にわか読心術師症候群」

まず最初に照屋さんは「自分しか見えない病」や「にわか読心術師症候群」に落ちいっているビジネスマンが多いと語る。

自分の思いの丈(たけ)など、受け手にとってはどうでも良いことだ。相手にメッセージとして伝わるかどうかこそが重要で、受け手のことを考えないコミュニケーションを「自分しか見えない病」と呼ぶ。

逆に相手のことを考えるばかりに、相手の機嫌を損ねないように相手によってニュアンスや表現を変えてしまうと、「あっちとこっちと言っていることが違う」という事態になりかねない。またそもそも機嫌を損ねないために、会議の目的である結論を出さない会議をしてしまう。これが「にわか読心術師症候群」だ。

自分がそうなっていないか見直してみよう。


原稿エディティングのポイント

1.課題、2.答え、3.相手に期待する反応の3点セットを満たすものがメッセージだ。自分の言いたいことが重要なのではない、相手に伝えるべきメッセージが重要なのだ。

自分しか見えない病にかかっていると、自分がいま言いたいことは何だろうと考える。この考え方をあらためて、自分が今相手に伝えるべき課題は何だろう、その答えはなんだろう、相手に期待する反応はなんだろうと確認するのだ。

具体的な業界のことを知らなくとも、人の書いた原稿を判断できるように、照屋さんはいつも次のように自問自答しているという。

●課題に対して、伝え手が、どのようなアクションをとるべきだと言っているのか?
イエスなのかノーなのか?伝え手の意見がクリアに頭に残るか?

●その結論に至った根拠に納得感があるか?

●結論がアクションの場合、具体的なやり方が示されているか?
そのアクションについて部下に指示を出す場面を想定したとき、指示の中身が具体的にイメージできるか?

これらの質問にイエスと答えられるかどうかが、課題に対する答えの要素があるかないかのチェックポイントだ。


相手にメッセージが伝わらない落とし穴

メッセージが伝わらないときの落とし穴は次のようなものだ。

●落とし穴1 結論は「課題の答えの要約」であって、「自分の言いたいことの要約ではない」

●落とし穴2 「状況に応じて」、「場合によっては」に要注意。付帯条件は同床異夢の温床

●落とし穴3 「Aが必要だ、なぜならAがないからだ」では相手は納得しない。

●落とし穴4 「それは事実ですか?それともあなたの判断、仮説ですか?」と思わせた途端に、信憑性は半減する。

●落とし穴5 「言わずもがな」、「当たり前」と思っているのは伝え手だけ

●落とし穴6 他の会社、10年前でも通用するような公理では人は動かない。

●落とし穴7 修飾語で物事が具体的になることはない 「抜本的な」とか「全社一丸」とか


説得力のない「答え」に共通する欠陥

説得力のない「答え」に共通する欠陥として、注意すべき点が挙げられている。

●話の重複は「私の頭の中は混乱中」のサイン

●話の漏れは「一点突破、全面崩壊」につながる。

●話のずれは、そもそもの目的やテーマからの脱線を招く

●話の飛びは相手の理解を拒絶してしまう。

例えば次のような例だ:

「業績は厳しいが、贅肉をそぎ落とし、無駄のない運営を目指す。(中略)従って総務業務と受発注業務は外注する。しかし、中央研究所は歴代社長を輩出した当事業部発祥の地であり、思うような成果は出ていないが、死守する」というスピーチ。

本来あるはずのつながりを相手に伝えられないことのリスクは限りなく大きい。話の飛びや脈略の不明瞭さが、わからない話に共通する特徴であると照屋さんは語る。


論理的に相手に伝えるために、相手に余計な作業をさせないということが大事である。そのため伝え手はあらかじめ自分の思考をきっちりと整理し、大きな重複、漏れ・ずれ、話の飛びがないようにチェックする必要がある。

論理的に思考を整理する技術がMECEとSo What?/WHy So?の2つだ。


●MECE(ミーシー又はミッシー)話の重複、漏れ、ずれをなくす技術
(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)

大前さん勝間さんなどの本にも取り上げられているコンサルタントの頭の整理術がMECEだ。各事柄間に重なりがなく、全体として漏れがない状態のことをいう。

ロジカルシンキング情報館というサイトがあり、MECEが説明されているので、紹介しておく。

たとえば「雇用」といった場合、「正規雇用」、「非正規雇用」と2つに分けられる。法律用語で「従業者」と言えば、その会社で雇用形態にかかわらず働いている人すべてを指し、列挙すると役員(監査役を含む)、正社員、契約社員、嘱託社員、派遣社員、出向社員、パートタイム、アルバイトとなる。

つまりそれぞれが重複なく、漏れなくすべての構成要素を捉えることを言う。要は考え方の切り口のことだ。

照屋さんは、多くのMECEポケット(フレームワーク)を持てと呼びかける。MECEポケットの例としては次のようなものだ。

●完全に要素分解できる集合
 ・年齢
 ・性別
 ・地域など

●絶対ではないが、これだけ抑えれば大きな重なり合いや欠落はないと見なせる集合
 ・3または4C(Customer, Competitor, Company, Channel)
 ・マーケティングの4P(Product, Price, Place, Promotion)
 ・流れ、ステップ(作業フローなど、技術>生産>販売など)
 ・効率・効果
 ・質・量
 ・短期・中期・長期
 ・過去・現在・未来


MECEはロジカルシンキングの基礎となる考えなので、この本では多くのMECEの集中トレーニングと解答例が用意されている。例えばこんな問題だ。

●自動販売機で買える飲み物を整理してみよう(メーカー別、パッケージ別、温度別、成分別など)

●世の中にある弁当を全体としてどのように整理できるか?(買うを5W1Hで分解)

●テレビ番組をMECEで整理してみよう

●顧客への営業活動をMECEで整理してみよう
 
●あなたの会社が提供しているサービスをMECEで整理してみよう
 
●あなたの仕事全体を、その内容を知らない人でもわかるようにMECEで整理してみよう

銀行のカスタマーサービスに寄せられた顧客の声をどうやって整理するかの例題も面白い。解答も初級編、中級編、上級編とわかれており、参考になる。



"So What?/Why So?"話の飛びをなくす技術

"So What?"は手持ちの情報、材料のなかから「結局どうなのか?」を抽出する作業だ。「よって」、「したがって」、「このように」の前後で話がつながらないと話が飛んでしまう。話の飛びをなくすのがこの技術だ。

そしてこれに対を成すのが、"Why So?"、なぜそういえるのかを検証する作業だ。

前述のロジカルシンキング情報館So What?/Why So?の説明も紹介しておく。

この技術を使いこなすためには、日頃から「要するにここから何が言えるのか?」、「なぜそうなるか?」を考えるクセをつけることだ。

課題として観光地の旅行者の評価と来訪意向の相関図、パスタソース新規商品導入などが示されていて頭の体操になる。

論理的に構成する技術

MECEとSo What?/Why So?で論理をつくるやり方として、縦の法則のSo What?/Why So?と、横の法則MECEでピラミッド型に論理を組み立てるやり方が紹介されている。

有名なピラミッド方式だ。

ロジカルシンキング情報館のピラミッド構造の説明を紹介しておく。

Pyramid








この論理パターンもいくつかの例題と解答例が載っている。「宝くじが当たったら」という課題に、筆者二人がそれぞれ解答した例も面白い。

最後に論理FAQ、穴のある論理の例や例題と模範解答がついているので、参考になる。

銀行の「顧客対応サービスの達人から学ぶ」というテーマで、支店長の指示と本部通達に従って3人の候補者;銀行店頭案内係のベテラン、ホテルマン、エアラインの客席乗務員の中からスピーカーを選ぶ例題は面白い。

例題と解答例が満載で、この本を読み、頭の体操をすることで、かなりロジカル・シンキングの技術が身に付くはずだ。


「ロジカル・シンキング」は2001年5月の発売だが、筆者が買った版は2008年10月発行の40刷で、比較的地味な分野の本としては大変なベストセラーだ。

この手のドリルは何度も何度も繰り返して練習する必要があるので、読んだ本しか買わない主義の筆者も、この本と次に紹介する「ロジカル・ライティング」の本は買った。

大学生の息子にも読ませている。
  
単に例題を読むだけでなく、頭で実際に考えてみないとSo What?/Why So?の意味がつかめないと思うので、是非本を手にとってパラパラめくってみて欲しい。

自分の考えを人に説明する上での注意事項が満載で大変参考になる。自分の説得力を客観的に評価するためにも是非参考にして欲しい本である。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。






Posted by yaori at 13:12│Comments(0) ビジネス | 趣味・生活に役立つ情報