2009年04月01日

マネー力 大前研一氏の「株式・資産形成講座」

マネー力 (PHPビジネス新書)マネー力 (PHPビジネス新書)
著者:大前 研一
販売元:PHP研究所
発売日:2009-01-17
おすすめ度:3.5
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世界金融危機以降、世界は大変だが、日本はチャンス!と呼びかける大前研一氏の近著。

「いよいよ日本の出番」と、まるで長谷川慶太郎さんの本の様だ。

千載一遇の大チャンス千載一遇の大チャンス
著者:長谷川 慶太郎
販売元:講談社インターナショナル
発売日:2008-12-18
おすすめ度:4.0
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それでも、「平成恐慌」はありません。―これが、世界経済再生のシナリオ (WAC BUNKO)それでも、「平成恐慌」はありません。―これが、世界経済再生のシナリオ (WAC BUNKO)
著者:長谷川 慶太郎
販売元:ワック
発売日:2009-03
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筆者もグリーンテクノロジーなどの分野で、日本の出番だと思うが、サブプライムローン問題ではほぼ無傷の日本が、昨年11月以降製造業中心に、これほど大きなダメージを受けるとは予想していなかった。

最も裾野の広い自動車業界が最もダメージを受けている。

自動車の買い換えを1年くらいのばしても、今の日本車なら全く問題ない。”合成の誤謬”で、みんなが買い換え時期を延ばすと理論的には1年分の国内需要がなくなる。この消費者の買い換え意識の減退が、現在の急激な自動車生産の落ち込みの原因の一つだと思う。

それと日米での自動車リースの普及度の差が大きい。

アメリカでは法人はほぼ100%リース、個人でもリースが大半なので、3年前後のリースの期限がきたらほとんどが新車に乗り換える。そのためアメリカの自動車業界の方が需要の落ち込みが緩やかとなる。

(筆者は二度ピッツバーグに駐在したが、最初の駐在時は家内の車も含めてローンで2台購入したが、2度めの駐在では2台ともリースにした。リースなら頭金20万円程度で車が手に入るし、帰国するときはリースを解約すれば良いので、車を処分するのもラクだ。)

自動車業界のリース比率の差が、今回日米の自動車生産の落ち込みの厳しさの差となっていると思う。

中国の自動車業界は輸出が少なく内需中心なので、今でも生産量を増やしており、国としても中国は依然として6−7%の成長を維持している。先進国が軒並みマイナス成長になっているので、差が急速に縮まっており、3年後は中国の経済規模は日本を抜くと大前さんは予想している。

この本は、「大前流心理経済学」の続編のような内容で、資産運用力をつけるには今がチャンスと呼びかけている。

大前流心理経済学 貯めるな使え!大前流心理経済学 貯めるな使え!
著者:大前 研一
販売元:講談社
発売日:2007-11-09
おすすめ度:3.5
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いくつか参考になった点を紹介しておく。


世界のホームレスマネーは3,000兆円の規模

2008年の金融危機以降の株価下落、石油などコモディティ価格下落、不動産価格下落により、世界の余剰資金の規模は半分に減ったが、それでも約3,000兆円が行き場を求めてさまよっている。

マネー力を強化するためには、このホームレスマネーの動きを読めるようにすることが必要だと大前氏は語る。

日本にいては、ダイナミックなお金の流れはわからない。世界を足で歩けという。

ホームレスマネーは、先進国のファンド、オイルマネー、中国マネーの3種類あり、中国マネーのおかげで香港とマカオは未曾有の活況を呈していた。

中国の金持ちのスケール、中国のマーケットの大きさ(毎月携帯電話の新規契約者が5百万人ずつ増える!)はとてつもないものがある。

マネー力をつけるためには、中国マネーは体験しておく必要があると大前氏は語る。

中国の外にインドやロシアも見逃せない。大前氏は「ロシア・ショック」でも書いているが、オイルマネーとプーチンのフラット・タックス改革で、ロシアの時代は必ず来ると予想する。

日本だけ見ているとこれからはせいぜい1〜2%の成長がやっとだ。15%業績をのばすと宣言したGEのイメルト会長のように、15%の成長を遂げている国の事業を伸ばすのだ。

GEは向こう3年間でインドで現在の10倍の5万人体制を敷くと宣言している。

逆に大前さんはアメリカには関心がなくなったという。2007年には一度もアメリカを訪問しなかったが、こんな事は初めてだと。家も6軒所有していたが、すべて売却したという。

「ブッシュ前大統領がいかにアメリカを、自己中心的で世界と没交渉のつまらない国にしたかは後世の歴史家が証明してくれることだろう」と辛辣だ。


自分の資産は自分で守れ!

大前さんは日本の国は将棋で言えば”詰んでいる”という。年金とかで国になんとかしてもらおうとなどと、ゆめゆめ思わないことだと。

2055年の人口動態予測が載っている。

2055年人口動態日本の人口ピラミッドが年々変化していく様子国立社会保障・人口問題研究所がホームページのトップに公開しているので、紹介しておく。

ピラミッド型から逆ピラミッド型に変化していく様がスライドショーで紹介されている。


ドルからユーロへの基軸通貨シフト

アメリカはドルの衰退で、”ブラジル化”すると大前氏は予想する。ドルとユーロのアトランティックの戦いに敗れると、アメリカ人も自国通貨を売って、強い通貨に変えようとするだろう。これが大前さんが言う”ブラジル化”だ。

アメリカはこれには耐えられないので、ユーロとドルを統一させようとする。それが大前さんの予想する仮称”ユーラー”か”ドーロ”の誕生だ。

こうなると世界の通貨の85%は米欧統一通貨となる。円とかウォンとかの弱小通貨は生き延びられず、結局世界統一通貨の”グロボ”とかになるだろうと。

これは大前さんの仮説だが、こういうシナリオを持っていれば、たとえドルが大暴落してもパニックになることはないと語る。


マネー脳の鍛え方

マネー脳を鍛えるにはITと英語は不可欠だ。世界中の国が競って英語を勉強している。最近では特にドイツの英語力向上がめざましいという。

大前さんは韓国の2つの大学で名誉・客員教授をやっているが、韓国の大学では1997年の通貨危機以来、英語が話せる国際派人材の育成ということで、世界中から講師を招き、当たり前のように英語の授業をしているという。

2008年1月に教育再生会議の最終報告書が出されたが、”ニートやフリーダーをなんとかしよう”とか、”いじめをなくそう”とか、教育の本質とは関係ない事ばかりが書かれていて、肝心の世界で通用する人材をこうやって教育するという内容は見あたらなかったという。

ニートやフリーターを減らしても、日本の経済力は上がらない。

それよりも「世界中の人とコミュニケーションが可能で、どの国の人に対してもリーダーシップを発揮することができ、なおかつ余人をもって代え難いスキルをもつ人材の育成」をするべきだと大前氏は語る。

筆者も最近のマスコミは、弱者の味方となって企業の”派遣切り”を断罪しているが、そもそも派遣労働者を拡大してきたのは、政府の政策であったことが忘れられているのではないかと思う。

企業の競争力を高め、労働者も希望するなら勤務時間に拘束されず、自由に働けるしくみが派遣労働者だったはずだ。

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出展:「連合」資料

大前さんは”ストリート・スマート”だけが生き残ると語る。給料をもらったらすぐに強い通貨に変えるかつてのブラジルとか、ルーブルをドルやユーロに換えるロシアのタクシー運転手など、生活の中で学んで生きていくのだ。

筆者は1978年から1980年まで年間のインフレ率が100%を超えるアルゼンチンで研修生として働いていたが、給料を受け取ったらすぐにドルやドイツマルク、最後の1年間は金貨に換えていた。

ちょうどこのころ金が暴騰し、1オンス300ドル台から、一挙に800ドルを超え、筆者が帰国前に処分したときは300ドル以下で買った金貨が、640ドルまで上がっていた。

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出展:Wikipedia

金貨は8枚程度しか持っていなかったが、まさに”ストリート・スマート”を体験できた。

大前さんは日本人は国を信じる危険に目覚めよ、マネー脳は中国人に学べと説く。現在中国では資産を自由に海外に持ち出すことは法律上できないので、家族の一人に外国籍を取らせ、その人を通して海外投資するのだと。

その裏には外国居住の中国人を増やしてロビー活動に使おうという中国政府のしたたかな計算があるという。

日本円や日本政府に義理だてする必要などない。学ぶべきは中国人のしたたかさである。


大前健一の株式・資産形成講座

大前さんは2006年からビジネス・ブレークスルー大学院大学オープンカレッジで、「大前健一の株式・資産形成講座」という講座を開講している。自ら判断できる力を養うことが目的だ。

大前さんは日本人のマネー力は幼稚園児レベルだという。ほとんどの日本人が額に汗して働き、稼いだお金は銀行やゆうちょ銀行に預けておくだけだ。

”効率よくお金にお金を稼がせる”ことを考えていないと。

お金にお金を稼がせるるというのは、「アメリカの高校生が学ぶ経済学」でも高校生が学ぶことで、いまだにベストセラーとなっているロバート・キヨサキの「金持ち父さん、貧乏父さん」が主張するところでもある。

アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へアメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践へ
著者:ゲーリーE.クレイトン
販売元:WAVE出版
発売日:2005-09-15
おすすめ度:4.0
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金持ち父さん貧乏父さん金持ち父さん貧乏父さん
著者:ロバート キヨサキ
販売元:筑摩書房
発売日:2000-11-09
おすすめ度:4.0
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家を買うか借りるかもマネー力があれば迷わない、資産形成は長期運用、分散投資が基本、専門家に聞くのが一番、実際にやらなければ力は身に付かない、などとBBT事務局からの内容説明や、受講者の声も紹介している。

終章”いよいよ日本の出番”では、いつも通り大前さんがいくつか具体的提案をしているので、箇条書きで紹介しておく。

・このまま入ったら長期衰退

・オバマは環境戦争を始める 相手は地球環境破壊者だ 日本の環境技術の出番だ

・眠れる1500兆円を市場に誘い出す 相続税廃止で資産を老人から若者へ

 ちなみに現在相続税のない国は、スイス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、スウェーデン、イタリア、マレーシアなどで、現在相続税廃止を検討中なのは、イギリス、フランス、ドイツなどだと。

 アメリカはかつて60%だった相続税率を2001年から段階的に下げており、2010年にはゼロとし、その後は上げていく予定だ。この2010年相続税ゼロという「ブッシュ・プラン」」がアメリカの救世主になるかもしれない。

 日本の相続税収は1兆5千億円程度で、この税収のために1,500兆円がフリーズしているのが現状なのであると。

・東京をマンハッタン化せよ 東京のフロア数は山手線の内側でも平均2.6階 電線地下埋設と高層化

・「戦略事業単位」としての道州制

・チャンスを生かすには意志がいる 若い人の国を変えようという意識高揚が必要

   
今回は大前さん自身のビジネスブレークスルー大学院大学講座の宣伝という色彩が強かったが、投資術初級編として参考になる内容である。

本屋で手にとってみることをおすすめする。


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Posted by yaori at 00:19│Comments(0)TrackBack(0) Financial Intelligence | 大前研一

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