2009年08月22日

日本人の英語 20年間売れ続けているベストセラー

日本人の英語 (岩波新書)日本人の英語 (岩波新書)
著者:マーク ピーターセン
販売元:岩波書店
発売日:1988-04
おすすめ度:5.0
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20年前の出版ながら、いまだにアマゾンのベストセラーランキングで291位(2009年8月21日現在)となっているオバケ ロングセラー。

先日読んだ多賀敏行さんの「外交官のうな重方式英語勉強法」に紹介されていたので読んでみた。

2006年4月の時点で73万部売れたというから、現在はたぶん90万部近く売れているのではないだろうか。

この本の書評はアマゾンに現在59件寄せられて、ハンパではない。しかもほとんどが5という高い評価だ。ネイティブだからこそ書ける、まさに目からウロコの英語書である。筆者が読んでから買った本の一つだ。


著者のマーク・ピーターセンさんは米国ウィスコンシン州出身

著者のマーク・ピーターセンさんは現在は明治大学の教授だが、この本を書いた当時は明治大学の選任講師だった。

Mark Petersen





出典:http://www.i-osmosis.jp/interview/mark_petersen/profile.html

米国ウィスコンシン州出身でフルブライト交換留学生として日本に学び、東工大で「正宗白鳥」(!)を研究したという。

ウィスコンシン州、ミネソタ州などの北中央部の英語は、クセがなくて良いのかもしれない。

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出典は以下注記ない限りWikipedia

筆者は米国駐在時代にウィスコンシン州に、しばしば出張したが、寒冷地ということもあってかなぜか黒人が少なく、ドイツ系やポーランド系、ノルウェー系移民が多い地域で、ウィスコンシン州は自動車用などの鋳物産業が盛んな土地だ。

1980年代には、ブラジルからセントローレンス川を通って五大湖まで2万トン級の船(外航船としては小さい)のパートカーゴで(船全部でなく、いくつかの船倉を使う)木炭銑鉄を輸入し、ミルウォーキー港の埠頭倉庫に在庫して、ウィスコンシン州やイリノイ州の鋳物工場などに販売していた。

筆者の住んでいたピッツバーグからは、シカゴかデトロイトでコミューター飛行機に乗り換えてマディソン空港に行くか、シカゴかミルウォーキーまでジェット機で行って、そこからレンタカーで3時間程度走ってマディソンに行っていた。

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マディソンは小さい町だが、州議会やウィスコンシン大学(マスコットはバジャー=たぬき(アナグマでなくたぬきだと思う))があり、湖があってきれいな町だ。

ちなみに「マディソン郡の橋」のマディソン郡はアイオワ州にあり、ウィスコンシンの州都マディソンではない。

マディソン郡の橋 (文春文庫)マディソン郡の橋 (文春文庫)
著者:ロバート・ジェームズ ウォラー
販売元:文藝春秋
発売日:1997-09
おすすめ度:3.5
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日本人に多いミス

はじめに日本人に多い英文のミスを列挙している。

1.冠詞と数
  a, the, 複数、単数などの意識の問題
  ここに英語の論理の心があり、観念の上では、この二つ(冠詞と数)を別々に考慮することは不可能に近いという。

2.前置詞句
  英語には前置詞(to, at, in, on, about, aroundなど)が多い。微妙な差が付けられているが、その反面トラブルも多い。

3.Tense, 文法の「時制」
  日本語には時制の代わりに、「相(aspect)」があり、tense自体ないので、様々な奇妙な英語が生じる。

4.関係代名詞
  that, whatなど、用法は完全に論理的で、基本的には使いやすい。

5.受動態
  論文に目立つ受動態の使いすぎ。

6.論理関係を表す言葉
  因果関係をあらわす(consequently, becauseなど)から、もっと微妙な関係をあらわす(thereby, accordinglyなど)豊富にあり、英語と日本語の感覚の違いから使い方に問題が出てくる。

いわゆる"time-tested"、長年のベストセラーだけあって参考になる例が多い。印象にのこった例を紹介しておく。


ネイティブは名詞に a をつけるのではなく a に名詞をつける

「ネイティブは名詞に a をつけるのではなく a に名詞をつける」という発想は、たぶんこの本で最も有名な指摘の一つだろう。まさに目からウロコだ。

「a に名詞をつける」と言われても、何のことか、にわかには分からないかもしれないが、日本語で考えるのではなく、いわば”英語アタマ”で考えると、なるほどと納得できると思う。

「つまり、"a"というのは、その有無が一つの論理的プロセスの根幹となるものであって、名詞に付くアクセサリーのようなものではないのである」

まず言いたいこと=アイデアがありきで、そのモノが特定のものなのか、1つ2つと数えられるありきたりのものなのかで、論理的に a か the か、何も付かないかが決まり、次に適切な単語を探すということだ。

これは筆者の意見だが、スペイン語やフランス語、ドイツ語などの名詞に男性形、女性形(ドイツ語は中性も)がある場合を考えると、さらにひとひねり加わると思う。

まず言いたいこと=アイデアがありきで、そのモノが特定のものなのか、1つ2つと数えられるありきたりのものなのかで、スペイン語だと不定冠詞 unか una(女性形)か、定冠詞 elか laか決まる。

次に名詞を選ぶが、スペイン語の場合は una mesa や un escritorio(どちらも机だが、mesaは食卓、escritorioは勉強机の意味)の様に名詞と冠詞とセットになって覚えているので、女性形でも男性形でも名詞に冠詞がくっついて出てくる感じだ。

★a を付けてはいけない例
a を付けない例としてエビスビールのラベルを挙げている。

以前は、"YEBISU, the legendary character, brings you a good luck"と長年書かれていて、ピーターセンさんは英語の教育者として落胆していたそうだが、"87.07.下"の刻印のビールから a がなくなり、"YEBISU, the legendary character, brings you good luck"となったのだと。

エビスビールは自宅で愛飲しているので、缶のラベルを見たが、缶にはこの表記はない。ちなみに瓶にはラッキーエビスという魚が2匹とれたラベルの瓶もあるようだ。「当たり」の様なものだが、特に特典はないという。

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出典:http://web-box.jp/kohassan/yebisu.htm

★a の間違った用法
a の間違った用法として、次の文を挙げている。

"Last night, I ate a chicken in the backyard". これだと一匹のを捕まえて食べたという意味になる。

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チキンを食べたなら、"Last night, I ate chicken in the backyard."で、a は要らない。

これは間違いの英文としても傑作といってよいものだと。


日本人に多い間違い

★日本人はtheを使いすぎる
ある英文学術雑誌の各論文の冒頭の文、66を抜き出して調べると、余計なtheがあったものが24,Theの足りないのは7,aの足りないのは6,余分なaはゼロ、冠詞がカンペキなものが16あったという。

★Theの例
歴史上最も有名なセンテンスを挙げている。

In the beginning God created the heaven and the earth - Genesis 1:1(創世記1:1)

それぞれ一つしかないものだからtheが使われている。

★純粋不可算名詞も間違いやすい
information, equipment, knowledge, assistance, evidence, advice, help, health, dependenceなどが純粋不可算名詞(複数形がない)の例だ。

冒頭のエビスビールのラベルの英文が良い例だ。"YEBISU, the legendary character, brings you a good luck"と長年書かれていたが、1987年7月に修正されて a が取れたという。

★英語に訳せない日本語
「思いやりがなさすぎる」

たしかに逐語訳はできない。筆者の案では、"He is anythging but considerate"だが、これが正解かどうかわからない。


前置詞の使い方

★日本語で「〜で」という場合、常にbyとは限らない
The cranes were observed by binoculars"

ではなくて、

The cranes were observed with binoculars"だという。

by binocularsだと、「双眼鏡に観察された」という意味になるのだ。

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今や「ワープロ」は死語に近くなっているが、タイプライターは"written on a typewriter"というので、「ワープロ」も "written on(not by) a word processor"となる。

★inとonの論理
inとonは論理が一貫している。中に入るのinで、上に乗るのがonである。だからin timeとon timeも、一定時間の中に入るのがon timeで、ある一瞬とぴったり合うとon timeとなる。

また乗り物は、自分で操縦できる者はget in a carで、ただ運ばれるのはget on a trainとなる。

カツラはtake off, 髢(かもじ=付け毛)はtake outだ。髢(かもじ)なんて言葉知らなかった!これがアメリカ人の書いた日本語かと驚く。

★over/aroundの例
Why don't you come over sometime?

Why don't you come around sometime?

どちらも「いつでもおいでよ」という親しみを表しているが、ニュアンスの差は、come overの方が直接的で、come aroundの方がついでに寄る感じがでている。

この"Why don't you〜?"では苦い思い出がある。新入社員の時に外国のお客をアテンドした時、この言い方を知らずに、"Because〜"と答えてしまったのだ。そのお客を、えらく理屈っぽい奴だなと思っていたが、軽い呼びかけ方とは知らなかった。

★明治な大学
University of Meijiというのは英語ではありえず、Meiji Universityでしかない。

of地名が正式名称となっている国立大学はThe University of Tokyo"(東大)しかない。

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★上野動物園のパンダは英語でどう言う
上野動物園のパンダは、the pandas of Ueno Zooか、Ueno Zoo's pandasか、それともUeno Zoo pandasかという疑問には、最も所有感の強いのはUeno Zoo's pandasだが、Ueno Zoo pandasという名詞並びでも良いという。

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時制と相(aspect)

★点と線
ピーターセンさんは、"What are you always doing on Sunday?"と聞かれて何を聞かれているのかわからず、無気味に感じて、答えられなかったという。「日曜日に何ばかりしているのですか?」という感じだと。

これを聞くなら、"What do you usually do on Sundays?"となるだろう。

★英語は「時」日本語は「相」
典型例は日本語の「行く前に」だ。

英語だと行動の時間によって、"before I go; before I went; before I had gone; before I have gone; before I will have gone"といった時制が考えられるが、日本語では「行った前に」とは言わない。常に「行く前に」だ。

ピーターセンさんにとっては、最近のアメリカ人の時制の使い方が崩れてきて、ときどき恥ずかしい思いをするという。

"We have signed a contract"は現在も契約している状態で、"We signed a contract"は、正確に言うと現在では契約はない状態なのだと。


関係代名詞

★カンマの使い方
たとえば次の文だ。

The Nobel Prize which I received last year was a great honor.

The Nobel Prize, which I received last year, was a great honor.

最初の文だと、昨年受賞したノーベル賞ということで、前にもノーベル賞を受賞したことがある様なニュアンスとなる。2番めの文なら、正しく伝わる。

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日本人に多い受動態

この本は雑誌「科学」の1986年1月から1987年12月までの2年間に"Mark Remarks"という名前の連載をまとめたもので、理系の人向けに元々書かれたものだ。

木下是雄さんという人が書いた「理科系の作文技術」というベストセラーもあり、「科学者の書く日本語は受身(受動態)の文が目につく」という。

客観的であるべき自然科学の論文は、英語でも"I"と言わず"the author"と言い、受身の形で書けと教わってきたからだというが、最近では英語国の学者の中でも受動態を排除する動きもあると木下さんは語っている。

理科系の作文技術 (中公新書 (624))理科系の作文技術 (中公新書 (624))
著者:木下 是雄
販売元:中央公論新社
発売日:1981-01
おすすめ度:4.5
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筆者はどちらかというと理系の審査員資格を持っているが、日本語でもやたら受動態が多いのに気が付く。だから筆者の場合は、報告書はすべて能動態で言い直している。

論文でよくあるのは次のような例だ。

"The following results of this experiment was obtained…”

これを英語らしく書くと、

"We obtained the following results in this experiment"とか"The results of this experiment are as follows"とすべて能動態になる。

主語と述語が離れすぎるのもわかりにくい。またピーターセンさんの最も嫌いなのは"was investigated"だという。

"The possibility of building a new hospital with funds provided by both private donation and governmental assistance under the new law was investigated"という感じだ。

これは、シンプルに

"We investigated the possibility of building a new hospital …"とすればわかりやすい。


どの「従って」を使うか?

accordinglyは、従ってというよりは、それに応じてという感じで、consequentlyはas a resultと同じく、結果として何らかの状態となることだ。

よく使われるthereforeは大げさすぎるという。

As, so, since, becauseについては、soは口語的なので、論文では使わない方が良いという。Asはbecauseともwhenともとれるので、意味が正確に伝わらないおそれがあり、科学論文には使わない方が良いという。

sinceとbecauseが、論文などにちょうど良い堅さなのだと。

ピーターセン氏が推薦するのは、therebyとthus、それに論文にふさわしいhenceだ。


この本を有名にしたmyの用法

★電子レンジは my で、冷凍庫は the?
この本を有名にしたもう一つの指摘は、この電子レンジは my で、冷凍庫は the という説明だ。

電子レンジと冷凍庫を比較すると、冷凍庫は一般家庭に普及しているので in the freezer だが、電子レンジは当時では珍しく、自分のモノという所有意識があるので、in my microwave なのだと。

20年前なら電子レンジも珍しかったが、今や1万円以下の電子レンジさえある時代なので、もはやmy microwaveという人は少なくなっていると思う。

シャープ 電子レンジ RE-T1-W5(ホワイト系/50Hz )
シャープ 電子レンジ RE-T1-W5(ホワイト系/50Hz )


なにはともあれ、所有意識によりmyが付くというのは優れた指摘だと思う。


20年前のベストセラーなので、上記のmy microwaveなどのやや古いと思われる例もあるが、それにしても目からウロコの英語本である。

楽しく読めるので、まだ読んでいない人には是非一読をおすすめする。


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Posted by yaori at 11:51│Comments(0) 趣味・生活に役立つ情報 | 英語