2009年05月08日

英語ベストセラー本の研究 日本人の英語本好きがよくわかる

英語ベストセラー本の研究 (幻冬舎新書)英語ベストセラー本の研究 (幻冬舎新書)
著者:晴山陽一
販売元:幻冬舎
発売日:2008-05-29
おすすめ度:4.5
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戦後60年間の10年ごとの英語教育ベストセラー本の特徴をまとめた本。

この本を読むと、いかに日本人が英語学習本が好きなのかがよくわかる。本だけ読んで実践が長続きしないダイエット本の様なことになっていなければ良いのだが…。

筆者の晴山陽一さんは、元々英語教材や経済雑誌の編集者を手がけ、学習ソフトと教本の販売のために独立し、自らもいくつかの英語教育本・教材を出している。

晴山さんのまとめる戦後60年の10年ごとの英語教育ベストセラー本は次の通りだ。

1940年代 第一次英語ブーム 「日米会話手帳」、「ジャック・アンド・ベティー」

1950年代 受験英語隆盛の時代 「和文英訳の修業」、「英文法解説」

1960年代 第二次英語ブーム 「英語に強くなる本」、「英語で考える本」

1970年代 逡巡の時代 「英語の話しかた」、「なんで英語やるの?」

1980年代 混迷の時代 「日本人の英語」、「起きてから寝るまで」

1990年代 英語本ブームの時代 「英語できますか?」、「これを英語で言えますか?」

2000年代 第三次英語ブームの時代 「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」、「”超”英語法」


これを見るだけで、時代の空気がよみがえってくるような気がすると晴山さんは語る。

この本の目次のサブタイトルでは23冊の英語学習本が取り上げられており、言及、引用された本を含めると50冊程度が紹介されている。


1940年代 第一次英語ブーム 「日米会話手帳」、「ジャック・アンド・ベティー」

太平洋戦争中は敵性語として一切禁止された英語だが、敗戦でアメリカ人GIが大挙して日本にやってくるとして、32ページの「日米会話手帳」が敗戦後一ヶ月の1945年9月15日に書店に並び、またたく間に360万部を売り上げた。

英語の会話をカタカナで表した簡単なものだが、その実用性には驚く。例えば:

Good evening! グ・ディーヴニン

I can't understand English アイ カーン タンダスタン イングリッシュ

当時のNHKのラジオ英会話のテキストもスゴイという。

Come on, Kitty. Come here. カ モァン キリー カメーァ

Can't you open it? ケーン チュー オウプネット

Wait a minute. ウェイラ メネット

「ジャック・アンド・ベティ」とは開隆社の中学英語教科書だ。筆者は使ったことはないが、中学校の代表的な教科書だ。

永遠のジャック&ベティ (講談社文庫)永遠のジャック&ベティ (講談社文庫)
著者:清水 義範
販売元:講談社
発売日:1991-09
おすすめ度:4.5
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1947年の指導要領の第一番目に「英語で考える習慣をつけること」を英語教育の目的としているのは瑞々(みずみず)しいと晴山さんは語る。「ジャック・アンド・ベティ」でも一切日本語が書かれていない、「直接教授法」に基づいた教科書なのだ。60年後の今こそ導入すべき指導要領なのではないかと思う。


1950年代 受験英語隆盛の時代 「和文英訳の修業」、「英文法解説」

筆者が大学受験勉強をしたのは、1970年代前半だが、使っていた参考書はここに紹介されているものばかりだ。

和文英訳の修業 4訂新版和文英訳の修業 4訂新版
著者:佐々木 高政
販売元:文建書房
発売日:1981-01
おすすめ度:4.5
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新自修英文典 (復刻版)新自修英文典 (復刻版)
著者:山崎 貞
販売元:研究社
発売日:2008-12-11
おすすめ度:5.0
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英文法解説英文法解説
著者:江川 泰一郎
販売元:金子書房
発売日:1991-06
おすすめ度:4.5
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筆者にはなつかしい参考書ばかりだが、この辺の本はいまでも読み継がれているという。


1960年代 第二次英語ブーム 「英語に強くなる本」、「英語で考える本」

1964年の東京オリンピックから1970年の大阪万博まで、時代を反映しての英会話ブームのベストセラーだ。

筆者は当時は小学生から中学生だったが、オリンピックで外人観光客がたくさん来るので、(筆者の家はヨット競技が行われた江ノ島の近くだったし、観光客の多い鎌倉も近い)英会話を習おうという機運が盛り上がっていたことを思い出す。

英語に強くなる本 改訂新版―教室では学べない秘法の公開 (カッパ・ブックス)
著者:岩田 一男
販売元:光文社
発売日:1961-08
おすすめ度:5.0
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試験にでる英単語―耳から覚える試験にでる英単語―耳から覚える
著者:森 一郎
販売元:青春出版社
発売日:2003-01
おすすめ度:4.5
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筆者も受験勉強の時は、「試験にでる英単語」にはお世話になった。いまだに売られており、最新版はCD付きである。最終刷数は1、856刷、公称部数1,488万部だという。

単語を試験に出た頻度順に並べるというのも画期的だし、当時は気が付かなかったが、単語の意味も試験で使われる意味の順番となっている。

たとえば"species"は通常「種、種類」という意味と憶えるが、試験では"the (又はour) species"と出題されることが多い。その場合は「人類」となるので、この本では”species 名詞 人類、種”となっている。今になってそのスゴさがわかった。

英語で考える本英語で考える本
著者:松本 亨
販売元:英友社
発売日:1968-02
おすすめ度:5.0
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筆者はこの本は記憶がない。

松本亨さんはNHKのラジオ英会話講座を20年以上担当した英語教育の第一人者だ。明治学院に進学し、アメリカ人教師が奥さんと立ち話しているのを聞いて、全く分からないことにショックを受け、中学のリーダーを丸暗記し、次に英語本の速読(初めは一日三ページ、最後は一日100ページで100冊読んだ)で猛烈に努力したという。

松本さんは英語には2つの文型しかなく、それはA=Bか、A→B(AがBを〜する)だという。

松本さんはさらに英語がいかに思考の順序に忠実な言語かを説明しており、次のようにも言っている。

「日本人は何を考え、何をいっているのか分からないという苦情をいう外国人が多い。われわれでさえ分かっていないのである」


1970年代 逡巡の時代 「英語の話しかた」、「なんで英語やるの?」

筆者はこの時代の本はほとんど読んでいない。既に大学に入学していたので、いまさら日本語で書かれた英語教育の本を読む気がしなかったこともあると思う。

英語の話しかた―同時通訳者の提言 (1970年)
著者:国弘 正雄
販売元:サイマル出版会
発売日:1970
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NHKのテレビ英会話の講師だった國弘正雄さんの本がこの時代を代表する英語教育本だという。

國弘さんは「只管朗読」(しかんろうどく)という造語をつくって、ひたすら朗読(音読)することをすすめた。國弘さんは中学生のとき、教科書を1,000回程度読んだという。

1970年発刊の本を約30年後に改訂したのが次の本だ。

國弘流英語の話しかた國弘流英語の話しかた
著者:國弘 正雄
販売元:たちばな出版
発売日:1999-12-25
おすすめ度:4.5
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1980年代 混迷の時代 「日本人の英語」、「起きてから寝るまで」シリーズ

筆者は既に大学を卒業していたので、1980年代の英語教育の本も読んだことがなかったが、以前紹介した多賀敏行さんの「外交官の『うな重方式』英語勉強法」で紹介されていたので、はじめて「日本人の英語」を読んだ。

外交官の「うな重方式」英語勉強法 (文春新書)外交官の「うな重方式」英語勉強法 (文春新書)
著者:多賀 敏行
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
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日本人の英語 (岩波新書)日本人の英語 (岩波新書)
著者:マーク ピーターセン
販売元:岩波書店
発売日:1988-04
おすすめ度:5.0
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近々「日本人の英語」のあらすじを紹介するが、晴山さんは次のように表現している。

「ひとことで言うと、『英語で考える』というのはどういうことなのかを、日本語で岩波新書が掛けるほど日本語に堪能なアメリカ人の著者が、わかりやすく系統だてて説明した書物であり、これが面白くないわけがない(売れないわけがない)。そういう本である。」

「『日本人の英語』は怜悧な観察をユーモアの衣でくるんだ、英語本としては珍しい第一級の読み物であった」

有名な「名詞の前に"a"を付けるのではない、もしも『付ける』という言葉を使うなら"a"に名詞をつけるのだ、とまさに『目からウロコ』の説明をする」と晴山さんも評している。


1990年代 英語本ブームの時代 「英語できますか?」「これを英語で言えますか?」

英語バブルは止まらないというサブタイトルが付いているが、倒産したNOVAがテレビコマーシャルで知名度を上げ、全国展開したのが1990年以降だ。



TOEIC受験者も1990年には33万人だったのが、1999年には87万人に増加し、2006年には152万人になっている。

「これを英語で言えますか?」は立ち読みしたことがある。なんとかの2乗とかの言い方を知らなかったので、参考になった記憶がある。

これを英語で言えますか? デラックスこれを英語で言えますか? デラックス
著者:講談社インターナショナル
販売元:講談社インターナショナル
発売日:2008-12-10
おすすめ度:4.0
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ちなみにAの二乗+Bの三乗=Cの四乗は、"A squared plus B cubed equals c to the fourth power"と言う。


日本人のTOEFL平均点国際比較

日本人の英語力を国際比較する資料として、しばしば言われるのがTOEFLの平均点だ。個人特訓教室というサイトに紹介されているので、引用しておく。

TOEFLデータ:個人特訓教室_ページ_1












日本人の平均点が国際的に低いことについては、マーク・ピーターセンは、日本人の受験者数が多いので、平均点は低くなることを指摘している。たしかにそういう傾向はあるかもしれないが、それにしても世界でドベに近いというのは憂慮すべきことと思う。

ちなみに晴山さんはも受験者数が日本と同程度の韓国のTOEFL平均点は209点に対し、日本は188点だったので、少なくとも韓国に差をつけられていることは間違いないと語る。


2000年代 第三次英語ブームの時代 「ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本」「”超”英語法」

一億総グローバル時代のビッグ・ヒットというサブタイトルで30冊ほどの本を紹介しているが、筆者は一冊も読んだことがない。晴山さんは、まだ評価が定まっていないからと、次の3冊の内容だけ簡単に紹介している。

英会話・ぜったい・音読 【入門編】?英語の基礎回路を作る本英会話・ぜったい・音読 【入門編】?英語の基礎回路を作る本
著者:国弘 正雄
販売元:講談社インターナショナル
発売日:2001-04
おすすめ度:4.5
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この本の序文にある「英語習得の王道は『音読』」という言葉が、國弘さんの長年英語教育にかけてきた結論だ。

ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本
著者:向山 淳子
販売元:幻冬舎
発売日:2001-11
おすすめ度:4.0
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読んだことのない筆者などは、「?」と思えるタイトルの本だが、さすが幻冬舎である。ネーミングがひと味違う。内容は、松本亨さんの英語はA=BかA→Bしかないという単純化発想の本だと。

晴山さんやマーク・ピーターセンさんが言う「語順は英語の命」(必ず小部分から大部分へ)という点を、この本の著者は簡単にかたづけているので、マーク・ピーターセンさんは「カリカリした」そうだ。

「超」英語法 (講談社文庫)「超」英語法 (講談社文庫)
著者:野口 悠紀雄
販売元:講談社
発売日:2006-10-14
おすすめ度:4.5
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勉強法で数々のベストセラーを出している野口悠紀夫さんの英語法は、英語は単語帳で暗記せずに、文脈で覚える、そのためには有名な文章を暗記するのが一番というものだ。

ちなみに野口さんはジョージ・オーウェルのアニマルファームやケネディの就任演説全文を暗記したという。

Animal Farm (Signet Classics)Animal Farm (Signet Classics)
著者:George Orwell
販売元:Signet Classics
発売日:1996-04-01
おすすめ度:4.5
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Ask Not: The Inauguration of John F. Kennedy and the Speech that Changed AmericaAsk Not: The Inauguration of John F. Kennedy and the Speech that Changed America
著者:Thurston Clarke
販売元:Audio Renaissance
発売日:2004-10-08
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口語に関する限り、聞く練習がすべてで、話す練習は全く必要がないと野口さんは語る。「聞くことができれば、自動的に話すことができる」と。

語学のマスターには4,000時間が必要だ。中学から大学まで約3,000時間英語を勉強してきたので、あと1,000時間を社会人になっても継続することを野口さんはアドバイスする。


究極の学習法の条件

最後に晴山さんは、これら数十冊の本を総括して究極の英語学習法の骨子を説明している。

(1)学習の抵抗感をなくす ー 英語に抵抗感を持っていたら、学習は続かない。

(2)音読と暗誦を繰り返す ー 体を使わない英語学習は身につかない。

(3)リスニングを他の三技能に先んじる ー 音の伴わない英語は、使いものにな
らない

(4)継続が不可欠 ー 一朝一夕に英語力がつくというのは幻想にすぎない

(5)まず盤石の基礎を築くことが肝要 ー 基礎を手抜きすると、どんなに勉強をしても砂上の楼閣になりかねない

筆者がこれに付け加えるとすれば、「なにくそ」精神、きれいな言葉で言えば、向上心だ。どの著者も英語で失敗した経験があり、それを糧に英語勉強によりいっそう力を注ぎ、英語力を向上させている。筆者も全く同じだ。

1978年、最初の海外赴任で乗ったパンナム機で、米人スチュワーデスに「ミルク」が通じずに、ビールを持ってこられた屈辱が筆者の英語上達の原点だ。

多くの本が英語教育について毎年出版されているということは、日本人には常に英語学習向上心があるということだと思う。それが一番大事なことだ。

ただし、英語教育本がコンスタントに売れるということは、ダイエットと同じように、ちょっと読んでその気になっても、長続きしないで、また違った英語教育本に飛びつく人がたくさんいるのだと思う。

是非この本を参考にして、紹介されている本の中から自分にあったような本を読んでほしい。

本によって言っていること、やり方は多少の違いはあるが、英語勉強法に「ベスト」はない。ただ「ベター」があるのみで、その意味ではどの本でも良いので、まずは実行してみることが大切だ。

最後に筆者の好きなBrian Tracyの言葉を紹介しておこう。

"Great American philosopher Michael Jordan said "Just do it!"


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Posted by yaori at 13:01│Comments(0)TrackBack(1)趣味・生活に役立つ情報 | 英語

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