2009年05月31日

超英語法 野口悠紀雄さんの英語勉強法

2009年5月31日追記:

下記のあらすじを書くために読んだのは2004年4月発刊の単行本だったので、iPodの活用について全くふれていなかった。iPod前の時代なので、やむをえないところだろう。

文庫本は2006年10月発刊なので、あるいはiPod、特にPodcastを活用しての英語勉強法について書いてあるかもしれないと思って、文庫本も読んでみた。

内容は変わりなく、気づいた唯一の変化は文庫版のあとがきだった。

iPodの活用については、「このような技術進歩の成果を最大限に活用することが重要だ」と書いてあるだけだが、そのほかに野口さんがスタンフォード大学客員教授として赴任して感じたことを書いているので、紹介しておく。

スタンフォードで痛感したのは、日本人学生の英語力の低さだと。

スタンフォードの留学生数を見ても、1990年代のはじめ頃は日本、中国、韓国それぞれ120名程度で、ほぼ同数だったが、現在は中国が400名、韓国も300名強に対して、日本は逆に減っており60名程度になっているという。

企業派遣の留学生が減ったこともあるが、スタンフォードで教えていて感じた一番の原因は日本人留学生の英語力の低下と考えざるをえないと野口さんは語る。

ITにより世界の経済構造は大きく変わり、アメリカで企業に電話すると、ほとんどの場合インドのコールセンターにつながるが、日本はこのようなITを使った変化から取り残されている。

インターネット上の世界言語は英語であり、日本人の英語力の低さにより、日本が大きな変化から取り残されているのだと。

単行本で述べていなかった「読む英語」の重要性にもふれている。

今や情報収集の主役はインターネットの検索であり、世界中のあらゆる情報を調べようとしたら、それは英語の文献が中心になる。今後の世界は日本語と英語の差がさらに広がり、「差が本質的なものになる」だろう。

野口さんがスタンフォードにいたときに、Googleのトラックが毎日大学図書館に横付けになり、本を搬送していたという。

本をロボットが撮影して電子化するのだ。それが現在ベータ版で提供されているGoogle book search(Googleブック検索)だ。

たとえばGoogleブック検索で「英語 夏目漱石」で検索してみるとヒットするのは122件だ。

Google book search





次に"English Soseki Natsume"で検索すると、ヒットするのは526件だ。

goo





もちろんコンテンツの数よりコンテンツの中身の方が重要だが、それにしても漱石の引用や作品ですらインターネット上の情報では英語の方が日本語より圧倒的に多いのがわかる。

このグーグルブック検索は本だけの検索で、著作権の関係から載っている本でも一部しか公開されていないし、検索にかからない本がまだ圧倒的に多いが、それでも何かのテーマについて書く時には大変便利なツールだ。

話が横道にそれたが、いずれにせよ英語を読めるかどうかで、その人の情報能力には本質的な差が生じることになる。英語の勉強は今後ますます重要性を高めているのであると野口さんは文庫版のあとがきで記している。

目的のPodcastの活用法については、別の本を読んだ方がよさそうなので、調べてまたあらすじで紹介する。

尚、野口さんの「超英語法」のサイトがあり、現役英語教授との対談とか、超英語法講演会レポートなどのコンテンツが載っていて参考になるので、紹介しておく。

noguchi ondemand college







2009年5月27日初掲:

「超」英語法 (講談社文庫)「超」英語法 (講談社文庫)
著者:野口 悠紀雄
販売元:講談社
発売日:2006-10-14
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


以前紹介した「英語ベストセラー本の研究」で2000年代、第三次英語ブームの時代の代表作として紹介されていたので読んでみた。

読んでみてあらためて「英語ベストセラー本の研究」が内容を的確にまとめていることがわかった。さすが元編集者が書いた英語の本である。

孫引きのようになるが、筆者の「英語ベストセラー本の研究」のあらすじのなかで、「超英語法」関連部分を引用すると次の通りだ。

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勉強法で数々のベストセラーを出している野口悠紀夫さんの英語法は、英語は単語帳で暗記せずに、文脈で覚える、そのためには有名な文章を暗記するのが一番というものだ。

ちなみに野口さんはジョージ・オーウェルのアニマルファームやケネディの就任演説全文を暗記したという。

Animal Farm (Signet Classics)Animal Farm (Signet Classics)
著者:George Orwell
販売元:Signet Classics
発売日:1996-04-01
おすすめ度:4.5
クチコミを見る




(注:ケネディの大統領就任演説で最も有名な"Ask not, what your country can do for you. Ask what you can do for your country. Ask not, what America will do for you but what together, we can do for the freedom of man"は、最後の12分20秒くらいにある。)

口語に関する限り、聞く練習がすべてで、話す練習は全く必要がないと野口さんは語る。「聞くことができれば、自動的に話すことができる」と。

語学のマスターには4,000時間が必要だ。中学から大学まで約3,000時間英語を勉強してきたので、あと1,000時間を社会人になっても継続することを野口さんはアドバイスする。

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簡単ではあるがほぼこの本の要点は抑えていることがわかる。


英語は聞くことができれば話すことができる

野口さんの英語勉強法の最大の論点は、「英語は聞くことができれば、ほぼ自動的に話すことができる」という点だ。

それが冒頭の部分で語られているので、その部分を引用する。

「多くの人は、実用英語とは英語を「話すこと」だと考えている。英語の能力があることを示すのに「英語を流暢に話せる」と表現することが、その証拠だ。

しかし、これは大きな間違いだ。実際の場面で必要なのは、「聞くこと」なのである。そして、聞くことができれば、ほぼ自動的に話すことができる(詳しくは、第一章の2を参照)。

だから、実用英語の訓練は、実際に話されている英語を聞くことに集中すべきだ。

英会話学校もテレビの英会話番組も、あるいは「こうした場合にこう話す」という類の参考書も、「実用英語は話すこと」としている点で、基本的に誤っている。」


聞ければ自動的に話せる例として、友人と野口さんが話している例を、"Coffee Break"というコラムで紹介している。

会話は「相手に助けられながら話す」のだと。相手が言っていることをそのまま繰り返すだけで会話が成立することもあるし、Yes, Noを挟んだり、簡単な返しの言葉"Yes, indeed"とか"Oh, really?"、"That's right"などを使っても良い。

相手に依存して、相手を真似するだけで自動的に話すことができる。

実際の会話はこのように相手のペースで進むことが多い。相手が言っていることを正しく理解できさえすれば、こちらが複雑な表現法をできなくとも、問題なく進行するのだと。

だから「聞く訓練に集中すべし」という観点からすると、多くの英会話学校でやっている授業や、ラジオ、テレビの番組の英語の勉強法は、間違っていると野口さんは語る。

聞く訓練においては、教師の役割は少ないため、英会話学校としては売り物にならない。「話せるように訓練します」というのは「供給者の論理」で、それにはまりこまないことが重要だと。

「英語は聞ければ話せる」というのは英語教育業界に真っ向から反発する内容なので、論議を呼ぶ意見だが、筆者自身の経験からしても正しい順番だと思う。

赤ん坊は親の話す言葉を聞いて言葉を覚えるわけだし、筆者自身、"R"と"L"の発音の違いがわかったのは、アルゼンチンの下宿でアルゼンチン人の友人とワインの話をしている時だった(白ワインをスペイン語ではvino blancoと言い、"L"の発音だ)。

友達の発音をまねてvino blanco(ビノ・ブランコ)と言えた訳だ。

ちなみにスペイン語では"L"と"R"の区別はあるが、"V"と"B"の区別はないのがややこしいところだ。だからヴィノ・ブランコではなく、ビノ・ブランコなのだ。


英語細胞説

英語を聞いたり読んだりするときは、脳の英語細胞を使うという「英語細胞説」があるそうだが、野口さんの英語勉強経験からも、この「英語細胞説」は納得できる点が多いという。

「英語細胞」という言い方が正しいのかどうかわからないが、米国駐在九年の筆者の経験からしても、「英語で考える」ことができる段階まで上達すれば、たしかに「英語細胞」は「日本語細胞」と別にあるという説も理解できる。

駐在が長くなると、英語の単語は出てくるが、日本語の単語が思い出せないということがある。筆者はアルゼンチンに駐在してスペイン語ができるので、スペイン語でも同様のことがあった。

これも「英語細胞」、あるいは「言語細胞」の例なのだろう。


ひとまとめで丸暗記する

野口さんのもう一つの主張は、「単語帳でばらばらに単語を覚えても使えない。丸暗記でひとまとまりのものとして覚える必要がある」ということだ。

このブログで紹介した多賀敏行さんの「外交官の『うな重方式』英語勉強法」でも「うな重方式」として紹介しているように、多くの英語勉強法の著者が、様々な表現で語っている通りだ。

外交官の「うな重方式」英語勉強法 (文春新書)外交官の「うな重方式」英語勉強法 (文春新書)
著者:多賀 敏行
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
クチコミを見る


ちなみにコラムで、経済学の授業で”マルチンゲール”という言葉が出てきて意味が分からずに困ったという話を紹介している。筆者もこの言葉は知らなかったが、負ければ賭け金を倍にしていく賭けのことだ。


英語を聞く練習

この本を読んで、野口さんの勉強法は、かなり筆者の勉強法と似ていることがわかった。

第5章「聞く練習を実践する」では、次のサブタイトルで説明している。

1.通勤学習のすすめ

2.インターネットで演説を聞く

3.インターネットでニュースを聞く

4.オーディオブックで文学作品やビジネス書を聞く

5.映画は実用英語の勉強教材として適切か

通勤時間を利用して、英語を聞く点は筆者と同じだが、筆者の場合、「歩きながら本を読む」をモットーに、歩いている間にも英語を聞いている。

筆者が読んだ単行本は2004年4月の発刊で、まだiPodが広まる前の時代なので、iPodのAudible.comのオーディブックとの相性の良さPodcastでアメリカの有名大学などの講義が視聴できる便利さなどは語られていない。

Audible.comサイト:

audible






Podcastのスタンフォード大学のページ

Podcast Standford University






ちなみに筆者がiPod第3世代のiPodを買ったのは、2003年の冬頃だ。iTunesのWindows版が出たのが、2003年10月ということなので、たぶんその直後だと思う。

この本も、今改訂版が出れば、iPodを活用した英語勉強法に見直されることだろう。


野口さんは英語をどう勉強してきたか

最後の第7章「私は英語をどう勉強してきたか」のサブタイトルは次の通りだ。

1.中学生のときに見つけた丸暗記法
2.アメリカ留学
3.帰国後に英語を勉強

帰国後に英語を勉強とは、上記の通勤学習のことだ。

野口さんの英語勉強の目的は、「アメリカ人が普段の生活で使っている口語も聞けるようになること」で、象徴的に言えば「映画の英語がすべて分かること」だという。

これが野口さんに不足している能力で、それに加え、正式な英語を書くのは難しいと今でも思っていると語る。野口さんは留学中に大学の博士論文を書くときに、冠詞の使い方が悪いと指摘されたという。本当に冠詞は難しい。


日暮れて道遠し

この本で何度も引用されている故伊丹十三監督の「ヨーロッパ退屈日記」に、ヴァイオリンの奏者に三段階あり、1.全く奏することができない者、2.非常につたなく奏する者、3.非常に巧みに奏する者だという話が出てくる。

ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)ヨーロッパ退屈日記 (新潮文庫)
著者:伊丹 十三
販売元:新潮社
発売日:2005-03
おすすめ度:4.5
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野口さんはこの第2段階だと謙遜する。この道50年で「日暮れて道遠し」だと。

64歳になってからも新しい外国語に挑戦したシュリーマンの例を取り上げ、映画の英語がすべて聞けるように今後も英語を楽しく勉強したいと締めくくっている。

古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)古代への情熱―シュリーマン自伝 (岩波文庫)
著者:ハインリヒ シュリーマン
販売元:岩波書店
発売日:1976-01
おすすめ度:4.0
クチコミを見る



まさに同感である。英語の勉強に終わりはない。筆者も通勤時間に英語のオーディオブックを聞き、車に乗るときはaudible.comでダウンロード購入してiPodに入れたチャーチルの「第二次世界大戦」を聞いている。

Audible.comのチャーチルの第二次世界大戦のページ

the second world war







Second World War (Second World War)Second World War (Second World War)
著者:Winston, Sir Churchill
販売元:Mariner Books
発売日:1986-05-09
おすすめ度:5.0
クチコミを見る




ノーベル文学書受賞作でもあり、チャーチルの英文が格調高いこともあって、まだまだわからないことが多い。

筆者の場合も、まさに、この道40年で「日暮れて道遠し」だ。


英語勉強の原点

野口さんは、英語で悔しい思いをした経験はないようで、中学の英語弁論大会で、(受賞はしなかったが)スピーチをした時が原点だという。

筆者の場合は、24歳でアルゼンチンに赴任したときに乗ったパンナム機で、米国人スチュワーデスに何度言っても"milk"が通じず、結局ビールを持ってこられた時の悔しさが、英語勉強の原点だ。

それからも何度も悔しい思いや失敗をした。

これからもあの悔しい思いを忘れずに、少しでも英語力向上に努力するつもりだ。


「聞くことができれば話せる」とは異論があるかもしれないが、まずはカンペキに聞いて分かることが英語の最大の上達法であることは間違いないと思う。

いろいろな意味で参考になる本だった。是非iPod時代にあわせて改訂版を出してもらいたいものだ。


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Posted by yaori at 21:38│Comments(0)TrackBack(0) 勉強法 | 英語

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