2009年07月22日

幼稚園バス運転手は幼女を殺したか 今、脚光を浴びる2001年のレポート


幼稚園バス運転手は幼女を殺したか幼稚園バス運転手は幼女を殺したか
著者:小林 篤
販売元:草思社
発売日:2001-01
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

1990年5月に発生した足利市幼女殺人事件の犯人とされ、自白やDNA鑑定などの証拠から最高裁で無期懲役が確定したが、2009年5月のDNA再検査で冤罪だったことが判明した菅家利和さんの事件を様々な角度からレポートした本。

2001年出版の本だが、書店に平積みになっていたので興味を持った。

400ページにも及ぶ犯行現場や犯行状況、菅家さんの私生活と家族環境、DNA鑑定の概要などを含んだ、あまりにも重い内容だが、もし裁判員に指名されたらこの程度のレポートは読み込んでおく必要があるだろうと思って読んでみた。

この裁判では最高裁がはじめてDNA鑑定を証拠として採用したが、結果的に当時のDNA鑑定の精度は低く、試料の状態が決定的に悪かったため誤った結果が出ていたことが判明した事件だ。

この本の他、足利市幼女殺人事件のDNA鑑定に疑問を投げかけた別の本も出ている。

魔力DNA鑑定―足利市幼女誘拐殺人事件魔力DNA鑑定―足利市幼女誘拐殺人事件
著者:佐久間 哲
販売元:三一書房
発売日:1998-09
クチコミを見る


あきらめずに再審請求を繰り返してついに冤罪を証明した「菅家さんを支える会」の人たちの地道な努力に心から敬意を表すとともに、やりきれない怒りがこみ上げてくるのを覚える。

この本ほどあらすじを書くことが不適当と感じた本はない。

詳しく書けば、菅家さんの最も人に知られたくない私生活や診察記録、学校の成績など機微な情報をネットで公開することになり、ある意味菅家さんへの個人攻撃にもなってしまう。それは筆者の意図するところではない。

「自分ではやってはいないんですが、信じてもらえなかったんです。ですから、誘導とかはなくても、やったと言うしかないわけです。自分でも馬鹿だとは思うんですが…」 これが著者の小林さんに語った菅家さんの言葉だ。

それ以外にも「なんで?」という言動は多い。


もちろん非難されるべき人は多い。

・高圧的で菅家さんを犯人と決めつけた一審の弁護人(一審の弁論要旨はわずか原稿用紙13枚だった)

・菅家さんを犯人と疑って、逮捕される前にクビにした幼稚園経営者

・足利市で3件も(菅家さんの2審裁判が終わった直後、群馬県大田原市で同様の幼女失踪事件発生)同様の事件が起こったのに、無罪の菅家さんを逮捕して、真犯人には時効を成立させてしまった栃木県警

・菅家さんを初めから有罪と決めつけ、傍聴人から「能力が低いのはどっちだと思う」と捨てぜりふを浴びせられた宇都宮地方裁判所の判事

・マミちゃんを亡くした親に「何でパチンコ屋に連れてきたんだ」という罵声を浴びせ、自殺を考えるまで思い込ませたもはや犯罪的といえるほど無神経な栃木県警課長

・菅家さん逮捕につながった家宅訪問が手柄となり1階級特進が決まり、「ジャンボ宝くじが当たった気分」と言った警官

・試料が少なく、何度もDNA鑑定不能と回答していながらも、不正確なDNA鑑定を実施し、自らは警察を辞めて競馬会にトラバーユしたDNA鑑定の科警研技官

・たった3回の面談で菅家さんを「代償性小児性愛」と呼んでレッテルを貼った精神鑑定医


一方で頭が下がるプロもいた。

・殺害されたマミちゃんの写真を手帳に挟んで、不休で捜査にあたった栃木県警の現場の警察官たち

・この事件を解決するために幼女連続殺人事件(宮崎勤事件)を解決させた敏腕警察官を栃木県警本部長として送り込んだ警察庁

・やる気のない一審の弁護人の弁論要旨はわずか原稿用紙13枚分だったのに対し、2,320枚もの弁論要旨を提出した2審の弁護団

・400ページもの大作レポートを書き、菅家さんを信じて証拠を集めたこの本の著者でジャーナリストの小林篤氏

・菅家さんの無実を信じて最後まで支援した友人や支援者

・冤罪事件の本は売れないと言われる中で、あえて2001年に本書を出版した草思社


前述の理由であらすじは詳しく書けない。

読んで感動を覚える本であることは間違いない。裁判員制度に関心のある人には必読書と思う。

2001年発刊の本だが、あらためて書店には並んでいると思うので、是非一度手に取ってみて欲しい。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。







Posted by yaori at 23:25│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション 

この記事へのトラックバックURL