2009年08月25日

カラマーゾフの兄弟 ロシアは時間の流れが超ゆっくりだ

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)
著者:ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2006-09-07
おすすめ度:4.5
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カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)
著者:ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2006-11-09
おすすめ度:4.5
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カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟3 (光文社古典新訳文庫)
著者:ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2007-02-08
おすすめ度:4.0
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カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 4 (光文社古典新訳文庫)
著者:ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2007-07-12
おすすめ度:4.5
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カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)
著者:ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2007-07-12
おすすめ度:4.5
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光文社の古典新訳「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。

ドストエフスキーの作品は今まで何回か挑戦したが、カラマーゾフの兄弟はその圧倒的なボリュームに今まで手が出せないでいた。

新訳が出てベストセラーとなり話題になっていたので、いわば夏休みの読書として読んでみた。

カラマーゾフの兄弟は文庫版で全部で5巻、2,000ページの小説と300ページの解説から成り立っているが、最後の第12章の裁判の日を除くと、わずか4日間の出来事だ。

まさにロシアの大河の流れのように時間の流れは超ゆっくりだ。

筆者は1993−4年頃に2回ロシア各地に出張したので、当時のことを思い出した。この時の話は「ロシアン・ダイアリー」のあらすじに書いたので参照して欲しい。

ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳ロシアン・ダイアリー―暗殺された女性記者の取材手帳
著者:アンナ・ポリトコフスカヤ
販売元:日本放送出版協会
発売日:2007-06
おすすめ度:5.0
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当時レアメタルなどロシア製品がいわば換金売りされていたので、北極圏にあるロシア最大のニッケル工場では、工場の従業員は何ヶ月も給料が遅配となり、食料や燃料などの生活必需物資を工場から配給されて生きているという話だった。

よく給料が払われずに暴動が起きないものだと感心していたが、ある人はロシアは農奴の歴史があるので、現金が無くとも住民は自給自足に慣れているのだと言っていたほどだ。

今はさすがにこんなことはなくなったのだろうが、当時は物資の不足がすさまじく、おみやげに日本のストッキングを持って行ったり、トイレットペーパー持参で出張に行き、帰りに使い残しを向こうの人にあげると喜ばれたものだ。

物質的には非常につつましいというか、貧しい生活をしていたが、それでも親の代から極寒の地に住んでいるウラル山脈の住民達はジョーク好きで、ボロ家ながらもセカンドハウスを持っていたりして、モノの豊かな日本とはまた違った生活を見た思いだった。

閑話休題。

小説のあらすじは、ポリシーとして詳しく紹介しないが、なにせ4日間の出来事なので、実はあらすじもコンパクトに次のようにまとめられる。

19世紀なかばの帝政ロシアで、地方の資産家で年老いても好色なフョードル・カラマーゾフ氏と、彼を憎む息子達の財産と愛人をめぐる争いがショッキングな事件を引き起こし、ロシア全土を揺るがせた大スキャンダル裁判へと発展した。この小説はその事件と裁判をめぐる様々な人間像を描いたものだ。

詳しく書くと読んだときに興ざめなので、この程度にしておくが、登場人物の細かい心理描写や芝居がかった発言を、現代風にわかりやすく訳している亀山東京外語大教授の新訳には脱帽する。

各巻の巻末についている亀山教授の解説も興味深く、最後の第5巻(エピローグ)には300ページほどのドストエフスキーの紹介、年譜、解題、訳者あとがきがついており、大変参考になる。

この本のあとがきで「蛇にピアス」の作家の金原ひとみさんの言葉が紹介されている。

蛇にピアス (集英社文庫)蛇にピアス (集英社文庫)
著者:金原 ひとみ
販売元:集英社
発売日:2006-06
おすすめ度:3.0
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「上巻半分を読むのに約3ヶ月。……中巻と下巻を私はほぼ3日ほどで読み終えたのだ。何だなんだこれはこんなに面白い小説があるなんて!」

ちょうどこんな感じだ。

最初は重苦しく、500ページ読んでも1日の出来事もカバーできない。なかなか話が進まないのでイライラしてくるが、流れ出すと一気に読み込んでしまう。

ドストエフスキーは初めから第2話を書くつもりでいたので、これは合計2,000ページもの小説だが、第1話のみで、全体として未完の作品である。

筆者はドストエフスキーの大作なら、どちらかというと「罪と罰」の方をおすすめするが、「一生に一度はドストエフスキーの大作を読むんだ!」という気概ならば、訳もわかりやすいので「カラマーゾフの兄弟」も良いと思う。

罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)罪と罰〈1〉 (光文社古典新訳文庫)
著者:フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2008-10-09
おすすめ度:4.0
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罪と罰〈2〉 (光文社古典新訳文庫)罪と罰〈2〉 (光文社古典新訳文庫)
著者:フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2009-02
おすすめ度:5.0
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罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫)罪と罰〈3〉 (光文社古典新訳文庫)
著者:フョードル・ミハイロヴィチ ドストエフスキー
販売元:光文社
発売日:2009-07-09
おすすめ度:5.0
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新訳が出て、何十万人もの人がこの本を買っている。多くの人が挑戦している本でもあり、やる気さえあれば是非挑戦して欲しい世界の名作である。


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Posted by yaori at 00:46│Comments(0)TrackBack(0) 小説 

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