2009年11月16日

オバマ外交で沈没する日本

オバマ外交で沈没する日本オバマ外交で沈没する日本
著者:日高 義樹
販売元:徳間書店
発売日:2009-06
おすすめ度:4.0
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元NHKワシントン支局長で、現ハドソン研究所主席研究員のジャーナリスト日高義樹さんのオバマ政権批判本。

多くの米国民の支持を得て誕生したオバマ政権の支持率も次第に下落し、現在は支持が52%、不支持が43%となっている。

obama job approval2





出典:http://www.realclearpolitics.com/

オバマ大統領がちょうど11月13日から23時間という短い時間ではあるが、日本を訪問した。

人なつこい笑顔と子どもの時に訪れたという鎌倉の大仏と抹茶アイスクリームの話で、たぶん日本国民には良い印象を残したと思うが、就任1年目の成果といえば、プラハでの核兵器廃絶を目指す宣言でノーベル平和賞を受賞した他は、これといってないのが現実だ。

米国の内政・外交ともにオバマ大統領のいわばメッキがはげてきた感があるが、それにしてもこの本の帯のように「北朝鮮にミサイルを撃たれ放題!中国にもへつらう!無能なオバマのアメリカが日本を滅ぼす!」と過激な言葉でオバマ政権を批判している本は珍しい。

ハドソン研究所は松下幸之助の本でも書かれていたハーマン・カーンという未来学者が開設したシンクタンクで、保守派(=共和党)の牙城である。オバマ政権にはいわば敵対するシンクタンクなのだと思うが、それにしても日高さんのオバマ攻撃の舌鋒は鋭いものがある。

この本の前書きで日高さんはこう言い切っている。

「オバマ大統領は、アメリカでも日本でも圧倒的な人気があるが(この本が書かれたのは2009年前半)、彼のなかにアメリカの理想をみることはできない。オバマ大統領はアメリカ政治の駆け引きに通じ、演説と宣伝に長じている政治家にすぎない。」

「オバマ大統領の景気回復策は失敗する。(中略)問題はオバマ大統領の外交である。オバマ大統領とその政権による国際政策や軍事政策はこれまでの世界を一変させる。その結果、日本が苦しい立場に追い込まれることは必至である。」

このブログでオバマ大統領の著書を紹介し、候補者の段階から応援してきた筆者としては、日高さんの評価は厳しすぎるような気がする。いずれにせよ日高さんの様な見方もあることがわかり、参考になった。


この本の目次

この本はアマゾンのなか見検索に対応していないので、目次を紹介しておく。どういう内容か想像できると思う。


第1章 オバマは北朝鮮と正式国交を樹立する
 1 北朝鮮のミサイル発射は失敗した
 2 オバマ大統領は6カ国協議には戻らない
 3 クリストファー・ヒルはなぜブッシュを裏切った
 4 北朝鮮戦車部隊はいまや脅威ではない
 5 オバマは北朝鮮を承認するか

第2章 オバマは日本防衛に関心がない
 1 中国のミサイルが在日米空軍基地を狙う
 2 在日米軍基地を遠くへ移動させる
 3 アメリカ空軍は日本を離れていく
 4 マラッカ海峡のパトロールをやめるのか
 5 アメリカ国民は強いアメリカを望んでいない

妥3章 オバマの中国戦略は失敗する
 1 中国の経済発展は地政学上限界だ
 2 オバマ大統領は中国経済を頼りにしている
 3 オバマ大統領は中国にへつらっている
 4 オバマは台湾を守らない
 5 アメリカ軍が東シナ海と日本海から追い出される

第4章 オバマは中東から追い出される
 1 アフガニスタンはオバマのベトナムになる
 2 パキスタンの核兵器が危ない
 3 オバマはアメリカ軍をイラクから引き揚げることができるのか
 4 イランは中東のすべてを支配しようとしている
 5 中東はさらに混乱する

第5章 オバマには世界戦略がない
 1 オバマ大統領は軍人に嫌われている
 2 オバマ政権には世界戦略の専門家がいない
 3 世界は核兵器であふれることになる
 4 オバマは国連を腐敗させる
 5 オバマ大統領は保護貿易をおしすすめようとしている

第6章 日本はどうする
 1 ドイツとロシアが同盟体制をとる
 2 2010年代は地政学的対立の時代になる
 3 日本の国会は国権の最高機関ではない
 4 日米関係はどう動いてきたか
 5 優れた指導者を選ぶことは核兵器をつくるよりも難しい


あまり詳しい中身を紹介する気にならないので、この程度にしておくが、いくつか気になる日高コメントを記しておく。

★ブッシュ政権の6カ国協議代表だったクリストファー・ヒル氏は、まんまとイラク大使に栄転した。ヒル氏はブッシュ大統領を裏切った。

★オバマ大統領の政治的なモットーは「考えられないことを考える」だという。太平洋戦争で日本を初めて空襲したドゥリトル少佐を高く評価しているのだと。爆撃機を空母に乗せ、空襲するという奇襲攻撃は、山本五十六を報復のためミッドウェー決戦に向かわせたのだと。



★アメリカが恐れているのは、アメリカの通信衛星が中国によって攻撃を受け、通信機能が破壊されることだ。

★ビジネスだけに集中させてきた日本をアメリカが軍事的に守るのは当然であるというのは、共和党の考え方だ。オバマ大統領は日米安保条約によって日本の安全を維持することがアメリカの国益に直接つながるとは考えていないようである。

★世界経済不況のなかで、アメリカ国債を2兆ドルも持っている中国しか頼りにならないため、オバマ政権は中国には言われ放題だ。温家宝首相は「アメリカ人は貯金をしなければならない。ドルの信用を高めなければならない」と言っている。これに対しアメリカは中国の人権弾圧批判をやめ、迎合姿勢を示している。

★オバマ政権の商務長官は、アメリカで最も中国寄りのゲーリー・ロック前ワシントン州知事で、ヒラリー・クリントン国務長官も中国から莫大な献金を受け取っていると言われている。

★オバマ大統領はグアンタナモ基地に収容されているテロリストをアルカイダのメンバーが大統領をやっているイエメンに戻そうとしている。

★オバマ大統領はアメリカの労働組合を保護するために、NAFTAなど自由貿易に反対している。

★オバマ政権の通商代表に貿易を知らない黒人ロン・カーク元ダラス市長を任命したが、この任命はオバマ大統領が国際貿易など全く考えていないことを示している。

★世界全体を客観的に見渡せば、100%に限りなく近い確率で東京オリンピックは実現しない。(この本は6月末の出版だ)

★「平和は与えられるものではない。勝ち取るものだ。軍事力を持つのは平和を維持するためだ。平和はタダではない。」この世界の常識を日本人はいまだに理解していない。

★日本人が世界の現実を見据えれば、国家と国民が無事に生存を続けるためには、憲法と日米安保条約を変える必要があることを理解することは難しくないはずだ。しかし、そう考える指導者がいない。


最後の日米安保条約見直し、日本再(核?)軍備論で、日高さんの本音が見えた感じではある。


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Posted by yaori at 23:45│Comments(0)TrackBack(0) バラク・オバマ | 政治・外交

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