2009年11月21日

投稿500回記念! 奇跡のリンゴ こんな面白い本ひさしぶりに読んだ

このブログの投稿も、いよいよ500回となった。

2005年1月にこのブログを書き始めて5年で500回なので、大体週に2回のペースであらすじを紹介してきた。

500回記念は、「奇跡のリンゴ」だ。

こんな面白い本ひさしぶりに読んだ。500回記念にふさわしい本である。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
著者:石川 拓治
販売元:幻冬舎
発売日:2008-07
おすすめ度:4.5
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NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」でも取り上げられた青森県の無農薬リンゴ農家の木村秋則さんの苦労を描いたノンフィクション作品。



NHKの番組のキャスターの茂木健一郎さんのブログ、クオリア日記にも木村さんのことが紹介されている。木村さんの歯の抜けた笑顔が印象的な表紙の本だ。

茂木さんの発案で、この本が出来た経緯もあり、茂木さんのブログではこの本のアウトラインがそっくりそのまま取り上げられている。木村さんがNHKの番組で語ったことをそのまま本にしている感じだ。

「マイクロソフトでは出会えなかった天職」も大変面白かったが、この本も非常に面白い。ほとんどノンフィクション小説といえる内容だ。


木村さんは1949年生まれ。巨漢相撲取りの岩木山で有名な岩木山で農家の次男として生まれ、リンゴ農家の婿養子となる。

奥さんが農薬過敏症で農薬に苦しめられたのと、ある時読んだ福岡正信さんの「自然農法」に惚れ込んで無農薬のリンゴ生産を決意する。

自然農法 わら一本の革命自然農法 わら一本の革命
著者:福岡 正信
販売元:春秋社
発売日:2004-08-20
おすすめ度:4.5
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それから8年間は苦労の連続だ。木村さんのリンゴ園は農薬をやめたので、リンゴの木は生気を失い、結局何年も生産ゼロが続いた。

お金がなく、家族にもみじめな生活をさせていた木村さんが、弱音を吐いて「もう諦めた方がいいかな」と言うと、おとなしい長女は色をなして怒ったという。

「そんなの嫌だ。なんのために、私たちはこんなに貧乏しているの?」

木村さん自身の「リンゴが教えてくれたこと」によると、木村さんの長女は次のように言ったという。

「お父さんのやってきたことはすごいこと。答のない世界でゼロから始めてここまで来た。」うれしかったと。

リンゴは木村さんの「公案」だ。「公案」については、「ビルゲイツの面接試験」のあらすじでも紹介したが、禅問答のことだ。

8年間努力して、結局失敗し、死に場所を求めてロープを持って岩木山の山奥に入ると、山腹に見事なリンゴ林が見えた。実は旧陸軍の軍馬の飼育場にあった椎の木林の見間違えだったのだが、人手が全く掛かっていないのに、雑草に囲まれた椎の木は健康そのものだったという。

木村さんは自分の畑とは全く違う刺激臭のするフカフカで暖かい土に気づく。土中に窒素があり余っていて、養分満点の土なのだ。

今までリンゴの木にばかり気を遣っていたが、土やリンゴの木の根っこには全く気を付けていなかった。それが盲点だったのだ。

自分の畑でもそれを再現しようと努力する。やわらかい土に植わっている木の根っこは、地中深く伸び、石ころだらけの畑で育つフランスボルドーのぶどうの様な話だ。まさにワインのテロワールだ。

terroir










出典:2009年11月12日の朝日新聞のボルドーワイン広告

それから数年木村さんの試行錯誤は続くが、努力が実って木村さんの800本のリンゴの木は蘇り、他にはない糖度のきわめて高い美味しいリンゴができるようになった。

とうとう木村さんはリンゴの木の声が聞こえるようになったのだ。木村さんは主人公は人間ではなくて、リンゴの木で、人間は単にリンゴの木の手伝いをしているに過ぎないと語る。それがわかるまで実に長い時間が掛かってしまったと。

東京白金台のフレンチレストランのシェ・イグチでは木村さんのリンゴのスープが看板メニューだという。木村さんのリンゴは2年経っても腐らないのだと。

木村さんが酔うと決まってする宇宙人に会って、宇宙船に乗った話とかも紹介されている。

まるで筆者の好きな未知との遭遇の一場面のようだ。



たぶん木村さんも現実と映画と渾然となっているのではないか?


害虫の顔を虫眼鏡で見た話も面白い。

リンゴの葉を食う害虫は、草食動物なので、つぶらなヒトミのすごくかわいい顔しているのだと。逆に害虫を食う益虫は、肉食動物なのでどう猛な顔をしていると。

ようやく熟れたリンゴが出来た時、木村さんはリンゴ箱を大阪駅気付で、自分宛に送った。「何で大阪かって?食は大阪にありって言うでしょう」

そのリンゴを大阪城公園でのイベントで売ろうとしたが、ほとんど売れなかった。しかしたまたま一袋買った人から手紙が届く。「あんな美味しいリンゴは食べたことがありません。また送ってください」

それからはうまくいったり失敗したりを繰り返したが、徐々にリンゴも安定し、毎年美味しいリンゴが採れるようになった。

最後にこの本のレポーターは木村さんをノアの箱船で有名なノアにたとえている。「私の船に乗りなさい」

木村さんはリンゴ生産の傍ら、全国で無農薬栽培を広める活動もしている。木村さんの農業支援活動は、木村さん自身が書いた「リンゴが教えてくれたこと」に詳しい。

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)
著者:木村 秋則
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-05-09
おすすめ度:5.0
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木村さんは米の自然栽培も手がけ、全国で指導もしている。「米の自然栽培は難しくない」と。

木村さんの指導する宮城県の「加美よつば農協」のつくった自然米はすべて東京に本社を持つ清水精華堂霰本舗が買い付けたという。

自然栽培とJAS法に基づく有機栽培とは全然違うことも参考になった。有機栽培でつくった野菜や米は一番先に腐る。次がスーパーで買った野菜・米、そして一番原型をとどめたのは自然栽培ものだった。

自然のものは枯れていく、人のつくったものは腐るという。腐ることのない野菜を食べていれば、どれほど健康になるだろうかと。

食という字は、人に良いと書く。人に良くないものは食と呼ばないでくれと木村さんは語る。


あまりに面白い本なので、木村さんのホラやレポーターの脚色が相当入っているのではないかという気がして、木村さん自身の本も読んでみたのだが、書いてあることは基本的に同じだった。


こんな面白い本を読むのはひさしぶりだ。木村さん自身の「リンゴが教えてくれたこと」も参考になるが、食に警鐘を鳴らす結構カタイ内容なので、読書=エンターテイメントとしては幻冬舎の本が面白い。さすがヒットメーカーの幻冬舎だ。

読み始めたら引き込まれて一気に読んでしまう。是非一読をおすすめする。


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Posted by yaori at 10:41│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション | 趣味・生活に役立つ情報

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