2009年11月29日

日本のタブー ゴーマニズム宣言 小林よりのりの最新作

ゴーマニズム宣言NEO 2 日本のタブーゴーマニズム宣言NEO 2 日本のタブー
著者:小林 よしのり
販売元:小学館
発売日:2009-10
おすすめ度:4.5
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アイヌは日本の「先住民族」なのか、沖縄は「全体主義の島」なのか、小林よしのりが日本のタブーと呼ぶテーマについて、「言論封殺魔」とよぶ佐藤優との仮想論戦もまじえながら自説を展開する。

筆者は200ページ程度の新書なら1日の往復の通勤時間(2時間)で読み終えるが、この本は250ページほどのマンガでありながら、読むのに3日かかった。

しかも小林よしのりの本は、多くのページの上に手書きのメモのような記事を載せており、この手書きメモはすべて読んだ訳ではないので、その意味では3日掛かっても全部は読み終えなかった。

普通のマンガ本なら、250ページくらいあっても1日で読み終えるはずだ。スゴイ情報量である。

今までこのブログでは、小林よしのりの「天皇論」、「沖縄論」(の続き)、「靖国論」、「いわゆるA級戦犯」についてあらすじを紹介してきたが、著者の小林よしのりの勉強量とマンガを使ったわかりやすい説明には感心している。

ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論
著者:小林 よしのり
販売元:小学館
発売日:2009-06-04
おすすめ度:4.5
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佐藤優は「言論封殺魔」?

今回の本では外務省のラスプーチン佐藤優から、小林よしのりの著書を多く出版している小学館のSAPIO編集部に「言論封殺」の圧力がかけられたということで、佐藤優を相手に紙上で論戦を張っている。

佐藤優の方は「言論封殺魔」というコスプレで茶化しているので、どこまで本気なのかわからない。少なくとも小林よしのりは真剣なのだろうが、紙上論戦に巻き込まれる一般読者は迷惑だ。

小林よしのりは、地道な取材に基づいて、「靖国論」、「台湾論」、「天皇論」など参考になる本をいくつも出しているわけだし、紙上論争のようなものに自分自身と読者の時間を費やすような本はやめて欲しいと思う。

そもそも累計で数百万部も売っていて、地位も人気も確立している小林よしのりが、何故佐藤優をこのように極端に怖れ、紙上で執拗に論戦を挑んでいるのかさっぱり理解できないところがある。


日本のタブー

この本で日本のタブーとして小林よしのりが議論しているのは次の点だ。

★アイヌは日本の先住民族か?

「日本は内向きな単一民族」と発言した中山元国交相が辞任させられた2008年9月の舌禍事件があった。

この本ではアイヌは”民族”ではないこと、和人と混血が進み、純粋なアイヌは1970年代で途絶え、もはやいないこと、昔から和人とアイヌが北海道で混住していたので、アイヌが”先住民族”とはいえないことを様々な論拠を上げて検証している。

2008年6月には国会で、アイヌ先住民族決議が全会一致で成立しているが、この決議にはそもそも民族、先住民族の定義もない。

小林よしのりは「北海道アイヌ協会」に取材や対談を申し込むが、すべて断られたという。

仕方がないので、次の本を読み、著者にも話を聞いてこの本を書いている。

「アイヌ」-その再認識―歴史人類学的考察
著者:河野 本道
販売元:北海道出版企画センター
発売日:1999-11
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アイヌ文化が成立したのは13〜14世紀の鎌倉時代だが、当然それ以前からアイヌも和人の子孫も北海道に住んでおり、すべて「蝦夷」と呼ばれていたのだ。

江戸時代にはアイヌは差別され、和人商人に搾取された。しかし明治政府は、もともと文字を持たなかったアイヌに文字を教え、貧困にあえぐアイヌを支援するために1899年には北海道旧土人保護法を成立させ、アイヌに非課税で土地を与えたり、様々な資金を援助したりして保護した。

1997年にアイヌ文化法が成立すると同時に、北海道旧土人保護法は廃止された。

現在では純粋なアイヌはいないが、政治的圧力団体のアイヌはおり、政府に圧力をかけている。


★沖縄は全体主義の島?

沖縄では保守と左翼が談合して、2大新聞が先頭に立って犠牲者の島・反日キャンペーンをやっている。それが小林よしのりが、沖縄のことを全体主義の島と呼ぶゆえんだ。

端的な例が集団自決に軍の関与があったかどうかという点だ。

元陸軍の渡嘉敷村守備隊長赤松氏は、戦後「自決命令を出した」という濡れ衣を黙って着た。島民が「遺族援助金」を受けるためだという。

渡嘉敷の住民の一人は「赤松さんは人間の鑑です。渡嘉敷の住民のために泥をかぶり、一切弁明することなく、この世を去ったのです。家族のためにも、本当のことを世間に知らせてください」と述べたという。

NHKでは2008年6月に特集番組を制作し、渡嘉敷島の集団自決の時に、親兄弟を殺害した金城重栄、重明兄弟の証言を、軍の関与があった証拠として紹介している。しかし、小林よしのりは、これはNHKのねつ造だと語る。

この本だけでは判断が付かないところである。またマスコミによく取材されるとはいえ、一般人の金城兄弟の実名を挙げて、マンガで親兄弟を殺した場面を描いている点もやりすぎではないかという気がする。


★北方領土交渉での鈴木宗男・佐藤勝コンビのおもねり・譲歩外交

このブログでも紹介した佐藤優の「国家の罠」は、2005年新潮ドキュメント賞にノミネートされていて、審査員の受けもよく受賞が有力視されていたところ、審査員の櫻井よしこさんが前代未聞のゼロ点をつけたので落選した。

櫻井よしこ氏は、「北方領土交渉で日本外交は少しずつ、しかし確実に領土奪還の道筋をつけてきていた」のに、宗男や佐藤優が支えた橋本龍太郎の対露外交から「惨めな、信じ難い後退」をしてしまったというのだ。

4島一括返還原則を主張するものは、相手がたとえ橋本龍太郎総理大臣でも宗男が恫喝したという。

そして「領土返還」を「国境線画定」と言い換えたと櫻井氏は指摘する。

このブログでも紹介した宗男・佐藤優コンビの「北方領土特命交渉」に、ロシアエリツィン大統領が来日した川奈会談の時に秘密事項があったことが書かれている。

まさにロシア側へのこういった売国奴的なおもねり・譲歩外交が、ロシア側を強気にさせて、領土問題解決が一気に遠のいたのだと小林よしのりは櫻井さんの意見に同意して宗男・佐藤優・東郷和彦トリオを非難している。


その他の論点

その他、おぼっちゃまくんがパチンコ台のキャラクターになったり、グッズができた話とか、天皇論の読者の反応などを紹介している。

また漫画家は広い仕事場を借りてスタッフを雇わなければならず、それでも6人が一日12時間働いて、できる作品は一日2ページだけで、原稿料だけでは到底割に合わない職業なのだと実情を語る。あまりにも生活が不安定だから、小林よしのりは子供をつくることをあきらめたのだと。



これは筆者の意見だが、日本のタブーに挑戦するという意気込みは良いが、櫻井よしこ氏の意見を論拠に佐藤優に論戦を仕掛けても、どうするつもりなのか、出口が見えない。

それぞれの論点について、特定の人の意見に影響されて、その人への反対意見とか中立的な意見が、紹介されていないので、一方的な意見を聞いたというだけのものに終わっているのは残念である。

参考にはなったが、小林よしのりの限界も見えたような気がする本である。


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Posted by yaori at 00:23│Comments(0)TrackBack(0) マンガ | 小林よしのり

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