2009年12月17日

21世紀のエネルギー地政学 現在の世界のエネルギー事情がわかる

+++今回のあらすじは長いです+++

21世紀のエネルギー地政学21世紀のエネルギー地政学
著者:十市 勉
販売元:産経新聞出版
発売日:2007-12-22
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財団法人日本エネルギー経済研究所の主任研究員で専務理事の十市勉(といちつとむ)さんの本。2007年12月に出版されたものだ。某大学の社会人講座の資料として使われていたので読んでみた。世界各国のエネルギー政策がまとめられていて参考になる。

この本は、アマゾンのなか見、検索!に対応しているので、まずは目次を見て欲しい。

本ブログは筆者の読書ノートも兼ねているため、関連するグラフも加えて自分の知識を整理していたら、長くなりすぎたので、最初に筆者なりの要約を記しておく。この本自体も第1章に全体のまとめが書いてあり、忙しい人は第1章だけ読んでも参考になると思う。


要約

世界のエネルギー事情は21世紀前半で大きく変わる。需要面では中国とインドの2大人口大国の高度経済成長により、石油・天然ガス・ウランのエネルギー需要がさらに増大することが見込まれる。

fig1-1





出典:IEA資料

石炭・石油の化石原料需要は2020〜2030年迄にピークアウトする可能性があり、その分再生可能エネルギーが伸びる。

Fig5-9





出典:IEA資料

現在でも世界各地で新しい資源開発が進められているが、今後さらに新旧の油田・ガス田の入れ替えは進む。世界の25%が賦存するといわれている北極圏の石油・天然ガス、イランやカタールの天然ガス開発などが進むだろう。

石油の新旧油田構成比

世界の石油生産見通し







出典:本書

こんな中で中国とインドの低効率で環境汚染をまき散らすエネルギー利用は、いよいよ深刻な問題となってくる。一方クリーンで”準国産”エネルギーの原子力発電は世界各地で拡大していくだろう。

日本の課題は、資源の確保とともにエネルギーの自給率を上げることと、世界トップの省エネルギー、環境汚染対策技術を活用してCO2排出量を減少させ、環境技術で世界のリーダーとなることだ。


中国の動き

今一番注目すべきは中国のエネルギー政策だ。中国のGDPは高い成長率で伸びているが、中国の経済発展のボトルネックとなるのがエネルギー、水、環境汚染の問題で、とりわけエネルギー問題が重要だ。

中国のエネルギー消費は経済発展で伸び続け、2007年には米国を抜き、世界最大のCO2排出国となっている。

中国の最大の問題は一次エネルギーに占める石炭の比率が70%と高く、環境対策も遅れていることだ。SOX対策をとった発電所は全体の約15%、NOX対策はゼロという状態で、東アジアの酸性雨、光化学スモッグの原因となっている。

中国のエネルギー構成(出典:IEA以下同じ。IEAのサイトには参考になる情報が満載なので、是非チェックして欲しい。World Energy Outlook2009の日本語のサマリー等もダウンロードでき、参考になる)

energy balance China





中国のエネルギー構成予測

中国の第1次エネルギー消費見通し






出典:本書

中国で稼働中の原発は11基で、今は発電量全体の1%以下だ。しかし2020年までに最低でも32基新設し、全体の6%を原子力発電でまかなう予定だ。その後も中国の原発建設は増加し、一部の研究機関は2050年までに200〜300基の原発が建設されると予測している。

このように中国の原発ビジネスは大きなポテンシャルがあり、フランスでは大統領がトップに立って、アレバの技術を売り込んでいる。

中国は1993年に石油の純輸入国となり、現在は消費量の5割程度を輸入している。輸入比率は今後さらに高まることが予想される。輸入先はイラン、サウジアラビア、スーダン、アンゴラ、ロシア、カザフスタン、ベネズエラなどだ。

石油・天然ガス分野では中国石油・天然ガス集団公司(CNPC)、中国石油化工集団公司(SINOPEC)、中国海洋石油集団公司(CNOOC)の3つの国営企業が資源確保の尖兵となっており、世界各地で鉱区や企業の買収を行っている。

具体的にはスーダン、アンゴラ、ナイジェリア、インドネシア、豪州、カザフスタン(石油パイプラインが2006年に完成)、カナダ、エクアドルと中国企業による開発が拡大している。

資源確保で中国とインドがぶつかることが増えてきたので、2005年に中国のCNPCとインドの石油ガス公社(ONGC)が資源分野での両国の行きすぎた競争を避けることで合意し、一緒になってシリアで操業する石油企業を買収するという例も出てきている。

最大手のCNPCの原油生産は現在日産230万バレルに達し、欧米の石油メジャーと肩を並べる規模である。日本の最大手の国際石油開発帝石の10倍の規模だ。

中国は石油運搬ルートのマラッカ海峡依存を改善すべく、親しい関係にあるミャンマーの軍事政権とミャンマーから中国昆明までの1,500キロのパイプラインを建設するプロジェクトの事前調査を開始している。

日中間では、2006年に経団連が中心となって「日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会」が設置され、民間企業の中国への技術移転を促進している。

しかし中国では石炭は自給しており、石油も半分は国産なので国内のエネルギー価格が国際価格より安く、省エネのインセンティブが少ないことが中国で省エネ技術が広まる障害となっている。


東シナ海の海底ガス田開発

日中間の国境に位置する東シナ海の海底ガス田開発は、実は1970年代から帝国石油、石油資源開発など日本企業4社が鉱区申請を出してきたのに、対中関係悪化を怖れた日本政府が許可をしなかった経緯がある。

やっと2005年になって経産省は帝国石油に試掘権を付与したが、中国側の実力阻止を懸念して、いまだに日本側の試掘作業は行われていない。

何のことはない、日本政府が手をこまねいている間に中国がさっさと開発してしまったのだ。

東シナ海の大陸棚での石油・ガス資源の存在は、1969年の国連アジア極東経済開発委員会の報告書によって明らかにされた。

日本が1895年から領有を主張している尖閣列島についての領有権問題も、このレポートが引き金となり、1970年に中国と台湾が領有権を主張しはじめたものだ。


資源の全方位外交を展開するインド

家畜のふんや農業廃棄物、薪炭などの在来型バイオマスがインドのエネルギーの1/3を占める。これらは室内で燃やすと空気が汚染されるので、インド政府はクリーンなエネルギーに変える政策を進めている。

energy balance India





インドの石油資源は乏しい。低品位の石炭は豊富だが、環境汚染の大きな原因となっているので、豪州やインドネシアなどから良質な石炭を輸入している。

インド政府は石炭、石油、天延ガスのいすれについても消費量を増やす計画で、原子力についても米国と「民生用原子力協力協定」を結んで、本格開発に乗り出そうとしている。

バイオマスについてもジェトロファという植物を原料にしたバイオディーゼルの開発に力を入れている。

国外の資源開発では、2004年アンゴラの石油鉱区開発で、政府の経済援助とパッケージにした中国企業に負けたこともあり、中国との競合を避けるべく動いている。その前段階として、中国とインドの国境画定交渉が本格化している。

パイプライン建設でもイランの天然ガスのパキスタン経由のパイプラインや、トルクメニスタンの天然ガスをアフガニスタンとパキスタンを経由して運ぶパイプライン、ミャンマー沖のガス田からバングラデシュ経由でのパイプラインなど全方位外交を進めている。


欧米のエネルギー特記事項

この本はエネルギー地政学の本なので、米国やEUのエネルギー事情については政策の説明はなく、トピックスを紹介している。特記事項としては、次の通りだ。

米国のエネルギー需給:

energy balance USA





★イラクは原油の確認埋蔵量では約1千百億バレルだが、実際にはその倍はあると言われている。イラク侵攻を主導した米国ネオコンは、イラクに民主政権を樹立して米国が影響力を行使できれば、サウジに依存する世界の石油供給構造を大きく変えられると考えたが、失敗した。

★カタールは対岸にあるイランの脅威から自国を守って貰いたいという安全保障上の理由から、エクソン・モービルなどのメジャーにLNG開発を認め、インドネシアを抜いて世界最大のLNG輸出国となる見込みだ。米軍も空軍司令センターをサウジからドーハ近郊のアルウデイド基地に移転し、プレゼンスを高めている。

★リビアは2006年、米国の「テロ支援国家」リストからはずれ、米国との外交関係を復活した。リビアは「最も探鉱開発したい国」の筆頭で、国土の75%がまだ探査されておらず、油層の深度が浅いので低コストの生産が可能だという。制裁解除後、欧米メジャーが続々とリビアに進出している。

★イランを巡っては、「イラン・リビア制裁法」で米国企業は活動できないので、その間隙を縫って欧州企業が活発なビジネスを展開している。イランへの投資の80%は欧州企業によるものだ。フランスは米国の警告を拒否して、トタルがロシアのガスプロム、マレーシアのペトロナスと組んでイランでガス田を開発する契約に調印した。トタルは米国の制裁を予想して、前もって米国内の資産をすべて売却していたという。

★日本の国際石油開発(INPEX)が持つイランのアザデガン油田の権益を75%から10%に引き下げる決定をしたのも、対米関係悪化を懸念する日本政府の政治判断が働いたものだ。

★CO2排出量規制については、基準となる1990年はドイツ統合という特殊な年なので、EUはなんとか京都議定書の目標達成は可能としている。当時東ドイツでは品質の悪い褐炭が使われていたのでCO2を大量に排出していた。またイギリスでは石炭から北海の天然ガスへの転換が始まった年だ。


原子力発電の進展

原子力はこれから進展が見込まれる。現在の世界の原発は次の通りの現状だが、これからさらに中国などを中心に新規建設が見込まれる。

世界の原子力発電












ウラン価格は投機筋の影響で乱高下している。

ウラン価格推移




出典:経産省資料

豪州ではこの影響で、従来のウラン3鉱山政策が政権交代とともに、撤廃された。日本企業に加えて、中国、インドなども豪州での新規ウラン鉱山開発を狙っている。カザフスタンはウラン外交を活発に展開し、韓国、日本。中国、ロシアとウラン開発での協定を結んでいる。


原発ビジネス

東芝は従来沸騰水型(BWR)のGEの原子炉技術を日本で販売してきたが、加圧水型(PWR)の米国ウェスティングハウスを、2006年に54億ドルで買収して、両方の技術を持つ世界の原発建設ビジネスのリーダーとなった。

沸騰水型原子炉;

BoilingWaterReactor




出典:別記ない限りWikipedia

これに対抗して長年ウェスティングハウスと提携していた三菱重工はフランスのアレバと原子力関係での提携を拡大している。

加圧水型原子炉

PressurizedWaterReactor




筆者はピッツバーグに合計9年間駐在していたので、ピッツバーグが本拠のウェスティングハウスを仕事でたびたび訪問していた。主にピッツバーグ郊外のモンロービルにあるウェスティングハウスの研究所を訪問していたが、研究所の規模にはおどろかされたものだ。


中国とロシアの緊密化

中国とロシアの緊密化も見逃せない動きだ。

中国とロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンの5カ国は1996年上海に集まって、上海協力機構をスタートさせた。2001年にはウズベキスタンが加わり、6カ国で構成する上海協力機構としてスタートし、上海に常設の事務局が設置されている。

その後モンゴル、インド、パキスタン、イラン、トルクメニスタンがオブザーバーとして加わった。現在は6カ国とオブザーバー5カ国の11カ国、人口では世界の半分、面積もかつてのモンゴル帝国の版図に近づいている。

上海協力機構はエネルギー面での協力関係を深める他、2007年からは対テロ演習として6カ国合同の軍事演習も一緒に行っている。

上海協力機構が軍事同盟に発展する可能性は少ないが、それでも地政学的にロシア・中国・中央アジアの国でエネルギーにつき協力関係を深める意義は大きい。


原油価格が高騰を続ける背景

原油価格は次の様な価格推移だ。

WTI価格推移





出典:社会実情データ図録

原油価格はWTIが2008年の6月に月平均133ドルを記録した後、下落して2009年2月に40ドルを切ったが、じわじわと上昇を続け最近では60−70ドルに回復してきている。

投機マネーが流入して、乱高下を記録したが、最近では需給を反映した値動きとなっている。現在の原油の需給を決めている要因は次の4つだ。

1.中国、インド、米国を中心に石油需要が底堅い増加を続けていること。

2.米国の石油精製設備の能力が不足しているので、石油製品の価格が下がりにくく、それが世界の原油相場先物に影響している。米国では過去30年間新しい精油所の建設はゼロで、増加する石油需要に対応できないでいる。

3.供給面でOPECの市場支配力が復活してきたこと

4.世界の石油供給基地である中東はじめ、アフリカ最大の産油国ナイジェリア、南米最大のベネズエラなどで地政学的リスクが表面化していること。

5.原油相場の乱高下を引き起こす投機マネー 
NYMEXの原油先物取引市場の規模はバレル60ドルとして10兆円程度と小さく、巨額の投機マネーが入ってくると乱高下の原因となる。


ピークオイル論

ピークオイル論とは、世界の原油生産が既に生産のピークに達し、今後は減少するという学説だ。石油の資源枯渇は、30〜40年前からあと30年で無くなると言われ続けてきたが、今もあと40年ということになっている。

現在のIEA(国際エネルギー機関)の見通しでは、悲観的なシナリオでは2015年、楽観的なシナリオでは2035年に世界の石油生産はピークを迎えると予測している。

最近は油田開発技術が進歩し、3次元物理探査や、油層を水平に掘る技術の普及、水深2000メートルを超える海底油田の開発も行われているので、可採鉱量が毎年増えている。

しかし資源には限りがあり、非OPEC、特に先進国での原油生産は2010年頃から頭打ち傾向になり、サウジアラビア、イラン、イラクなどの中東で増産しない限り原油の供給は増えないと見込まれる。


ガス版OPECの動き

天然ガスの埋蔵量はロシア(27%)とイラン(15%)で世界の40%以上を占め、これに第3位のカタール(14%)を加えると世界の約60%を占める。主要天然ガス輸出国は2001年にガス輸出国フォーラム(GECF)を結成し、現在は15カ国にまで増えている。

また南米でもベネズエラのチャベス大統領が南米版ガスOPECを呼びかけ、ガス資源の国有化を強行したボリビアなどが賛成している。

資源ナショナリズムの高まりとともに、需要国のEUなどは警戒を強めているが、天然ガスの場合、GECFの国の埋蔵量は大きいものの、世界のガス消費に占めるGECFの比率は14%に過ぎず、ガス版OPECの様な価格支配力を持った機構にはなり得ないという見方が強いようだ。

事実、原油価格と天然ガス価格は、2008年にピークを打った後急落した。現在では原油は底値からは回復しているが、天然ガス価格はその後も下落しているので、GECFの価格コントール力がないことを示している。

ちなみにJOGMECがガス版OPECについてのレポートをネット公開しているので、これも参考になる。


ロシアのエネルギー事情

ロシアの家庭では今もガスメーターがないという。タダ同然で供給されるので、ガス代を計算する必要がないからだ。

ロシアのエネルギー需給

energy balance Russia





ロシアは北のサウジアラビアと呼ばれるほど石油、天然ガスの埋蔵量が多く、石油生産ではサウジと肩を並べ、天然ガスでは埋蔵量・生産量・輸出量いずれも世界第1位である。

プーチン首相は、サンクトペテルブルグ市長時代にエネルギー資源に関する研究論文を書いて、「エネルギー資源でロシアを立て直すべき」と述べており、ロシア大統領になって、この方針を着実に実行してきた。

プーチンがエネルギーの国家管理を強化したきっかけは、2003年にロシア石油最大手ユコスの社長を脱税容疑で逮捕し、その後同社をロスネフチに買収させ国有化したことだ。

ユコスの買収資金は、中国石油・天然ガス総公司(CNPC)が2010年までの原油代金を前払いした60億ドルでまかなわれたといわれている。

ガスはガスプロム、原子力では2007年にウラン生産から使用済み核燃料の再処理までを担う55社を統合して誕生したアトムプロムという国営企業がある。

プーチンはロスネフチとガスプロムを合併させようとしたが、クレムリン内部での勢力争いが激しく、実現しなかった。プーチン大統領が決定した政策で唯一実現しなかったものと言われている。

ロシアの懸念材料は、西シベリアの既存ガス田・油田は生産が減退しているので、新規に資源開発を行わなければならないが、残された資源埋蔵地は北極圏や東シベリア、海底など条件の厳しいところばかりなことだ。

また長期的には、国有化にともない外資離れが進んでいることと、資源価格に頼りすぎるいわゆる「オランダ病」が懸念されている。

2005年から2007年にかけては、ウクライナ、ベラルーシへの天然ガスの価格大幅アップと供給停止を強行し、EU,ロシア周辺諸国にエネルギー安全保障の危機感を抱かせた。ロシアが天然ガスを外交カードとして使い、恫喝外交を始めたのだ。

ロシアの石油・ガス販売はヨーロッパ向けが主体だったが、近年ではアジア向け輸出拡大を狙って、特に中国との関係強化を図っている。これにさきがけ、2005年には中ソ国境問題が解決した。ロシアとの関係改善による資源確保を狙い、中国が大幅に譲歩したと言われている。

中国とロシアの利害が一致し、両国は共同で東シベリア地区の原油・ガスの中国へのパイプラインによる輸出プロジェクトを進めている。ただし極東ロシアの人口は700万人と少なく、中国は東北部だけで1〜2億人の人口があるので、ロシアは中国に対して常に警戒感を抱いており、過度には中国に依存しない方針だ。

ロシアのプーチン首相は、大統領時代にサウジアラビアを初めて公式訪問し、武器や衛星でビジネスをつくるとともに、エネルギー分野でもロシア企業のルクオイルがサウジで大規模天然ガス田を発見している。

ロシアはアメリカと対立するイランに原子力発電で協力しており、ドイツのKWUが建設途上で中止した原子炉2基のうち1基を完成させる契約を結んだ。この原発はその後代金支払いでもめており、運転開始は遅れている。

北極圏には世界の未発見の石油・天然ガスの25%があると言われているが、ロシアは北極圏の資源開発にも積極的で、2007年には北極海の4,000メートルを超える深海海底にロシア国旗を打ち立てるシーンをテレビ放映している。

北極圏での天然ガス生産も近々始まり、世界最大といわれるシュトックマンガス田は2013年からヨーロッパ向けに輸出を始める予定だ。


この本の結論

この本の結論として十市さんは、日本のエネルギー自給率の向上を訴える。現在日本のエネルギー自給率は原子力を除いて4%、準国産の原子力を入れて18%程度で、先進国の中で最低の水準である。

日本のエネルギー需給

energy balance Japan





長期的な目標として2030年に30%、2050年に50%と自給率を上げていくには、原子力発電と新エネルギー開発が必要である。

2030年にはハイブリッド車や燃料電池自動車などの普及やビルなどの省エネルギー化を進め、一次エネルギー消費を1割下げ、原子力・水力発電・太陽光発電・風力発電の比率を上げることで京都議定書の目標が達成できる。

さらに輸入源の分散化と資源確保が課題だ。

2006年5月に経産省は「新・国家エネルギー戦略」を発表し、2030年を目標年として、GDP当たりのエネルギー消費を3割改善、石油依存度低下、原子力発電比率拡大、自主開発原油比率アップなどを打ち出しているが、これも民主党政権では見直されることになると思う。

この本では一行だけの記述のみだが、日本周辺の海底に賦存するメタンハイドレートの開発も是非取り組みべきだと思う。メタンハイドレートはCO2排出量が石炭・石油の半分と言われておりグリーンエネルギーの一つだ。


あらすじが長くなってしまったが、大変参考になる本だった。欲を言えば、アメリカやEUのエネルギー政策も断片的なトピックスだけでなく、基本方針を取り上げて欲しかった。

もっともこれは2007年12月の本なので、オバマ大統領就任後はだいぶ変化があったので、アメリカのエネルギー政策については、あたらに書くべきなのかもしない。

いずれにせよ資料が満載で、世界のエネルギー地政学を頭に入れておくのには、大変ためになる本である。



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Posted by yaori at 01:46│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 資源問題

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