2010年02月19日

裸でも生きる 行動力抜群の20代女性社長の手記

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)
著者:山口 絵理子
販売元:講談社
発売日:2007-09-22
おすすめ度:4.5
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バングラデシュ産のジュートを利用したカジュアルバッグなどのスペシャルティバッグを輸入販売するマザーハウスの20代女性社長、山口絵理子さんの手記。山口さんは、フジサンケイ女性起業家支援プロジェクト2006の最優秀賞を受賞している。

山口さんのストーリーはテレビの「情熱大陸」でも取り上げられている。YouTubeに3部にわけて載っているので、紹介しておく。バングラデシュで取材したビデオなので、リアルで迫力があって面白い。



本屋に平積みになっていたので読んでみた。「裸でも生きる」というタイトルなので、てっきり無一文になって、それからの再起の話かと勝手に思いこんでいたが、実は慶應湘南卆でバングラデシュの大学院を卒業した行動力抜群の女性起業家の話だった。

最近思うのだが、本には著者の熱意が伝わる本と、著者の意気込みや熱意が伝わってこない本の2種類がある。この本は、間違いなく前者で、著者の山口絵理子さんの熱い思いがビンビンに伝わってくる。

先日社内報に寄稿したときのことを思い出す。

筆者の書いた文はすっきり整理されて読みやすい文章になっていたと思うが、筆者の読書ノウハウを淡々と紹介するだけで、熱い思いが全然伝わってこない。それに比べ、他の社員が書いた文は、しろうと作文で、一つの文が長く主語述語がはっきりとしないため体裁が悪いが、伝えたいことがはっきりしていて、熱意が伝わってくる。

慢心を猛省した次第である。このブログでは従来同様、筆者の熱意を込めて書き続けるつもりだ。

山口さんの本は、やたら泣く場面が多いのが気になるが、著者の熱意がこもっていることがよくわかる、読んで面白い感動の作品である。

山口さんの談話は、ドリームゲートというサイトにも紹介されている

dream gate








山口さんの経歴

著者の山口絵理子さんは、埼玉県出身。小学生の時にいじめにあったり、中学生で不良の仲間に入ったりするが、大宮工業高校で男子に混じって柔道部で猛練習し、埼玉最強の埼玉栄高校の選手を破って埼玉県チャンピオンとして全国大会7位に入賞する。

余談となるが筆者は実は埼玉栄高校とは縁がある。

埼玉栄高校のある大宮市と筆者の住んでいたピッツバーグが姉妹都市関係にあったので、ピッツバーグ日本語補習校が校舎を借りていたフォックスチャペル高校と埼玉栄高校の交流を縁結びしたのだ。

筆者はその後日本に戻り、大宮市自体も浦和市などと合併してさいたま市になってしまったので、現在ピッツバーグとの姉妹都市関係はどうなっているのかわからないが、あるいは一時的な交流に終わってしまったのかもしれない。

埼玉栄高校は佐藤栄学園という学校法人で学園長は佐藤栄太郎さんという人で、地元の有力者だった。たしか埼玉県に数カ所の高校と大学もあったと思う。

フォックスチャペル高校も全米で有数の高所得者の町の高校だが、校長が埼玉栄高校を訪問して、その体育設備や音楽関係の設備がすばらしいことに驚いたと言っていたことが記憶に残っている。

閑話休題。

山口さんは偏差値40台だったが、持ち前のがんばりで大宮工業高校から慶應大学の湘南(総合政策学部)に入学し、竹中平蔵氏の竹中ゼミに入る。大学の入試面接では、「政治家になりたい」と言ったという。


途上国支援が研究テーマ

竹中ゼミで「発展途上国における所得格差と経済成長の関係」についてプレゼンし、竹中さんから「すごくよかったですよ。がんばってね」と声を掛けられる。

途上国は先進国の技術を模倣でき、後発のメリットを生かすことができるので、途上国と先進国との差は自然と縮小するという理論とは逆に、現実には”様々な理由”でギャップは拡大していることをレポートしたのだ。

それから国際協力分野に興味を持ち、その「様々な理由」を確かめるために、米州開発銀行の夏季インターンになってワシントンに行くが、国際機関に働く人たちは、現地を訪問する気もないエリートばかりなことに失望する。

援助が本当に役に立っているのかを調べるために、インターネットで”アジア 最貧国”と検索して、表示されたバングラデシュを2週間後に訪問する。スゴイ行動力だ。


バングラデシュでの生活

バングラデシュについたら、悪臭、汚さ、何かにつけて長蛇の列、平気でワイロを要求する役人や警察官、日本人と見ると”マネー”と金を求め群がってくる群衆、人間の生活できる衛生限度を越えている悪臭を放つスラムに圧倒される。

バングラデシュの現状については、ムハマド・ユヌスさんの「Baker to the Poor」や、このブログでも紹介した「貧困のない世界を創る」などで、なんとなく分かっているような気がしていたが、この本を読んで、全くうわべしか知らないことがよくわかった。

ちなみに日本語のバングラデシュ情報サイトのバングラナビというのもあるので、紹介しておく。

何とか住めるアパートを見つけ、バングラデシュのNGOが経営しているBRAC大学院に入学して、2年間でマスターを取る。バングラデシュの大学院を卒業した初めての日本人だ。


バングラデシュ製バッグの販売

アルバイトで働いていた三井物産ダッカ支店の仕事で、展示会に行き、バングラデシュの伝統産品のジュートを使ったバッグを日本で売ることを思い立つ。

ジュートはコーヒー豆の袋などの麻袋の素材で、筆者は昔鉄鋼原料を担当していたので、小口の顧客向けに輸入の原料を日本の倉庫で20Kgか25Kgの麻袋に詰めて、販売したことがある。

小口の鋳物メーカーとかは、麻袋入りの原料をそのまま人手で炉に投げ入れるのだ。

しかし麻袋は、もっと効率の良い1トン入りのフレコンバッグに置き換えられ、どんどん需要は落ちていった。

バングラデシュはジュートの世界最大の生産国とはいえ、化学繊維に市場を奪われ世界的に需要が減少したので、相当打撃を受けていたと思う。

そんなバングラデシュの特産品の天然素材のジュートを今度は、バッグの素材として目を付けたのだ。

苦労して個人向けに生産してくれる町工場を見つけ、工場に日参して工員と一緒に作業して、自分のデザインのバッグを160個生産し、日本に持ち帰る。

アルバイトしてお金を貯め、竹中ゼミの先輩でゴールドマン・サックスに就職していた先輩の山崎さん(現マザーハウスパートナー)からアドバイスを貰って起業し、ホームページでバッグを売り出す。

卸には相手にされず、多くの店に足を運ぶが、東急ハンズのバイヤーが気に入ってくれて、すぐにバッグを置いてもらう。"環境goo"というサイトでも励まされ、だんだんに売れていき、160個のバッグは残り少なくなる。

山口さんの活動がメディアでも紹介されるようになった時に、ある人から忠告を受ける「ビジネスになりきれていないわね。ファッション業界でビジネスをやることは、そんな簡単ではないのよ。白紙に戻すことも選択肢の一つだと思うわ。」

人の親切心・援助心に頼っていた販売、バッグのことを何も知らない自分に気づき、自らバッグ製造の修業をすることを決心し、バッグ職人を養成する御徒町の学校に入学する。先生から怒鳴られ厳しく教え込まれるが、最終的には先生と心が通じ合う。


バングラデシュ再訪

総選挙で混乱のさなかのバングラデシュを再度訪問し、前回の工場に行くが、パスポートを盗まれ不信感を抱いて、別の工場を苦労して探すが、そこでもだまされる。

つてを頼ってなんとかバングラデシュNo 1という型紙職人の居る工場を見つけ出し、そこで650個の生産を引き受けて貰う。従業員15人の小さな工場だが、ドイツ製の機械もあり、生産性と品質は高かったという。

今度はジュートを使ったカジュアルバッグを650個生産し、日本に持ち帰り表参道や、福岡三越、新宿小田急などで「お客様イベント」や発表会を開いた。

日経新聞の「春秋」で取り上げられたり、メディアで取り上げられたので、ウェブサイトでの販売は急増し、1分に1個売れるようになったという。スタッフは9人となり、第1号直営店を入谷に開いた。

motherhouse








ホームページではレザーバッグもたくさん売っている様なので、ジュートバッグだけでは無いようだ。


「裸でも生きる」と決めたのは、バングラデシュで食うや食わずの生活をしているみんなが、「君はなんでそんなに幸せな環境にいるのに、やりたいことをやらないんだ?」と問いかけてくるような気がするからだと。

やたら泣く場面が多いのが気になるが、実話なのだろう。ストーリーの展開も面白く、著者の思いのこもった一冊である。


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Posted by yaori at 00:50│Comments(0) ノンフィクション | ビジネス