2010年04月16日

凄い時代 堺屋太一さんの予測する2011年勝負の年

凄い時代 勝負は二〇一一年凄い時代 勝負は二〇一一年
著者:堺屋 太一
販売元:講談社
発売日:2009-09-02
おすすめ度:3.5
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未来予測小説のパイオニアで、時代小説家、経済評論家でもある堺屋太一さんの近著。2009年9月の発売だ。

凄い時代

堺屋さんはこれからの3年間、特に不況の二番底から立ち上がる2011年頃までが凄い時代となるだろうと予測する。

この凄い時代の日本には次の2つのチャンスがあるという。

1.諸外国を上回る不況を利用して、明治維新的な改革を行う
起業、新産業の成長のチャンスである。

2.高齢化をチャンスに変える。高齢労働力を活用する
たとえばタクシー運転手は高齢化が激しい。現在は平均60歳で、定年退職者のドライバーが増えた。高齢者は低賃金でも勤労意欲が高く、結果的にタクシーの台数は増え、便利な乗り物になった。

世界に先駆けて高齢化が進んでいる日本こそ「好老文化」を拓くチャンスである。シルバー・ニューディールを真剣に考えようと呼びかける。


勝負の秋(とき)は2011年

2009年は各国政府が赤字財政にしてでも経済立て直し策を導入したので、世界不況から回復する年となった。しかしまだ二番底の可能性はある。そして勝負の秋(とき)は2011年だろうと堺屋さんは予測する。

2008年のサブプライムローン問題に端を発した経済危機は、本来サブプライムローンの影響が最も少ない日本を痛撃した。

この原因は製造業分野だけ自由化・規制緩和しておきながら、21世紀の成長分野である医療・介護・育児・教育・都市運営・農業などの分野を統制経済のままにおいた「偽りの改革」にあるという。

そしてこれに加えて、官製の記者クラブ情報が支配する「情報出島」でマスコミでは正しい情報が伝わらないことも原因だ。


日本の将来は三択

堺屋さんは日本の行く道は次の3つであると予測する。どの道を選択するのか、それは日本国民が選択権を持っている。

1.日本のアルゼンチン化 官僚任せでたいした改革をしないで、発展途上国へ逆戻り。

2.中国が文化でも経済でもアジアの中心となり、日本もそれに従わざるを得ない。

3.官僚依存とモノ造り依存を捨てる知価革命の道。


堺屋さんの提言:明治維新的改革

上記三択の中で、もちろん最良の選択は3.の知価革命の道だ。

堺屋さんは、今こそ明治維新的な改革を行うべきだと主張する。
具体的には次のような政策だ。

1.官僚主導から脱却する

2.地域主権型道州制を導入する

3.税財政制度の抜本改革

4.教育制度改革(教育自由化)

5.官僚の情報統制に頼らない国際化


元々通産官僚の堺屋さんではあるが、大阪万博や沖縄海洋博、サンシャイン計画(太陽光など自然エネルギーの活用)などスケールの大きな仕事を通産省でもやってきただけに、日本の官僚・政治家癒着政治を手厳しく批判している。

いくつか参考になる点を紹介しておく。

★水平分業論
堺屋さんが通産省に入省してすぐに先進国間で部品を輸出入する「水平分業」論を世界で初めて通商白書で打ち出した。現在のヨーロッパは「水平分業」がさらに進み「工程分業」が始まっているという。欧州は一つとなったので、各生産工程を最適国で行う分業である。ソビエトの計画経済がまさに工程分業だった。

筆者はロシアを二回訪問している。ロシア各地に超大型の工場が点在しており、現在のカザフスタンから持ってきたクロムを、ウラル山脈の近くのロシアの工場で合金鉄に加工し、ロシアやウクライナの特殊鋼工場に届けていた。武器やロケットなどに使われるのだ。

運送コストを考えると現在では経済合理性はないが、計画経済ではこのような分業が行われていた。

★中国は異形の大国 
北京オリンピックでは開会式の入場行進がアルファベット順ではなく、中国文字表示の漢字画数の少ない国順となっていた。このことに象徴されるように中国は西洋の常識とは異なる「異形の大国」である。

★明王朝と中華人民共和国
中華人民共和国の建国から60年経ったが、前半の毛沢東主導の30年は絶対平等志向。後半の30年は小平・江沢民主導による自由化成長路線だった。

これほど正反対の政策が同じ体制下で取られた例は過去にもあった。それが代の中国だという。創始者の太祖(洪武帝)の時代はいわば恐怖政治で、有力な政治家や文化人を処刑した。

しかし建国から30年、永楽帝の時代には北京に都を移し、道路・水路を整備し、永楽銭を鋳造して商業を振興し、鄭和(ていわ)に大艦隊でアラビアからアフリカ東岸まで遠征させた。歴史小説家でもある堺屋さんらしい観察だ。

★淀屋が残した教訓
世界最初に商品先物取引を始めたのは大阪商人で、その代表格が淀屋だ。米の先物取引で、米俵の標準や米の品質格付け制度をつくった。これが現代の商品相場の始まりだ。しかし淀屋はその財力に目を付けた幕府に闕所(けっしょ=財産没収)処分を受けた。

★ゼロ戦化現象
ゼロ戦は速度も出れば、航続距離も長く、なにより運動性能の高さは空中戦で抜群の性能を発揮したが、使いこなすには1,000時間以上の修練が必要で、長い航続距離を活かすには10時間の飛行に耐える体力と気力が必要で、「難しい飛行機」だったという。


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ゼロ戦

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スピットファイアー

これに比べてスピットファイアーメッサーシュミットなどは300時間、アメリカのグラマンF6Fは100時間でマニュアルを憶えれば十分だったという。プレステ3や携帯電話など、日本だけが高級品で世界に突出する、今で言う「ガラパゴス化」が既にゼロ戦でも起こっていたのだ。

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メッサーシュミット

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グラマンF6F

出典:Wikipedia

★アメリカの文化施設や社会事業に対する個人の寄付は年間20兆円、日本の約100倍だ。日本もアメリカ型の税制優遇や名誉表示を行えば、国の補助金成しでも事業ができるほど寄付が集まるだろうと堺屋さんは語る。

★小渕政権の成果
堺屋さんは自らが経済企画庁長官兼IT担当大臣として入閣した小渕内閣での実績を誇らしげに語る。

1998年7月に小渕内閣が成立、1997年のアジア経済危機を受けて、日本も金融危機が起こり、山一證券や北海道拓殖銀行が倒産。橋本内閣が参議院選の惨敗を受けて退陣した後の自民党を小渕内閣が立て直したのだ。

金融対策、会社法改革(持ち株会社を認める)、労働法規改革(派遣分野拡大)の三本柱を実施し、成果があったので株価は2万円台まで回復した。

しかし小渕氏の急死後、跡を継いだ森・小泉内閣が日本の国を立て直すどころか、官僚主導の政治を行ったので、日本はメタメタになり、世界金融危機で最もダメージをくらうことになった。


堺屋さんの今までの本、たとえばこのブログでも紹介した「団塊の世代 黄金の10年が始まる」などの主張と基本的に同じ路線の主張だ。

団塊の世代「黄金の十年」が始まる団塊の世代「黄金の十年」が始まる
著者:堺屋 太一
販売元:文藝春秋
発売日:2005-09-25
おすすめ度:4.5
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特に斬新さはないが、まさにこれからの日本のことを考えるきっかけとなる本だった。


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Posted by yaori at 00:10│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 堺屋太一

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