2010年04月20日

最強国家にッポンの設計図 大前研一の日本再建提案

最強国家ニッポンの設計図最強国家ニッポンの設計図
著者:大前 研一
販売元:小学館
発売日:2009-05-29
おすすめ度:4.0
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2009年6月、衆議院選挙の直前に出版された大前研一さんの日本再建のための提案。

隔週発行の「SAPIO」に同じタイトルで連載されていたシリーズをまとめただけでに、提案内容も奇抜でControversialな(異論の多い)ものが多い。

大前さんは今から20年以上前の平成元年頃に「平成維新」を掲げ、マッキンゼーをやめて東京都知事選挙に出たり、「平成維新の会」を立ち上げて与野党の政治家を評価して公認したり、政治的な活動を活発にやっていた。

平成維新平成維新
著者:大前 研一
販売元:講談社
発売日:1989-06
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しかし東京都知事戦で、自宅にこもって遊説を行わないにもかかわらず、タレント候補として知名度だけで支持を受けた青島幸男が勝利し、自らは惨敗した(たしか5位だったと思う)ことに衝撃を受け、「敗戦記」を書いて政治からは身を引いていた。

大前研一 敗戦記
著者:大前 研一
販売元:文藝春秋
発売日:1995-11
おすすめ度:4.5
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しかしこの20年間で、どんどん変わる世界の動きに対して、改革らしい改革がない日本が次第に遅れていくのを見て、再度「いい国作ろう!」との思いで、日本を繁栄に導くシナリオをこの本で提案するのだと大前さんは語る。

この「いい国作ろう!」という思いは、松下幸之助に通じるものがある。筆者が座右の書として、スキマ時間があるときに1−2章ずつ読んでいる松下幸之助の「道をひらく」の最後に「日本よい国」として次のように語っている。

「日本はよい国である。こんなよい国は、世界にもあまりない。だから。このよい国をさらによくして、みんなが仲よく、身も心もゆたかに暮らしたい。

よいものがあっても。そのよさを知らなければ、それは無きに等しい。

もう一度この国のよさを見直してみたい。そして、日本人としての誇りを、おたがいに持ち直してみたい。考え直してみたい。」


道をひらく道をひらく
著者:松下 幸之助
販売元:PHP研究所
発売日:1968-05
おすすめ度:4.5
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松下幸之助は、良い国日本作りを「松下政経塾」で後進育成という形で実現した。与野党に松下政経塾出身者は多い

大前さんはシンクタンク株式会社ザ・ブレイン・ジャパン(TBJ)を立ち上げて、改革運動を起こすべく準備をしている。TBJには年俸2,000万円で優秀な若い人材を50人集め、頭脳集団をつくるという。

brainjapan







まずはITを基盤とした国家戦略をつくり、国民の個人情報をデータベース化して、すべての行政サービスの基幹に置き、国のITインフラを合理化する。道州制、外交政策、新憲法試案をつくり、20年計画で活動するというものだ。

そして世界に雄飛する日本人をつくり、第4の黄金期(第1期は明治維新、第2期は日露戦争勝利から大東亜戦争に入るまで、第3は敗戦直後、松下やソニー、ホンダなど、気概のある経営者の時代)をつくるのだと。


各種の政策提言

大前さんの提言する各種の提言は次のようなものだ。

1.年金と税金改革
現在の年金は10年も持たずに破綻すると予想されるので、税金で基礎年金、2階建て部分は任意積み立てに変更する。2階部分の積立金は年金だからこその長期投資資金として資源国投資、日本型成長モデル輸出、通貨分散投資、好老リゾート開発に費やす。

★所得税は12%、法人税は25%、相続税ゼロの世界標準大減税を実施。世界各国は競って企業や資金を呼び込むために大減税競争をしている。これに日本も参戦する。

★究極は所得税・法人税全廃。資産税(市町村税)・付加価値税(道州税)導入。国は道州と市町村から上納金を集め、国家としてやらなければならない外交、防衛、通貨発行の予算とする、

★外貨準備から50兆円の国家ファンドをつくり、10%利回り運用を目指す。


2.経済復興と産業振興
中国市場の「規模感」は圧倒的だ。中国を「お客様」にして日本は生きていく。明治維新以来の140年間は日中の地位は逆転していたが、過去2、000年間は日本は中国の国力の10%程度だったという。

★近未来の4大国は中国、インド、米国、EUとなるだろう。正しい世界観を持って、世界を利用して繁栄するしたたかな戦略が日本に必要なのだ。

★格差是正のサッチャー前のイギリスは長期低迷に苦しみ、格差拡大のロシア・中国は発展した。格差拡大は必ずしも悪とはいえない。

★日本は「エネルギー大国ニッポン」となれる。原子力発電所を作れるのは世界で日本の3メーカーとフランスのアレバだけだ。大前さんは藻(=クロレラなども含む)をバイオ燃料にすることも提案する。

★ウクライナ、オーストラリア、カナダ、アメリカなど世界のそれぞれの穀物生産の最適地で農場を買収し、日本の農業従事者が行って農場を経営し、穀物を輸入する。


3.人材教育と雇用
日本は1500年前に渡来人を受け入れて礎を築いた国なので、移民を恐れず世界に冠たる多国籍国家となるのだと。

★21世紀の教育の目的は、どんなに新興国や途上国が追いかけてきても、日本がメシを食べられる人材、答がない世界で果敢にチャレンジして、世界のどこに放り出されても平気な人材を生み出すことだ。これは「フラット化する世界」でトム・フリードマンが描いた人間像と一致する。

★教えるのは英語、ファイナンス、ITの3種の神器とリーダーシップだ。

★ヨーロッパの就職試験では、「履歴書に書いてない特筆すべき経験がありますか?」と聞くのだという。リーダーシップの素養を聞くのだ。

★日本政府は教育再生会議などに提案を出させているが、「教育再生」ではなく、全く新しい教育をつくることが必要だと。


4.憲法改正と道州制で新しい国家のかたち
オールクリアして新しい国の形を考え、それを実現する憲法をつくるべき。

★今の憲法は、明治憲法、アメリカの独立宣言と憲法、フランスの人権宣言、それと起草スタッフの個人的な思い(たとえば夫婦平等)の3つで構成された「モンタージュ」憲法だと大前さんは語る。いろいろな人の顔の部分部分を継ぎ合わせて作るモンタージュ写真のようだからだ。


5.主要国との新しい外交関係

★日米関係は円熟夫婦であると。

★イスラム・テロをなくしてアラブ地域を安定させるのは、アラブユニオン(AU)をつくるべきだと。宗教色を排除し、純粋にエコノミックコミュニティにする。

★大前さんの領土問題解決シナリオは、現実的な実効支配を追認することだ。反対論は承知で竹島は現状維持、尖閣列島は実効支配を続け、北方領土は2島返還を優先すると説く。極東ロシアの経済開発を日本の経済振興に生かす議論はこのブログでも紹介した「ロシアショック」に詳しい。

ロシア・ショックロシア・ショック
著者:大前 研一
販売元:講談社
発売日:2008-11-11
おすすめ度:4.0
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★途上国の資源開発に投資し、カザフスタン、ナイジェリア、モンゴルなどに「投資部隊」として人材を送り込んで開発を支援し、生産された資源の大半を日本が買い取る。

★核、空母、憲法改正、国民皆兵制もタブー視しない新の国防論


元々月刊誌(月2回ではあるが)のコラムでの主張なので、本にすると過激で到底実現不能だったり、突拍子もないものが多いように感じる。

「いい国作ろう!」という主張には大賛成だが、方法論はいろいろ議論する必要がある。まずは議論を始めるためのたたき台としては役にたつスパイスの効いた政策提言だと思う。


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Posted by yaori at 01:02│Comments(0)TrackBack(0)政治・外交 | 大前研一

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