2010年04月21日

桑田真澄 野球を学問する 元巨人軍桑田さんと早稲田大学大学院担当教授の対談

野球を学問する野球を学問する
著者:桑田 真澄
販売元:新潮社
発売日:2010-03
おすすめ度:5.0
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元巨人軍の桑田真澄さんが2009年4月から1年間早稲田大学の社会人向けマスターコースで学び、「『野球道』の再定義による日本野球界のさらなる発展策に関する研究」という論文を書き、最優秀論文賞を受賞し、成績トップで卒業生総代にもなった話を担当教官との対話で振り返る。


担当教官の平田教授も異色のキャリア

桑田さんのがんばりや熱意もさることながら、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の担当教官平田竹男教授の異色のキャリアにも驚く。

平田さんは横浜国大を卒業して、1982年に通産省に入省、1988年にハーバード大学のケネディスクール(行政学)の修士号を取る一方、ケネディスクールのサッカー部の立ち上げにも尽力した。

その後1989年からは産業政策局サービス産業室室長補佐となり、Jリーグ設立、サッカーくじTOTOの創設、日韓ワールドカップ招致成功という成果を上げた。

1991年からは3年間一等書記官としてブラジルに駐在し、日本とブラジルのサッカー外交を促進。帰国後はエネルギー政策を担当し、アラブやカスピ海諸国との石油利権確保交渉で、サッカー談義を駆使した独特のスタイルで成果を上げたという。

2002年に資源エネルギー庁石油天然ガス課長を最後に経産省を退官し、日本サッカー協会専務理事となり、2006年に早稲田大学の教授に就任した。官僚という枠には収まらない人物だったようだ。

「サッカーという名の戦争」とか「トップスポーツビジネスの最前線」などの著書があるそうなので、今度読んでみる。

サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台
著者:平田 竹男
販売元:新潮社
発売日:2009-03
おすすめ度:4.5
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トップスポーツビジネスの最前線〈2〉―早稲田大学講義録2004 (早稲田大学講義録 (2004))トップスポーツビジネスの最前線〈2〉―早稲田大学講義録2004 (早稲田大学講義録 (2004))
著者:平田 竹男
販売元:現代図書
発売日:2005-10
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この本では桑田さん自身の論文本体は紹介していないが、桑田さんの論文の背景、骨子や大学院での学習についての対話という形で紹介している。

そして日本の野球界で、今でも影響力を持っている飛田穂洲(とびたすいしゅう)の精神主義的野球を見直すことを主張している。

「一球入魂」に代表される飛田穂洲の精神主義は、戦前の軍国主義の風潮の中で、精神鍛錬に役立つとして(アメリカ発のスポーツである)野球を守ったという時代的意義があるが、それをそのまま現代まで持ってくるのは不適当であると。

そこで飛田穂洲の「野球道」を3つに集約して、それぞれ現代的な意義を与えて再定義した。

「野球道」 → スポーツマンシップ

1.練習量の重視 → 練習の質の重視(サイエンス)

2.精神の鍛錬 → 心の調和(バランス)

3.絶対服従 → 尊重(リスペクト)


本の帯に「担当教授との超刺激的会話」と書いてあるが、たしかに驚くことが多い。内容を詳しく紹介すると本を読んだときに興ざめなので、一部だけ紹介しておく。


★桑田さんは小学校のときからグラウンドに行って殴られない日はなかったという。

ちょっと信じられない話である。筆者は小学校では一時野球クラブに属し、高校時代はサッカーをやっていたが、コーチや監督あるいは上級生から体罰を受けたことは一度もない。たしかに誰かが失敗して、連帯責任ということで、同じ学年の選手が全員でグラウンド10周とかいう話は聞いたことがあるが、自分では経験ない。

後述のアンケートでは指導者から体罰を受けたことがあるかという質問には、中学で45%、高校で46%が体罰を受けており、先輩から体罰を受けたことがあるかという質問では中学で36%、高校で51%という回答だ。

体罰、しごきや意味のない長時間練習をなくすことがが桑田さんの論文の主旨である。

★桑田さんの早稲田の大学院入試面接では、研究のテーマを「野球界のさらなる発展策」だと説明したら、面接した教官に「1年では無理だね」といわれ、普通10分程度の面接が30分かかった。受かるとは思っていなかったので、巨人入団の時のいきさつもあり、「やはり早稲田はぼくのことが嫌いなんだ。絶対に入れたくないんだ。」と思っていたという。

★桑田さんのおばあさんは子守唄に早稲田の校歌を歌って、「真澄さんは早稲田に行くんですよ」と言っていたという。それで中学生のときにPL学園→早稲田大学→ジャイアンツという目標を立てたという。

★水を飲んだらバテるとか言われていた時代だったので、便器の水を3回流してすくって飲んだり、アンダーシャツを濡らしてアンダーシャツをチューチュー吸ったという。

★現役選手6球団270人、へのアンケート。11月末のシーズンオフの時を狙って1軍と2軍の選手にアンケートをとった。選手会長が協力してくれ、横浜の三浦大輔選手は自宅まで届けてくれたという。

このアンケート結果によると、中学での平日の平均練習時間は2.9時間、休日は5.8時間。高校だと平日は4.5時間、休日は7.3時間で、休日は9時間以上練習していたという人が70人もいたという。

★桑田さんは高校一年で全国優勝し、全日本チームに参加して帰ってきたときに中村順司監督に練習時間を3時間にしましょうと訴え、練習時間を変えたという。全体練習は3時間だけ。あとは自分で考えて必要なトレーニングをする形に変えたら、PLは練習時間は少ないのに、連続5回甲子園に出場し、2回優勝、2回準優勝、ベスト四1回と抜群の強さを発揮した。

★桑田さんは高校のときは変化球はカーブしか投げなかったという。高校野球でいろいろな球を使わないと抑えられないのではプロでは通用しないと思っていたからだという。

そのかわりバッターのくせや、傾向を観察して、逆算してバッターの狙いを推測していたという。高校時代は7−8割はバッターの狙いがわかったという。

筆者の別ブログで紹介しているが、桑田さんは現役最後のピッツバーグパイレーツ時代に筆者も関係していたピッツバーグ日本語補習校を訪問してくれている。補習校の児童が桑田選手がケガをしたときに、千羽鶴を送ったからだ。

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一流の野球選手は人格的にも優れた人が多いが、桑田さんは何事も真摯に取り組み、伝統とか慣習に流されることなく、不合理なものには対決して、考える野球を追及している。

平田教授は桑田さんに将来プロ野球のコミッショナーになれとハッパをかけているが、コミッショナーになるかどうか別にして、ちょうど相撲界の貴乃花親方のように桑田さんにはプロ野球の運営者になって改革をしてほしいものだ。

中学生ですでに190センチ近い身長で、PLに入学するやいなや高校1年生の4月にPLの4番になったという清原氏の昔の話も面白い。

野球選手が書いた本は多いが、この本はちょっと違う。桑田さんの今後の活動を応援したくなる本である。


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Posted by yaori at 12:46│Comments(0)TrackBack(0) スポーツ | 野球

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