2010年06月09日

学歴の耐えられない軽さ 知らなかった新卒就職事情

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
販売元:朝日新聞出版
発売日:2009-12-18
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

元リクルート「Works」編集長で、マンガの「エンゼルバンク」のカリスマ転職エージェント海老沢康生のモデルとなった人材コンサルティング会社ニッチモ社長の海老原嗣生(つぐお)さんの本。

エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)
著者:三田 紀房
販売元:講談社
発売日:2008-01-23
おすすめ度:3.5
クチコミを見る

「やばくないか、その大学、その会社、その常識」という副題がついているので、てっきりトップクラス以下の大学の話かと思ったら、日本の新卒就職事情についての本だった。

大学生の息子がいずれ就職マーケットに参入するので、この本は大変参考になった。

アマゾンのなか見!検索に対応していないので、目次を紹介しておく。目次を読むとこの本の論点が大体わかると思う。

第1章 学歴のインフレーション

1.学歴と常識の間 ー 秋田県も知らない若手社員

2.12年にわたる野放し状態 ー 大学無試験化という危険な社会実験

3.早慶は昔の早慶ならず ー 数字が語る経営戦略と入学者の変容

4.禁断の偏差値トリック ー 一般入試でさえ、学力低下競争へ

5.お手軽入試、アカデミズムにも歪み ー 教科減・マークシートの影響

6.高校未履修問題の矛先を変えたマスコミ ー 罪深い進学校病

7.企業には「かつての学歴」がちょうど良い ー 大量優等生と少数異能

8.金の卵のために鶏を殺した大学 ー 拡大経営とブランド失墜

9.大学を「補習の府」に ー 再建のための秘策

第2章 人気企業が危ない

1.大学サークルに缶ビールを贈った大手企業 ー ランキング病?

2.秘技、旧帝大「生物、食品・農学部」卒 ー 採用実績校のお化粧

3.就活の縮図、インターンシップ ー 偏差値と人気ランキングの泥仕合

4.不吉な前兆? ー 人気ランキングに入った企業は衰退が始まる

5.奥田さんと稲盛さんと土光さんの正しい生き方 ー 不況期就職勝ち組

第3章 若者はけっこうカワイソウじゃない

1.就職氷河を厚くした玄田論文 ー 「過去企業への憧れ」という病根

2.就活期の景況で人生は決まらない ー 誰でも20代にチャンスは2回

3.「就社より就職」というウソ ー 13歳のハローワーク幻想

4.「総合職」という蜜の味 ー ”何でも屋”という誤った批判

5.答えは従業員150人の企業 ー 社内で再チャレンジできる最小単位

6.フリーターの尊厳をまず認める ー 脱フリーターという横暴


この本を読んで、大きな変化に気が付いていなかったことがわかった。


若者人口は減っているのに大学生は増えている

一つは19ー22歳の人口は1993年にピークを迎え、その後減少しているのに、大学の学生数は増加していることだ。

次はこの本に紹介されている統計だ。大学進学率が現在は50%を超えており、特に女性の大学進学率は筆者の学生時代の10%台から、3倍の44%となっている。

基礎人口と大学進学率推移














出典:本書70ページ

大学の数も増えており、これだけ大学生が増えたら学力の低い学生がいることはむしろ当然だろう。この本で紹介されているように秋田県の場所もわからない一流大学卒の社員が出てくることもうなずける。


新卒正社員採用数は減っていない

もう一つは新卒正社員採用数は増えており、新卒を非正規社員に置き換えるという動きはないことだ。

次がこの本で紹介されている新卒正社員の就職数推移のグラフだ。女性の新卒就職者が増えたので、全般的に新卒正社員数は増えている。

正社員就職数推移






出典:本書176ページ

筆者の会社でも女性の総合職が増えているが、思えば当たり前のことである。今や大学生のほぼ半分は女性なのだから。

筆者の学生の時は1,2年生のクラスは法学部と経済学部が一緒だったが、女子がゼロのクラスもいくつかあった。

女子が少ないので、まんべんなく割り振ると一クラスに1−2人になってしまうので、5人くらいまとめていくつかのクラスに集中的に割り振っていたからだ。今の学生には信じられない話だろう。


この本では雇用についての誤解をデータで反証している。たとえば:


★なぜ、若者は3年で辞めるようになったのか? − 若者は50年以上前から、3年で辞めている。

次がリクルートエージェント社が2007年に大卒ホワイトカラー5万人に実施した調査での年齢別転職経験者比率を示したグラフだ。

20代までに半数は転職を経験し、35歳以降はほぼ定着するという傾向は昔も今も同じだと海老原さんは語る。

大卒ホワイトカラーの年齢別転職経験者比率






出典:本書134ページ

★成果主義が普及して、職場が殺伐となった? − 成果主義とそれ以前で査定はほとんど変わっていない。

★就職氷河期の多くの人たちは世間の底辺で何を考えているのか? − 就職氷河期でも就職できた人が圧倒的多数。

新卒の求人倍率は常に1を超えており、中途採用者の倍率がめったに1を超えないことと際だったコントラストを成している。

今も昔も大変なのは転職や中途採用市場で、新卒ではないのだ。

新卒と中途の求人倍率推移



















★大企業が平気でリストラをする昨今、不安な熟年が増えている? − つぶれる寸前の会社でないとリストラはしない。

★不況だからこそ語学や資格を身につけキャリアを守るべきか? − 語学を身につけ資格をとってもキャリアの足しにはならない。


早慶の学生確保戦略

早稲田大学と慶應大学の入試方法、学部新設、定員数を分析して、それぞれの学生確保戦略を分析していて面白い。

早稲田大学は学部は新設しても定員は増やさず、一般入試定員を絞る方法で、人気と偏差値を高く維持している。

慶應大学は新規学部を開設して定員は増やしたが、試験方式を国立大学と併願しやすい方式を導入する方法で、同じく人気と偏差値を維持している。

どちらも少子化を乗り切り、高い倍率を維持しているが、学生の質はかつてと異なるという。

偏差値についても、筆者の学生時代の様に全受験者を一律の偏差値で比較するのではなく、試験科目ごとに受験校別の集団に分けて比較するので、同じテストの点数でも偏差値は異なる。

それを示したのが、次のグラフだ。

偏差値のしくみ






出典:本書43ページ

だから慶應の経済学部より法学部の方が偏差値が高いというのは、同じ母集団での比較ではなく、本来比較してはならないものを比較しているのだと。

いままであまり意識していなかった就職分野なので、大変参考になった。これから新卒就職戦線に参入する学生には、少なくとも社員150名以上の職種転換が可能な規模の会社に就職することを勧めている。

同じ企業での異動も含めてリベンジ転職のチャンスは35歳頃までに2回はあるという。その会社が20年後も一流企業である保証はないので、人気や待遇ではなく、「徹底的に社風で選ぶ」べきだと。


大変参考になったので、海老原さんの別の本、「雇用の常識『本当に見えるウソ』」も今度読んでみる。

雇用の常識「本当に見えるウソ」雇用の常識「本当に見えるウソ」
著者:海老原 嗣生
販売元:プレジデント社
発売日:2009-05-18
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


非常に参考になる本だった。もっと詳しく紹介したいところだが、本を読むときに興ざめなのでこの程度にしておく。

話題も豊富で飽きさせない。データを駆使して解説するという姿勢も好感が持てる。簡単に読めるので、是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




Posted by yaori at 00:23│Comments(0) ビジネス | 教育論