2010年06月16日

分析力を武器とする企業 データ分析の教科書

分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学
著者:トーマス・H・ダベンポート
販売元:日経BP社
発売日:2008-07-24
おすすめ度:4.0
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データ分析を経営に生かす実例とその理論や分析ツールを解説したデータ分析の教科書。

英国のデータ分析専門会社の人から紹介されて読んでみた。。

この分野は筆者が特に興味を持っている分野なので、いままで「CRMの実際」という日経文庫や、流通業界では世界最高峰の英国TESCOのCRMを取り上げた「TESCOの顧客ロイヤリティ分析」などを読んで研究してきた。

CRMの実際 (日経文庫)CRMの実際 (日経文庫)
著者:古林 宏
販売元:日本経済新聞社
発売日:2003-04
おすすめ度:3.5
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Tesco顧客ロイヤルティ戦略Tesco顧客ロイヤルティ戦略
著者:C. ハンビィ
販売元:海文堂出版
発売日:2007-09
おすすめ度:2.5
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日経文庫は2003年の本だが基本を抑えるのには適している。

TESCOの本は、ポイントカードを使ったCRMはどうあるべきかという実例を詳しく紹介しており大変参考になった。このブログでも原著の第2版のあらすじを詳しく紹介している。

ポイントカードを使った顧客管理を突っ込んで研究したい人は、2004年に出た第1版の翻訳である日本語版の「TESCO顧客ロイヤルティ戦略」よりは、テスコクラブカード戦略の見直しまで取り上げている2008年に出た英語の第2版「Scoring Points」の方をおすすめする。

Scoring Points: How Tesco Continues to Win Customer LoyaltyScoring Points: How Tesco Continues to Win Customer Loyalty
著者:Clive Humby
販売元:Kogan Page Ltd
発売日:2008-09
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筆者が読んだ時は、ハードカバーしかなかったが、現在はペーパーバック版が出ているので、アマゾンで2,500円で買える。

話が横道にずれたが、「分析力を武器とする企業」は、基本も抑え、各社の実例も広く浅く紹介している。

次の表のような顧客分析を生かす企業の実例が取り上げられている。

分析志向の企業リスト













出典:本書23ページ

分析力を武器にする企業は次の4つの特徴を持つという。

1.分析力が戦略的優位性のベースになっている。

2.分析に組織を挙げて取り組んでいる。

3.経営幹部が分析力の活用に熱心である。アマゾンのジェフ・ベゾスが良い例だ。

4.分析力に社運を賭け戦略の中心に置いている。


参考になった具体例をいくつか紹介しておく。

★ネットフレックス

オンラインDVDレンタル。日本のツタヤDISCUSや、テレビで盛んに宣伝しているDMM.COMのようなサービスだ。

DVDの送料は無料、貸出期限は無制限、延滞料は一切無し。借りたDVDを返せば、次のDVDが借りられるというシステムだ。

ネットフレックスは「シネマッチ」というアルゴリズムを組み込んだ映画リコメンドエンジンを持っている。顧客の好みを分析して、映画を推薦するのだ。

ネットフレックスは100万ドルの賞金を出して、社内外の力を借りて「シネマッチ」のアルゴリズムを10%以上改善したという。

ネットフレックスの最優先顧客はめったに借りない会員だという。月額料金は固定なので、めったに借りない人の方が利益率が高いので、この種類のお客をつなぎ止めておくことが重要だ。

いずれはDVDレンタルはオンラインダウンロードに変わるだろうが、ネットフレックスは自社の分析力さえあれば、バーチャルに移行しても利益は上がると自信を持っているという。


★ボストンレッドソックス

データ分析をプロ野球に利用して成功したオークランド・アスレティックスの例は、「マネーボール」という本に詳しい。この本も近々読んでみる。

マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)
著者:マイケル・ルイス
販売元:ランダムハウス講談社
発売日:2006-03-02
おすすめ度:4.5
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まだ松坂大輔が加入する前、ボストンレッドソックスは2002年に野球のデータ分析の専門家を雇って、成果を上げ、2003年にはアメリカンリーグのチャンピオンシップシリーズに進出する。

しかしヤンキーズとのチャンピオンシップシリーズでは、監督のグレディ・リトルはデータ分析の専門家の意見を退け、優勝がかかる第5戦先発のペドロ・マルティネスをデータ分析による限界の105球を超えて8回にも登板させた。

データ分析ではペドロ・マルティネスは、105球までなら相手チームの打率は2割3分だが、106から120球だと打率は3割7分に上がっていたのだが、監督は自らのガットフーリング(直感)を信じたわけだ。

筆者は今でも覚えているが、たしかこの第5戦の大逆転劇で、松井が同点のホームを踏んで、躍り上がって喜んでいたことを思い出す。YouTubeにその時のビデオが載っている。



2003年で監督はクビ、翌年は分析力と戦力補強が役立ち、86年間の「ベーブ・ルースの呪い」を破って念願のワールドシリーズを制覇したのだ。


★ロッキー・マウンテン・スチール
昔鉄鋼原料を取り扱っていた筆者には懐かしい名前だ。ロッキー・マウンテン・スチールはオレゴンスチールの子会社でシームレス鋼管を製造していたが、不況で生産中止していた。

筆者の記憶が正しければ、この会社は昔のUSスチールの工場ではないかと思う。戦争中に万が一敵が西海岸に侵攻してきても、ロッキー山脈のあたりにあれば、爆撃にも平気だということで建設した工場ではなかったかと思う。

鋼管市況が高騰したので、社内外の生産再開を求める声に対し、副社長のロブ・サイモンは"profit insight"というソフトウェアで再開時期を分析し、製品販売での逸失利益を出すことなく工場再開を決めたのだという。

ロッキー・マウンテン・スチールは今はEvrazという会社の一部門になっているようだ。


★マス広告の問題点

マス広告の問題点は、デパートの先駆者のジョン・ワナメーカーが嘆いたように「広告費の半分は無駄に失われている。だが、それがどの半分かがわからない」点だ。

それを科学的に分析するのが、現代の広告業界が力を入れている分野だという。DDB Worldwide社の子会社のDDBマトリクス社が有名だ。

ちなみにDDB Worldwide社のホームページには"Fun Theory"という、人は面白ければ動くという一連の広告活動が紹介されている。

階段をピアノの鍵盤のように改造して、音が出るようにしたら、エスカレーターより階段を使う人が増えたという。フォルクスワーゲンの広告で、興味深い実験が紹介されている。


データ分析のウソ

★英国の名宰相ベンジャミン・ディズレーリは「嘘には3種類ある。嘘、大嘘、統計だ」と語ったという。恣意的な統計は人を欺くこともできる。

★紙おむつとビールの伝説は都市伝説
オスコというドラッグ・ストアチェーンが話の元らしいが、オスコではビールと紙おむつと一緒に陳列したことはないし、そもそもビールを売っていない店もあるという。

この例を紹介して、データ・マイニング・ソフトなどを使ってデータを分析するだけでは不十分で、統計分析のスキルを備えたデータ分析のアナリストが社内に必要だと力説している。

興味のある人向けに、用語解説とツール解説を続きを読むに載せる。

データ分析の用法、手法、ツールなど、広く浅くトピックスを取り上げていて参考になる本だった。


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興味のある人向けに、用語解説とツール解説を追記に載せる。

データ分析の手法

データ分析の教科書なだけに、顧客分析でよく使われるデータ分析手法を簡単に説明している。

★カイ二乗検定(CHAID=カイドと呼ばれる)
分析結果はツリー状で現れ、最も関連の高い変数が第一層に現れる。顧客のセグメント化などに使う。

★コンジョイント分析
商品やサービスを構成する複数の要素について最適の組み合わせを探る方法。

★顧客生涯価値分析

★重回帰分析

★価格最適化

★時系列実験・市場実験


代表的なデータ分析ツール

★オンライン分析処理(Online Analytical Processor)
キューブと呼ばれる3次元以上のデータベースを構築する。多次元のスプレッドシートだ。ビジネス・オブジェクツとコグノスのシェアが高い。

★定量的アルゴリズム(Quantitative Algorithm)
定量的なデータから価格や融資額を決める時などに使われる。SASやSPSSなどからアプリケーションパッケージが出ているという。

★ルールエンジン
フェア・アイザック、ILOG.PEGASYSTEMなどのシェアが高い。

★データ・マイニング
SASが大手。クラスタリングなど、様々なアルゴリズムに用いる。

★テキストマイニング

★シミュレーション・ツール

Posted by yaori at 00:23│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 経済

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