2010年06月19日

JAL崩壊 パイロット待遇見直しの火付け役?となった暴露本

JAL崩壊 (文春新書)JAL崩壊 (文春新書)
著者:日本航空・グループ2010
販売元:文藝春秋
発売日:2010-03-17
おすすめ度:2.5
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グループ2010という匿名のJAL客室乗務員グループの暴露本。

次がこの本の目次だ。是非アマゾンのなか見!検索でも目次を見て欲しい。目次にサブタイトルが含まれていて、大体この本の筋がわかる。

第1章 悪夢の始まりはJASとの合併

第2章 わがままパイロットの「金、女、組合」

第3章 「負け犬スッチー」と「魔女の館」

第4章 うるさいうるさいうるさい客

第5章 労働組合は裁判がお好き


客室乗務員のねたみ本

暴露本なので、くわしいあらすじは紹介しないが、客室乗務員のぼやきとねたみだらけの本だ。

2010年1月のJALの会社更生法申請以来、タクシー・ハイヤー利用や特殊手当てなどパイロットなどの優遇待遇がどんどん廃止されているが、それの火付け役となったような形になったのがこの本だ。

著者グループにパイロットは含まれていないので、パイロットに関してはぼろくそだ。

実は筆者の家内もその昔JALに勤めていたので、社員特権のEF(Employee Free?)という無料旅行の権利を使ってハネムーンに行ったり、海外や国内にも旅行した。

その意味ではJALにはいろいろお世話になったが、いまや社員の無料旅行の権利もさぞかし制限されていることだろう。

家内はシフトで成田ターミナルに勤めていたので、早朝や深夜勤務のときは家にタクシーの送迎があった。たぶん今はそういう仕事は子会社や派遣社員を使っているのだろうし、タクシーの送迎なんてありえない話なのだろう。

結婚前は家内は成田のJALの寮にいたが、当時は同じ寮の客室乗務員には空港までハイヤーかタクシーの送迎があった。現在は最寄の駅やシティターミナルまでタクシーを使えるという制度に改悪になっているようだ。

パイロットにはつい最近までタクシーやハイヤーの送迎があったようだが、これも最近メスが入ったようだ。この本は2010年3月に出たばかりなので、パイロット待遇改悪の火付け役?となったのかもしれない。

それにしても昔は客室乗務員は、一般社員に比べてはるかに良い待遇だったはずなので、ここまでパイロットをねたむのは、意外な気がする。

しかしこの本を読むと海外でもパイロットと客室乗務員のホテルは別々で、パイロットは一流ホテル、客室乗務員はホリデーインという話なので、客室乗務員がパイロットをねたむのもわかるような気がする。

他の海外のエアラインは当然パイロットも客室乗務員も同じホテルなので、チーム意識が醸成できる。JALのようにパイロットと客室乗務員を完全別待遇でやっていると、チームとしての一体感が醸成できないと思う。


ANA国際線の優れたサービス

筆者は当然JALを愛用していたが、結婚して2年で米国に転勤になった時に家内も退社したので、あるときからANAに切り替えた。

というのはANAのサービスが抜群だったからだ。

1980年代後半にANAが国際線に進出し、米国の最初の乗り入れ先はワシントンだった。日米航空交渉でJFKの発着枠が取れなかったのだ。

当時のANAの国際線のお客に対するサービス精神は見上げたもので、客室乗務員の士気は高く、一切私語はなかった。食事もJALより格段においしく、ワインはビジネスクラスでもシャトーワインを取りそろえ、サービスは非常に良かった。

筆者は喫煙者ではないが、喫煙者の同僚は、ANAに乗ったらスチュワーデスがピンセットで吸殻を回収しに来て、常に灰皿をきれいにしてたのに感動したと言っていた。

ANAに乗った後でJALに乗ると客室乗務員の私語の多さと、アラームで呼んでもなかなか来ないダレた雰囲気が気になったものだ。


JASとの合併が諸悪の根元?

この本で驚いたのは、JAL関係者がJASとの合併が諸悪の根源と考えていることだ。

その理由は機体が全く互換性がなかったこと、JASパイロットの待遇がJALと同じか、むしろ上回るようになり、ヒラ機長から管理職機長格上げ奮発で年収3,000〜4,000万円が続出したこと、英語のできないJASパイロットがトラブルを続発させたことなどだ。

客室乗務員は管理職になると地上管理業務が中心となり減収となるので、その補填で「月間乗務保障手当」を貰っていたらしいが、これも不況で廃止され、管理職になると給料が下がるのと大違いだとねたんでいる。

筆者はJALがJASを買収し、国内線のシェアでANAを上回る55%のシェアを獲得したのは、経営戦略として妥当だと思う。今でも国際線と国内線のシームレス運航が、成功する航空会社の条件なのは変わりない。

ところがこの本では、そういった根本戦略の正しさを全く理解せず、JALからJAS買収を申し入れたのは失敗だった、むしろJASがにっちもさっちも行かなくなって、熟柿が落ちるように救済合併すれば、虎の子の羽田などの発着枠をライバルに手放さなくてもすんだはずだ、もっと良い条件で合併できたはずだなどと、結果論、ないものねだりに終始している。

正しい基本戦略をきちんと実行できるかどうかは、経営陣の問題でもあるが、社員全体の問題でもある。

おまけに、「CA(キャビンアテンダント)の合コンの相手が、「○紅」、「△藤忠」だったのがJALという名に変わった途端、「○○物産」、「××商事」になって生きがいとやる気に繋がったという嘘のような本当の話もあります」とか言っているのには、もはやあきれるばかりだ。


正しい指摘もある

この本全体が誹謗中傷だらけだが、正しい指摘もある。

「テレビなどで、”したり顔”の評論家や学者がよく言っていた「国が滅茶苦茶に空港を作り、そこにJALが運航しなければならい羽目になったのが赤字の原因である」というのは違います」

「合併後、新しくできた空港にJALが飛ばしたのは静岡空港と神戸空港だけで、あとはJASが持っていた地方や離島の不採算路線を引き継いだもの。愚かにも初めから赤字とわかっている路線を何の条件もつけることなく抱え込んだのです」

「JALの経営危機を招いた元凶の一つにもかかわらず誰も何も言わない大きな問題が他にあります。それは為替とオイルの「ヘッジ」問題です。」

なぜかマスコミはこのヘッジ損失を取り上げないという。


たまたま目撃した客室乗務員と客とのケンカ

第4章 うるさいうるさいうるさい客、つまり”UUU”は問題客の暗号だという。たしかに問題客も中にはいるだろうが、筆者は問題乗務員を目撃したことがある。

1995年頃にヨーロッパに出張に行った時だが、筆者はいつも2階のビジネスクラスの席をリクエストするのだが、下のビジネスクラスの席で、50代のおっさんのパーサーが客と大げんかして、言い争っていた。

たまたま下に降りて行って、その場面に出くわしたのだが、客席全体のムードをぶちこわす傍若無人ぶりだった。たぶん客のマナーが悪いのだろうが、それにしても、公衆の面前で客と言い争うとは信じられないサービス精神の欠如である。


一体感がない会社

全体を通して「俺たちは悪くない。悪いのは奴らだ」というような態度だ。なかには良い社員も当然いるのだろうが、これでは会社もまとまらないだろう。

社内にいくつも組合があり、パイロット、客室乗務員、一般社員が階層をつくって、それぞれ対立するという社内分裂が、結局JALの最大の問題で、それがため会社が破綻したのではないかと思う。


そのことをよく表している本である。

読み物としては面白い。

まずはアマゾンのなか見!検索で、どんなサブタイトルが並んでいるか見て、それから本を手に取ることをおすすめする。


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Posted by yaori at 02:49│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 趣味・生活に役立つ情報

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