
著者:レマルク
販売元:新潮社
発売日:1955-09
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以前紹介したバーバラ・タックマンの「8月の砲声」や「決定的瞬間」を読んだので、第一次世界大戦を描いたレマルクの「西部戦線異状なし」を読んでみた。

著者:バーバラ・W・タックマン
販売元:筑摩書房
発売日:2004-07-08
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「8月の砲声」は各国の王家は姻戚関係でつながっていながらも、サラエボ事件という突発事件からヨーロッパ全体が戦争に巻き込まれる過程を描いたもので、いわばマクロの歴史だ。
それに対して、レマルクの「西部戦線異状なし」は、18歳で仲間20人と一緒に志願したドイツ歩兵のパウル君が体験する塹壕戦での殺し合い、毒ガス、仲間が一人二人と減っていく様、つかの間の休暇での帰郷、ふたたび戦場に戻り負傷して病院に収容されたことなどを描いたミクロの歴史だ。
レマルク自身パウルという名前で、中学生で第1次世界大戦に志願した経験を持つので、この小説はレマルク自身の体験に基づくものだ。
タコのパウル君はワールドカップの占いを的中させて大人気になって、今は占いから引退したらしいが、こちらのパウル君は3年間も戦場で戦う。悲惨な殺し合いを通して新兵が古強者になっていく過程を描いている。
第1次世界大戦は、最初ドイツがフランス領に攻め込むが、4年近くも戦線が膠着し、「奇妙な戦争」といわれている。しかし、膠着しているように見えても、最前線では砲弾が飛び交い、そして仲間が一人二人と死んでいく戦場のありさまが、この本ではリアルに描かれている。
実は恥ずかしながら筆者はレマルクは、名前がフランスっぽいので、フランス人だとばかり思っていたが、実はドイツ人作家だ。
この作品は第一次世界大戦が終わってから11年後の1929年に発表され、それまで無名だったレマルクを一気に有名にした。
しかし戦争の悲惨さを余すところなく描く内容が反戦的だとして、後にドイツの権力を握るナチスに目を付けられ、ついにはレマルクはアメリカに亡命する。
日本語訳者の秦豊吉さんまでもが、日本の憲兵に呼び出されたが、秩父宮や高松宮のコネクションで事なきを得たという。
いつもどおり小説のあらすじは詳しく紹介しない。第一次世界大戦の話だが、第2次世界大戦のときの日本兵も、たぶん同じように食糧不足としらみや病気に悩まされて、多くが亡くなったのだろうと思わせる内容だ。
休暇を取って帰郷すると、お母さんに「お前にこれだけは言っときたいと思ってたんだよ。フランスへ行ったら、女にはようく気をおつけよ。フランスの女というものは、みんな性(たち)が良くないからね」と言われる。
筆者が24歳でアルゼンチンに研修生で行ったときに、筆者の母親に言われた言葉を思い出させる。
やはり息子を外国に送る母親の心配はどこでも同じなのだろう。
この小説の最後はあの有名な言葉で終わる。
「ここまで書いてきた志願兵パウル・ボイメル君も、ついに1918年10月に戦死した。その日は全戦線にわたって、きわめて穏やかで静かで、司令部報告は「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」という文句に尽きているくらいであった。(後略)」
やはり名作はいい。
そして映画も名作だ。
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出演:リュー・エアーズ、ルイス・ウォルハイム。ジョン・レイ、ベン・アレクサンダー
販売元:ジェネオン・ユニバーサル
発売日:2009-08-05
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夏休みの読書あるいは映画鑑賞に是非おすすめしたい名作である。
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