2010年11月13日

大前研一の資本主義の論点 ハーバードビジネスレビュー論文集

大前研一の新しい資本主義の論点大前研一の新しい資本主義の論点
著者:大前 研一
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2010-08-06
おすすめ度:4.5
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大前研一さんの近著。大前さんは序論の「ポスト金融危機の経営戦略」という40ページほどの論文を担当し、他はハーバードビジネスレビューに掲載された論文を集めた本だ。

ニュー・ノーマルの世界

大前さんの論文では、リーマンショック以降、世界経済の主役は先進国からBRICsなどに代わり、もはや世界は昔の秩序には戻らないことがはっきりした。この状態をニュー・ノーマルと呼ぶ人もいるという。

2008年と2009年の主要国のGDP成長率比較の資料が載っている。もやは主役交代は明らかだ。

2008-2009年の主要国GDP成長率










出典:本書3ページ

2010年には先進国が1-2%の低成長が予想される一方、BRICs、VISTA他の国の2010年のGDP成長率予測は次の通りだ。

2010年GDP成長率予想







出典:本書7ページ

インドネシアに注目

大前さんが注目しているのは、インドネシアだ。2004年に初の直接選挙で選ばれたユドヨノ大統領のリーダーシップの下で、汚職撲滅、経済成長、治安回復を目ざす諸政策が実施され、政治と社会が安定し、経済も成長起動に乗っている。ここ5年で国民一人当たりGDPが2、000ドルを超えて倍増している。

人口は2億3千万人、石油、ガス、石炭、アルミなどの天然資源もある。過去の宗教・民族対立に根を発する政情不安も、経済が発展したので国民団結が進み、政治・社会は安定している。

大前さんはBRICsではなく、インドネシアも入れたBRIICsと呼ぶべきだと主張する。

インドネシアは筆者も好きな国だ。

訪問したことは2回だが、実は筆者の亡くなった父親がインドネシアで従軍していたのだ。昭和18年に召集されて、上海、香港、サイゴンなどを経由してインドネシアのジャワ島に派遣された。

父の後続の部隊は輸送船がすべて敵潜水艦にやられて、全く現地までたどり着けなかったので、結局終戦まで父たちの年代が一番下だったといっていた。

今度紹介する山本七平さんの「日本はなぜ敗れるのか」にも書いてあったが、バシー海峡を通る日本軍の輸送ルートを、山本さんはナチの強制収容所以上に効率の良い大量殺人工程と呼ぶ。

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21)
著者:山本 七平
角川グループパブリッシング(2004-03-10)
販売元:Amazon.co.jp
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わずかな駆逐艦と航空機の護衛だけで、兵隊を満載した輸送船をどんどん送り出しては、かたっぱしから敵潜水艦の犠牲となり、兵隊も兵器もすべて海の藻屑と消えたのだ。

陸軍は喪失のリスクが高いことを知りながら、それでもどんどん輸送船を送るものだから、最後はほとんど廃船のようなボロ船で山本さん達はフィリピンに送られたという。

筆者の父も、霧に紛れて出航したが、同僚の船が潜水艦にやられ、駆逐艦がしきりに爆雷を投下したが、潜水艦はやっつけられなかったと言っていた。まさに九死に一生を得ていたのだ。

陸軍では当時「ビルマ地獄、ジャワ極楽、マニラ享楽」と呼んでいたそうだが、米軍の飛び石作戦で、インドネシアは米軍の反攻対象とならなかったので、父はほとんど戦闘を経験せずに済んだ。

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出典: Wikipedia

戦後はオランダ兵が進駐してきたが、オランダ人はインドネシア人に憎まれていたので、日本軍は武装解除せず、オランダ兵を守ってやっていたと言っていた。

日本人はインドネシア人に好かれていたので、日本軍人のなかには、スカルノなどのインドネシア独立軍の顧問としてインドネシアに居続けた人もいる。

父が日本に無事戻ってこなければ、筆者も生まれていなかったわけで、その意味でインドネシアにはいわば「命の恩人」として親しみを感じているのだ。

閑話休題。


アジアの中間層を狙う

2025年頃には日本はインドにGDP規模で抜かれ、インドネシアにも抜かれる可能性がある。そんな状況下、日本企業として決断すべきなのは、7億人のアジア新中間層を狙うことだと大前さんは語る。

アジアの中間層は次のように急速に各国で拡大して、いまやアジア全体で7億人もいて、購買力もそこそこあるのだ。

アジアの中間所得層の人口推移






出典: 本書35ページ

インドネシアに進出して成功している企業の例として、大塚製薬のポカリスエット、ユニチャームを紹介している。


他のハーバードビジネスレビュー論文

この本では大前さんの論文以外に28のハーバードビジネスレビューの論文を次のカテゴリーで紹介している。

第1部 経済と金融
第2部 企業
第3部 グローバリゼーションと新興経済
第4部 技術と環境

印象に残ったのは、GEのリバース・イノベーションの例だ。CTスキャナーは従来10万ドル以上したが、リバース・イノベーションで1,000ドルの携帯型心電計とノートPCを利用する15,000ドルのコンパクトCTスキャナーを開発した。

従来GEのイノベーションは、先進国で開発した製品・技術を後進国に持って行くという「グローカリゼーション」が中心だった。この格安CTスキャナーは後進国である中国のチームが開発し、世界に広める「リバース・イノベーション」だという。

リバースイノベーションの例








出典:本書209ぺージ

それと6つのクリーン・エネルギー技術というまとめの表も参考になった。いずれのクリーン・エネルギーもまだ市場の勝ち組にはなっていない。

clean energy1






clean energy2



出典:本書308-311ページ

筆者の職場ではハーバードビジネスレビューを購読しているが、実は筆者は読んでいない。ちょっとレベルが高すぎるのだ。

大前さんの本だと思って読むと失望するかもしれないが、気に入った論文だけじっくり読めば良いと思う。専門的な論文もあるので世界の一級の頭脳が何を考えているのかがわかって、参考になると思う。


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Posted by yaori at 02:09│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 大前研一

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