
著者:ジェームズ ミラー
阪急コミュニケーションズ(2004-02)
販売元:Amazon.co.jp
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ゲーム理論を応用したケースを多く並べて簡単に解説した本。
参考になった事例をいくつか紹介する。
★コルテスはメキシコに上陸して、すぐに船を燃やした。強大なアステカ王国に反抗する部族を結集させて本気で戦わせるために退路を断つ作戦にでたのだ。
中国の故事が起源だと思うが、この退路を断つという作戦は、たとえば包囲戦などで立てこもる敵に、こちらの戦闘意欲がゆるぎないものであることを示し、敵の降伏を促す可能性がある。
★映画「ビューティフルマインド」で、ナッシュ均衡として暗示されている、バーで4人の男が一人の超美人と4人の普通の女性に言い寄るケースについて解説している。
ナッシュは美女を無視して、他の4人に絞るべきだと主張する。しかしこれはナッシュ均衡ではない。
ナッシュ均衡は、他の3人が普通の女性で満足し、一人が超美人にアタックする場合と、2~3人が超美人にアタックするが、フラれても良いと思っている状態だ。
相手の戦略に対して、どのプレーヤーも自分の選んだ行動を後悔しない状態がナッシュ均衡だと。
★囚人のジレンマを解消するために、マフィアは警察に協力した者は無慈悲に殺す。
もし捕まってもマフィアのメンバーなら確実に刑期を短くできるのだ。そういう連中が殺人を犯す確率は高くなり、マフィアは犯罪組織の中で優位性を保てるのだ。
★CEOが会社の資産価値をたとえ1%でも高めてくれれば、CEOに莫大な報酬を与えても良い。だから良いCEOには各社のオファーが殺到し、年俸が急騰するのだ。
★喫煙者は先のことより現在のことを大事にする人だから、タバコを吸う人を信頼するのはほどほどにした方が良い。逆に運動習慣のある人は、将来に備えた行動をしているので、相手を裏切ることは少ないだろう。
★納入業者と結ぶ「最優遇顧客協定」は顧客に安心を与える一方、業者には価格競争を緩和するメリットもある。
筆者の駐在していた時も、たとえばGMとフォードなどは、仕入先と「最優遇顧客協定」を無ずぶことが多かった。たとえば鉄鋼メーカーなどがフォードと価格値下げで合意すると、GMも自動的に値下げを受けられる。
だから力のある会社はこのような「最優遇顧客協定」を要求するのだ。
★求人では逆選択がありうる。支払う給料に最も満足する人が、最も低い資質の持ち主だからだ。求職者は熱意を過剰に表すべきではない。むしろ気のないそぶりをして別の会社からも魅力的なオファーが殺到していると雇用者に思いこませる方が良い。
たとえば年俸8万ドルで求人広告を出すと、最もその仕事に就きたいと思っているのは他の会社では8万ドルももらえない人物だからだ。本当に雇いたい人は、たぶん応募すらしてこない。その人は8万ドル以上稼げる有能な人物だからだ。
★アメリカのバレンタインデーでは男が女性にプレゼントを贈る。(筆者ははっきり記憶がないが、男でも女でもプレゼントを贈ってよかったような気がする)
バレンタインデーは多くの女性にとって最後の審判の日なのだと。花をもらえなかった女性は、自分に夢中な男性がいないことを思いしらされる。
少しでも気がある女性がいれば、花を贈るしか男性に選択肢はないのだ。
★共産圏の共同農場はなぜ成功しないのか。収穫した作物から自分の分は一部しかもらえないなら、自分の得る分以上に収穫するインセンティブはなくなる。これがスターリンや毛沢東時代の共同農場で生産が停滞し、大飢饉が起こった理由だ。
スターリンや毛沢東がゲームの理論を理解さえしていれば、何百万という犠牲を出さずにすんだはずだと。
多くのケースが出ているので、もし自分の仕事などで関係のあるケースがあれば役に立つと思う。参考になる本だった。
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