2010年11月20日

祝! ミッションコンプリート! はやぶさの大冒険 山根一眞さんのレポート

2010年11月20日追記

はやぶさのイオンエンジンを開発したNECが特別サイトで、はやぶさに関する情報を公開している。

NEC hayabusa







その中にはイオンエンジンの写真もある。

ion engine3










ion engine







ion engine2





出典:いずれもNEC チーム「はやぶさ」の挑戦 原出典:JAXA

NECの企業広告サイトだが、NHKの「プロジェクト X」のような仕立てで、参考になる話がいくつも紹介されているので、はやぶさについて詳しく知りたい人はNECの特設サイトをチェックすることをおすすめする。


2010年11月17日追記

先週山根一眞さんの「はやぶさの大冒険」のあらすじを掲載したが、はやぶさが持ち帰った粒子はイトカワのものであることが判明した。

イトカワ微粒子






出典:JAXA

JAXAは11月16日に記者会見し、この本でもいつも冷静と紹介されている責任者の川口さんが大変感激しているのが印象的だった。

打ち上げ当初、すべて成功したら「500点満点」と発言したことが引用され、「500点満点の成果」と報道されている

500点満点というのは聞いたことがないが、いずれにしても”mission complete"であることは間違いない。

以下のあらすじでも紹介している通り、、「東京から2万キロ離れたブラジルのサンパウロの空を飛んでいる体長5ミリの虫に弾丸を命中させるようなもの」で、なおかつイトカワの粒子を無事持ち帰ったことは、たしかに500点満点といってもよいと思う。

山根さんの本もアマゾンの売り上げランキングで、なんと72位に入っている。はやぶさ関係の本がいくつも出ている中で、ダントツの人気だ。

やはり7年間もかけてしっかりと取材した本は他とは違うことが、手に取ってみると消費者にもわかるのだろう。

イトカワ粒子確認を祝って、山根さんの本のあらすじを再度掲載する。


2010年11月12日初掲:

小惑星探査機 はやぶさの大冒険小惑星探査機 はやぶさの大冒険
著者:山根 一眞
マガジンハウス(2010-07-29)
販売元:Amazon.co.jp
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メタルカラーの時代などの作品で知られるノンフィクションライターの山根一眞(かずま)さんが、小惑星探査衛星のはやぶさを打ち上げ前からフォローして書いたレポート。

メタルカラーの時代〈1〉 (小学館文庫)メタルカラーの時代〈1〉 (小学館文庫)
著者:山根 一眞
小学館(1997-12)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

はやぶさが7年間の宇宙飛行を終えて地球に帰還して、一躍注目され、いくつか本が出版されたが、その中でも打ち上げ前からフォローしている山根さんの本は際立っている。

この本を読むとはやぶさ(工学実験探査機)がどうして構想されたか、その目的は何か、はやぶさの構造、そしてはやぶさの7年間の飛行などがわかる。JAXAのホームページではやぶさの写真やイトカワの写真が紹介されているので、是非チェックしてほしい。

はやぶさの宇宙旅行の要点を整理しておく:

★はやぶさの目的:約46億年前に出来たといわれている太陽系の起源を知るため。

大きな惑星では太陽系が出来た頃の物質は中心に集まり、高温にさらされ変成している。また物理的に取り出せないので、できるだけ小さい小惑星の地表の物質を分析することを狙った。

★はやぶさが目ざした小惑星は、日本の宇宙工学の父、糸川英夫博士にちなんで「イトカワ」と命名された。イトカワは直径500メートルのラッコのような形状をした小惑星だ。小惑星は約27万個が発見されている。小惑星の直径は最大900キロメートルから、イトカワのような数百メートルのものまである。

★テレビチャンピオンのラーメン王の佐々木晶現国立天文台教授は、隕石研究家で、はやぶさチームの関係者だった。

ラーメンを味わいつくす (光文社新書)ラーメンを味わいつくす (光文社新書)
著者:佐々木 晶
光文社(2002-01)
販売元:Amazon.co.jp
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★糸川英夫博士は戦前、陸軍戦闘機「隼」の開発にも従事したので、それゆえ探査機は「はやぶさ」と命名されたという。

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出典:以下、別注ない限りWikipedia

★小惑星は時速10万キロで太陽の周りを周回しており、それに着陸するためには、はやぶさも2年間掛けて時速10万キロにする必要がある。

★はやぶさを小惑星に着陸させるのは、「東京から2万キロ離れたブラジルのサンパウロの空を飛んでいる体長5ミリの虫に弾丸を命中させるようなもの」だという。

★はやぶさと交信するのは、長野県佐久市にある臼田宇宙空間観測所の直径64メートル、重量1,980トンという巨大なパラボラアンテナだ。世界で6番目に大きいパラボラアンテナだという。このアンテナは元々ハレー彗星を観測することを想定して建設された。

450px-KICX0248











★イトカワに近づくとはやぶさとの通信は片道16分かかり、しかもイオンエンジン点火中は、通信速度が8bpsしかないので、はやぶさは自分で位置や速度を測り、自律的に飛行する機能が織り込まれている。これははやぶさの先行機、火星探査機「のぞみ」で通信が途絶えて失敗した経験に基づくものだ。

★はやぶさの主動力は直径15センチくらいの大きさのイオンエンジン。2.6KW(地球の位置の出力)の太陽パネルで電気を起こし、キセノンガスを燃料にする。キセノンガスに電子レンジと同じマイクロ波を照射してキセノンイオンを発生させる。

構造は次の図の通りだ。キセノンイオンがマイナス電極に当たると、電極がすぐに消耗してしまうので、イオンの中和器で電極の消耗を防ぐ技術がノウハウだ。

イオンエンジン












出典:本書58ページ

★キセノンイオンの放出エネルギーの反作用で推力が得られるが、イオンエンジンの推力は1グラム程度。わずか1円玉の重さだ。宇宙の真空だから有効となる動力源だ。

★はやぶさを太陽の周回軌道に乗せるためには、地球のそばを通過して、地球の引力を利用するスウィングバイを利用した。これは惑星探査機ボイジャーなどが使ってきた加速法だ。

★007のゴールデンアイにも登場したプエルトリコにある世界最大のパラボラアンテナで、直径305メートルのアレシボ天文台がイトカワの観測データを提供してくれた。

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★はやぶさには、何か異常があったときは、パソコンのように「セーフホールドモード」という観測を中断し、探査機の安全を守る機能がある。

★小惑星のサンプル回収はイトカワを小惑星に接近させ、サンプルホーンだけ接地させて、弾を撃ち込み、舞い上がったかけらを回収する方法だった。

800px-Hayabusa_hover






★はやぶさの動力はイオンエンジンだが、姿勢を保つには3つのリアクションホイールという円盤を回転させて、その遠心力を使う動力と、12基の化学推進エンジンという化学反応で姿勢を変えたり、微調整を行う動力がある。

★はやぶさは2005年11月にイトカワに接地したが、その直後通信が途絶えたので、イトカワに30分も接地したままでいた。「セーフモード」になっていたため、サンプルホーンから実際には金属弾が発射されず、接地で舞い上がったかけらを吸い込んで回収できたかどうか現在解析中だ。

★はやぶさの帰還途上で、燃料モレが発見され、化学推進エンジンは燃料切れで使えなくなり、通信も46日間途絶えた。3基のリアクションホィールのうち1基しか動かず、化学推進エンジンもなかった。イオンエンジンも次第に調子が悪くなり、最後は1基しか動かなくなった。イオンエンジンを使うと燃料切れが心配となるので、太陽の輻射圧を利用してはやぶさの姿勢を変えた。苦肉の策だ。

★それでもはやぶさはイオンエンジン1基という満身創痍の状態でなんとか地球の大気圏に再突入し、予定通りオーストラリア西部のウーメラの砂漠地帯でイトカワのちりを回収したはずのカプセルで地球に帰還した。

山根一眞さんはウーメラ砂漠まで行ってはやぶさから回収したカプセルも見ている。

はやぶさを打ち上げ前から7年間にわたって取材してきたジャーナリストらしく、有終の美というところだ。

はやぶさ関係は他にも本が出ているが、7年間という歳月をかけた取材なだけに、レポーターの山根さん自身が理解して書いているので、技術的な説明もしろうとにわかりやすい。


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Posted by yaori at 10:47│Comments(1)TrackBack(0) 趣味・生活に役立つ情報 | ノンフィクション

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Posted by 智太郎 at 2010年11月12日 10:03