2010年11月29日

「0円」で億を稼ぐ あのベストセラー「Free」より先にゼロ円に注目した西川りゅうじんさんの本

「0円」で億を稼ぐ! 「タダ」よりすごいビジネスはない「0円」で億を稼ぐ! 「タダ」よりすごいビジネスはない
著者:西川 りゅうじん
マガジンハウス(2008-07-24)
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このブログでも紹介したアメリカのベストセラー「Free」より1年も先にゼロ円のビジネスモデルを提唱した天才マーケッター西川りゅうじんさんの本。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
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先日、西川さんの講演を会社で聴いたが、大変わかりやすく、参考になる内容だった。

西川さんとは、内田朝陽君のお父さんが経営する店に30年間通い続けた仲だったことが最近わかったことは、以前書いた通りだ。

この本では消費者からはお金は取らないが、高品質の商品やサービスを提供し、広告や付随取引で利益を上げる様々なビジネスモデルを紹介している。


ゼロ円ビジネス

たとえばリクルートの「R25]や「L25」。配布される木曜日でさえ主要駅のスタンドには残っていない。普通の雑誌と変わらない記事の質と紙質の良さ。とても無料誌とは思えないクオリティの高さだ。

「R25」は配布数60万部。全体で約50ページのうち、半分が広告だが、広告と気づかせない記事中の広告が多く、編集の技法で広告を盛り込んでいる。

西川さんが関係者から聞いたところによると、R25は約20ページ分の広告で、5,000万円近く利益が上がるという。週刊だから1ヶ月で2億円を稼ぐゼロ円商売だ。

民放テレビもラジオも古くからあるゼロ円ビジネスの一つで、コマーシャルやインフォマーシャルといった広告収入で運営している。ゼロ円ビジネスに成功すると、みんなが得するビジネスモデルがつくれるという良い例だ。

ちなみに最近、寮委員の後輩の日テレの人と話す機会があったが、一時マス広告はダメだといわれて、テレビ局各社の収益が激減したことがあったが、今はテレビ広告の効果が見直され、いわゆる冠スポンサー枠は依然として悪いが、スポット広告枠は売れすぎで、枠がない状態だと言っていた。

特に携帯電話とケータイゲーム会社が積極的にテレビCMを打っており、飲料、車、食品、日用品などの従来からのナショナルスポンサーに加わってスポット広告枠の取り合いになっているのだと。

ゼロ円ビジネスは江戸時代からあり、三越の前身の三井越後屋は、「振る舞い傘」と呼ばれるのれんのマークを書いた傘を雨の日に客にタダで配っていた。

ゼロ円ならライバルに勝てるし、本来なら興味を示さない人も客にしてしまう。そしてさらに充実したサービスを求めようとする人が金を払う客になるのだ。

まさにモバゲー、グリーのビジネスモデルだ。テレビでさかんにCMをやっているモバゲーやグリーは「無料」であることを宣伝しているが、ゲームにハマり、より強い武器などが欲しくなると有料アイテムを買うようになり、それで大もうけしているという。


ゼロ円ビジネスの注意点

しかしタダ飯客だからといって、店側がぞんざいに扱うと、せっかくのビジネスモデルが台無しになる。西川さんは「タダ飯客をバカにするとゼロ円に泣く」と表現している。

たとえ最初はタダ飯でも、次からは上得意になる可能性があることを忘れてはならない。成功し続けている料亭の女将やクラブのママは、こういったところがしっかり出来ているのだと。

初めてのお客に対して「どなたのご紹介ですか?」と聞くのも忘れてはならない。

新しもの好き、移り気をネオフィリアというそうだが、人間もネオフィリア的な気質を持っている。ゼロ円だからといっても、新しい工夫が欠かせないのだ。


入りやすいショールーム

外国車のショールームは高いものを買わされると敬遠して、人があまり入っていない。しかし、ゆったりくつろげる空間を用意して、コーヒーや紅茶がすぐ飲め、入りやすい雰囲気をつくれば、近所の主婦が集まり、結果的に旦那に高い車を買わせられるのだ。

このショールーム接客法は、このブログでも紹介した現横浜市長の林文子さんの「一生懸命って素敵なこと」という本でも書いてあった。林さんはこの接客法と気配りでトップセールスになれたのだ。


バリュー、バリュー、バリュー

タダだからといって手を抜いてはいけない。タダだからこそ、バリューが大事なのだ。西川さんは「バリュー、バリュー、バリュー」と3回唱えろと言っている。

ビジネスの基本は、「失客」(離反客)を抑え、「留客」(継続客)を増やすことにつきる。リピーターを増やすのだ。だからゼロ円とはいえ、手を抜いてはならない。

西川さんは再春館製薬のドモホルンリンクルのサンプルを例に挙げている。たとえサンプルでも手を抜かないのだ。

「ブランド」とはBurntから来た言葉で、「焼き印」が元々の意味だという。ブランドは扱う人も含めて「燃えて」いなければならないし、フレッシュでなければならない。「オゴリ」と「マンネリ」は禁物だ。


りゅうじん式方程式「3つのワン」

先日の講演でもわかりやすく説明されていたが、西川さんはゼロ円で億を稼ぐりゅうじん流方程式を紹介している。それは「3つのワン」、つまり:

1.オンリーワン:ほかにはない核となる競争力を持つ
2.ワン・トゥ・ワン:一人一人の客を大切にする
3.ワンス・ア・デー:日々新たな気持ちで一日にひとつ変化を起こす

ゼロ円で億を稼ぐためには、常に気持ちをリセットして、新たな変化を起こさなければならない。ゼロ円ビジネスは感動ビジネスなのだ。

りゅうじん流方程式













出典:本書123ページ

ロングセラーのコカコーラもミッキーマウスもポカリスウェットもグリコもビスコも、変わらないようでいて常に変わっているのだと。

生物学者の福岡伸一青山学院大学教授のベストセラー「生物と無生物のあいだ」に出てくる「動的均衡」を思い出す。生物は外見上は同じに見えても、細胞はたえず入れ替わっているのだ。

西川さんはデパートなどでのドライフルーツの試食販売の知人の話を紹介している。その人の目標は、一人のお客に30種類以上ある商品全部を食べて貰うことだという。食べて貰いながら、それぞれの効能を説明すると、お客は恩に感じて、なにがしら買ってくれるのだと。ゼロ円ビジネスの一つのお手本である。


ゼロ円ビジネスモデル

ゼロ円ビジネスは大きく分けて次の3つのパターンに分類できる。

1.ギフト方式
2.グロス方式
3.3点方式(CMのスポンサーなど)

この本では、それぞれについて具体例を多く紹介しており、参考になる。

たとえばギフト方式は、マクドナルドの無料招待券や、サンプル・ラボの試供品、ドモホルンリンクルのサンプル。ユニチャームのおむつサンプルなどがある。

満足感を与え、リピート客を増やす戦略だ。

こんなモノがタダ!?という例では、北海道標津郡標津町では、契約から3年以内に建築を完了するという条件で、400-485平米の土地を無料で貸与している例を紹介している。

グロス方式では、任天堂のDSやWIIなどのゲーム機のゲームソフト無料ダウンロードや、映画の試写会、無料シャトルバス、マンガ喫茶のマンガ無料などを紹介している。

3点方式では広告ビジネスが代表的だ。グーグル、スカイプ、R25、青空文庫などインターネットサービスでは無料の方が多い。グーグルはインターネット広告モデルの筆頭。スカイプは全世界で3億人ユーザーがいるが、有料サービスを使っている10%の顧客からの収入で全体のビジネスを運営している。

昔の名作が無料でダウンロードできる青空文庫も無料サービスだ。トヨタ財団、マイクロソフト、アスキー、日立製作所、群馬インターネットなどの企業から助成金を得て活動している。

あのベストセラーになった「Free」より1年以上も前に「ゼロ円」ビジネスモデルの強さを紹介している。

さすが天才マーケッターの西川さんだ。読みやすく参考になる事例が満載の本である。


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Posted by yaori at 12:40│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 西川りゅうじん

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