2010年11月19日

カイト・ランナー 全米ベストセラーのアフガン・アメリカン小説

カイト・ランナーカイト・ランナー
著者:カーレド ホッセイニ
アーティストハウスパブリッシャーズ(2006-03)
販売元:Amazon.co.jp
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1980年に家族と一緒に15歳でアフガニスタンからアメリカに亡命し、カリフォルニア大学サンフランシスコ分校(UCSF=医学部)を卒業し、現在医者としても活躍中のアフガン系アメリカ人、カーレド・ホッッセイニの2003年のデビュー作。

ハヤカワ文庫から出ている「君のためなら千回でも」という本も同じもので、文庫版が出たときに、この小説の中の有名なセリフを本のタイトルとしたものだ。

君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)君のためなら千回でも(上巻) (ハヤカワepi文庫)
著者:カーレド・ホッセイニ
早川書房(2007-12-19)
販売元:Amazon.co.jp
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売り出されてニューヨークタイムズのベストセラーリストに64週間もランクインし、全部で800万部を売り上げるベストセラーになったという。

たしか佐々木俊尚さんの本で絶賛されていたので、読んでみた。

非常に面白い小説だった。

映画化もされている。

君のためなら千回でも [DVD]君のためなら千回でも [DVD]
出演:ハリド・アブダラ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン(2010-02-26)
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この映画の予告編で全体のストーリーがざっと紹介されているので、是非見て欲しい。

例によって小説のあらすじは詳しく紹介しないが、これはアフガン・アメリカンの小説であり、アフガン小説ではない。

つまりアフガニスタンを舞台にしたアメリカ映画であって、1979年のソ連軍のアフガニスタン侵攻や、ソ連軍撤退後にアフガニスタンの実権を握ってやりたい放題のイスラム原理主義政治を行ったタリバンのことを描いた映画ではない。

そういった出来事は、単に時代的背景であり、いかにもアメリカ人が好みそうな、ハラハラ・ドキドキのサスペンスや、どんでん返しがあって、エンターテイメント作品として秀逸である。

ストーリーはアフガニスタン生まれの主人公アミールが、下男の息子ハッサンと兄弟同様に育つが、凧合戦の時にパシュトゥーン人とドイツ人の混血児のガキ大将に目を付けられてハッサンが襲われ、アミールは見て見ぬふりをしてしまう。

アフガニスタン人の多数を占めるパシュトゥーン人と、下男はハザラ人という人種的な対立や、パシュトゥーン人はスンニ派、ハザラ人はシーア派というイスラム宗派の違いもある。

それからはアミールは、ハッサンとは気まずくなり、結局ハッサンの家族はアミールの家を出て行く。

1979年のソ連のアフガニスタン侵攻とともに、アミールは父親と一緒にアメリカに亡命する。

アメリカで小説家となり、成功しはじめたアミールの元にパキスタンの知人から電話が入り、呼ばれてパキスタンに行くと、そこでハッサンがタリバンに殺され、一人息子のソーラブが孤児となったことを知らされる。

ハッサンに負い目があるアミールはアフガン入りすることを決意。そこからアメリカ人好みのアドベンチャーが始まる。

筆者はアフガニスタンは行ったことがないが、イランには仕事で2回行き、テヘラン、古都イスファファン、港町バンダルアッバスを訪問した。

筆者はペルシャ語の簡単な挨拶は覚えている。「神のご加護を!」という意味の「インシャラー」は中近東各国で同じなので、それはいいとして、英語の"How are you?"にあたる「ハリ・ショマ・フベー」がペルシャ語でもパシュトゥーン語でも同じなのに驚いた。

パシュトゥーン人とペルシャ人は人種的・言語的に共通するものが多いようだ。

筆者がイランを訪問したときは、1983年頃で、ちょうどイランーイラク戦争の時だった。ソ連軍がアフガニスタンで戦っていた時期でもある。

ソ連はミル24ヘリコプターなど、最新兵器をアフガニスタンに持ち込んだ。

Mi-24D_Hind_Attack_Helicopter_(Berlin)




出典:以下別注ない限りWikipedia

映画ランボーで出てくるヘリコプターだ。



ムジャヒディン達は、軽武装ながらも、アメリカから援助されたスティンガーミサイルのおかげで、多数のミル24を打ち落とし、結局ソ連軍は安心してヘリコプターや飛行機を飛ばすことすらできなくなった。

800px-FIM-92_Stinger_USMC





結局ソ連は撤退し、ムジャヒディン達は勝利を収める。

Jamiat_e-Islami_in_Shultan_Valley_1987_with_Dashaka









勝ち誇ったムジャヒディン達は、今度はアメリカから援助された武器を使って、アフガニスタンの住民を支配し、さらにオサマ・ビン・ラディンの率いるアルカイダは、アメリカに対して9.11テロ攻撃を仕掛ける。

そのタリバンが制圧するアフガニスタンが、この小説の後半部分の背景だ。

全体を通して凧(カイト)がアクセントになっている。

よくできた小説だと思う。是非どちらかの本を手にとってみることをおすすめする。


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Posted by yaori at 02:02│Comments(0)TrackBack(0) 小説 | 政治・外交

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