
著者:武田 邦彦
幻冬舎(2008-05)
販売元:Amazon.co.jp
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「偽善」シリーズ本や、環境問題のウソというような題の本を多く出している元名古屋大学教授で現中部大学教授の武田邦彦さんの本。
アマゾンに出ている武田さんの主な本は次のようなものがある。

著者:武田 邦彦
幻冬舎(2009-11)
販売元:Amazon.co.jp
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著者:武田 邦彦
PHP研究所(2008-11-15)
販売元:Amazon.co.jp
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著者:武田 邦彦
産経新聞出版(2010-02-05)
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著者:武田 邦彦
洋泉社(2007-02)
販売元:Amazon.co.jp
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ちょっとエキセントリックすぎて、まともな学者なのか、マベリック(異端者、へそまがり)なのか判断がつかない。
ネットTVのピラニアTVで「現代のコペルニクス」というコーナーを持っているようだ。
いくら新書とはいえ、学者の本にしては、論拠があまりにも少ない。
まえがきには次のように書いてある。
「今回、可能な限り、確実な情報を整理しました。地球温暖化についてはIPCCという国際機関のデータを、毒物についてはその道の専門家の信頼できる論文を、そして海外のことについてはその国の新聞などをあたり、『本当に環境を守るためには』という視点から書いています」
どうも根拠が弱い。「その国の新聞」が正しいことをどうやって検証するのだろう。ウィキペディアにもむちゃくちゃ書かれており、自身のホームページで反論している。
この本はなか見、検索!には対応していないので、主なサブタイトルを紹介しておく。一般常識とかなりかけ離れていることがわかると思う。
第1章 エコな暮らしは本当にエコか?
★レジ袋を使わない → ただのエゴ
★割り箸を使わずマイ箸を持つ → ただのエゴ
★ハウス野菜、養殖魚を買わない → ただのエゴ
★温暖化はCO2削減で防げる → 防げない
★冷房28度Cの設定で温暖化防止 → 意味なし
★温暖化で世界は水浸しになる → ならない
第2章 こんな環境は危険?安全?
★ダイオキシンは有害だ → 危なくない
★狂牛病は恐ろしい → 危なくない
★生ゴミを堆肥にする → 危ない
★プラスチックをリサイクル → 危ない
★洗剤より石けんを使う → よくない
第3章 このリサイクルは地球に優しい?
★古紙のリサイクル → よくない
★牛乳パックのリサイクル → 意味なし
★ペットボトルのリサイクル → よくない
★アルミ缶のリサイクル → 地球に優しい
★空きビンのリサイクル → よくない
★食品トレイのリサイクル → よくない
★ゴミの分別 → 意味なし
第4章 本当に「環境にいい生活」とは何か
第1節 もの作りの心を失った日本人
★リサイクルより、物を大切に使う心を
★自治体と業者を野放しにしていいのか
第2節 幸之助精神を失う
★家電リサイクル、儲けのカラクリ
★国民は無駄金を払い、バカをみている
★廃棄物を途上国に売りつける日本
第3節 自然を大切にする心を失う
★自然を大事にする国は自国の農業も大切にしている
第4節 北風より太陽、物より心
★リデュース、リユース、リサイクルの3Rにだまされるな
およそ常識と異なる話ばかりなので、混乱すると思う。武田さんの主な主張をいくつか紹介しておく。
レジ袋削減はスーパーのエゴ
たとえばレジ袋は、石油の不必要な成分を活用した優れものなので、レジ袋を追放すると石油の消費量が増えるという。買い物袋、専用ゴミ袋が必要だからだと。
レジ袋削減とはスーパーの売り上げ増加のために「環境」という印籠(いんろう)を使ったものだと。
ダイオキシンは無害?
最も混乱するのはダイオキシンは人間にとってはほぼ無害という説だ。
東大医学部の和田收教授の2001年1月の「学士会報」に載っていた「ダイオキシンはヒトの猛毒で最強の発ガン物質か」という論文を論拠にしている。
筆者は学士会報もとっているが、学士会会報に載ったからといって、それが学会の定説とは限らない。
これほど一般常識に反する異論を唱えるなら、もっと論拠を挙げるべきだと思う。
和田教授の論文は「ヒトはモルモットのようなダイオキシン感受性動物ではないので、”環境中ダイオキシン”では一般の人にダイオキシンによる健康障害が発生する可能性はほとんどない」というものだ。
これは環境中に排出される濃度のダイオキシンのことであり、ダイオキシン自体が無害というわけではない。
あまりにも危険な「ダイオキシン=無害説」ではないかと思える。
ウシではない狂牛病?
日本には一人もウシによる狂牛病の人はいないが、「ウシではない狂牛病」に罹っている人が400人以上いるという。
肉骨粉はそれまで捨てていたウシの骨格や脳などを飼料にするために、徹底的に焼いて乾燥させていた。
しかし次第に生焼けの状態で飼料にするケースが出てきて、結果的に共食い、かつ子供が親の肉を食うという事態となって狂牛病の原因となったと武田さんは語る。
筆者はアルゼンチンに30年ほど前に研修生として駐在していたが、当時日本はアルゼンチンからMBM(Meat Bone Meal)というのを輸入していた。これがまさに肉骨粉だった。
武田さんは狂牛病は危なくないと語る。「ウシではない狂牛病」とはクロイツフェルト・ヤコブ病のことだと思うが、よくわからない。
ちなみに狂牛病のリスクは現在はおさまっている。
あらすじを紹介する当ブログが、書評ブログのような内容になってしまった。
本や新聞に書いてあるからといって、正しいとは限らない。論拠をもっと示してほしい本である。
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