2011年02月17日

ヒトはどうして死ぬのか ガンにならないために知っておくべきこと

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)
著者:田沼 靖一
幻冬舎(2010-07)
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東京理科大学薬学部教授でゲノム創薬研究センター長の田沼 靖一さんの細胞死の研究とゲノム創薬の最新の動きのレポート。

このブログで紹介したベストセラー「生物と無生物のあいだ」の著者、福岡伸一教授が「動的平衡」と呼ぶ通り、人間の体の細胞は常に新しいものと入れ替わり、古い細胞は死ぬが個体としては生き続ける。しかしガン細胞が増殖すると、ガン細胞は生き残るが、個体は死ぬ。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)
著者:福岡 伸一
講談社(2007-05-18)
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この本では細胞の新陳代謝、「アポトーシス」と人の寿命との関係を研究し、ガンやAIDS,アルツハイマー病の新薬を開発しようとするゲノム創薬の最先端を紹介している。テーラーメイド創薬という誰でも興味のあるテーマについて最新の発見を紹介している。

細胞には2つの死に方がある。ひとつは膨らみ破裂するネフローシス。打撲などの外部刺激を受けたり、ウィルスなどに感染した細胞はネフローシスを起こす。たとえば鳥インフルエンザに感染したニワトリの体は溶けてなくなってしまうのを、テレビなどで見たことのある人も多いと思う。

もうひとつは1973年にイギリスの病理学者に命名されたアポトーシス。細胞が委縮し、細かいブドウの粒のようになってしまう。これは細胞の自死で、外部からの刺激はない。それゆえ「プログラムされた細胞の死」と呼べるのである。

アポトーシスは生物の体の器官を形作る際にも大きな役割を果たす。たとえば手の指が分かれること、水鳥の足に水かきがあることなど、すべてアポトーシスによる成形である。イモムシがサナギとなり蝶となるのもアポトーシスのおかげである。

生物は「性」によって遺伝子組み換えが可能となり、変化に強い生物のみ生き残ることができる体制が取れたが、逆に不適合な遺伝子も排除する必要性が生じた。それがアポトーシスであるという。

人間の体は毎日ステーキ一枚分、200グラムくらいの細胞が分裂して常に入れ替わっているが、細胞分裂の限界は50~60回である。これが人間の寿命の最大値を決定し、それは約120歳だという。一方、脳の神経細胞や心臓の心筋細胞など、再生しない細胞もある。これらはいずれ寿命がきて死んでいき、再生することはない。

個体の死が必要な理由は、古くなってキズを負った細胞をそのまま増殖させると、古い遺伝子が残り、結局生物は生き延びられなくなるからではないかと。

日本では3人に2人はガンに罹り、がん患者のうち3人に一人は亡くなっている。細胞がキズを負うことで、ガン化し、ガン細胞は死を忘れた不死の細胞だ。

そのガン細胞を退治するのが免疫細胞である。喫煙や紫外線、生活習慣病などで免疫細胞の働きが弱まると、ガンが無限に増殖し、やがては人の器官の機能が失われ、人は死ぬ。

ひとつの免疫細胞はひとつの抗体しか作れないが、遺伝子組み換えにより、異種の免疫細胞が誕生し、異種の抗体をつくる。免疫細胞における遺伝子組み換えの仕組みを解明したのが、1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士である。

精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)
著者:立花 隆
文藝春秋(1993-10)
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免疫細胞は不良品や、不要品も生成されることから、これらの在庫処分を行うのが、自死メカニズムであるアポトーシスだ。

ガン細胞に死のシグナルを与える物質がゲノム創薬で研究されている。ガン細胞の遺伝子を研究し、その遺伝子に効く化学物質を調合し、ガン細胞に自死を起こさせるのだ。

いままでの製薬研究では、一種類の薬しか開発できなかった。だから人ごとに遺伝子が異なるので薬が効く人がいたり、副作用がある人もいた。ところがゲノム創薬であれば、個人別に効く薬を調合できる。これがテーラーメイド創薬である。

テーラーメイド創薬では、タンパク質の構造情報からコンピューターシミュレーションで化合物を設計する。

日本では、生物、情報工学などと専門分野が分かれている関係で、まだこのコンピューターシミュレーションがつくれるソフト技術者が育っていないという。

最後に田沼さんは、「人間が生きていく意味は、社会のため、他者のために存在し、次世代に何かを遺していくことにある」と語り、これが自然の摂理であると説く。

リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を想起させる結論である。

利己的な遺伝子 <増補新装版>利己的な遺伝子 <増補新装版>
著者:リチャード・ドーキンス
紀伊國屋書店(2006-05-01)
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先日筆者のラグビー部の先輩がガンで亡くなった。まだ62歳だった。この本を読んで何で人がガンで死ぬのか、あらためてよくわかった。

実は筆者は子供の時、夜驚症だった。寝ていて自分の目の前が黒ですべて塗りつぶされてしまうというのが怖くて泣きだして、気が付いたら大人に抱かれていたという記憶がある。ガンが進行するというのは、ちょうどそれと同じようなイメージなのだろう。

ガン細胞は遺伝子のコピーミスで毎日5,000個ほど誕生しているが、免疫細胞が退治しているので、ガンにならないという。今更ながら健康診断や定期的人間ドックの重要性を認識した。


タイトルの通り、人はどうして死ぬのかを再確認する事は重要だ。一読の価値がある本だと思う。


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Posted by yaori at 00:52│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション | 自然科学

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