2011年02月04日

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 橘玲さんの最新作

残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法
著者:橘玲
幻冬舎(2010-09-28)
販売元:Amazon.co.jp
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途上国債券投資やパーペチュアル・トラベラー(永遠の旅人 どの国にも税金を払わない)など、ユニークな話題を提供しており、、このブログでもいくつかの作品を紹介している作家橘玲(たちばなあきら)さんの最新作。

橘さんの作品は、「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」に大変感心して以来ほぼ読んでいる。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門
著者:橘 玲
幻冬舎(2002-11-26)
販売元:Amazon.co.jp
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「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」は累計で30万部売れたベストセラーだ。

「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」のあらすじはえらく短いが、2005年1月は筆者がブログを書き始めたばかりの時なので勘弁いただきたい。

日本ではプラチナチケットだったワールドカップのチケットを海外で買って悠々日韓ワールドカップを観戦するという発想の転換には、驚かされたものだ。


勝間・香山論争

「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」では最初に勝間和代さんと香山リカさんの論戦を取り上げる。

筆者も勝間さんが登場した時は、「10倍シリーズ」など何冊か読んだが、そのうち飽きてきて、今はまったく手に取ることがない。「賞味期限切れ」だと感じている人は多いと思うが、それでも朝日新聞の土曜版に「勝間和代の人生を変える法則」というコラム連載を続けているのは立派というほかない。

橘さんは勝間さん自身が原点と呼ぶ「勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド」を取り上げている。

勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド (ディスカヴァー携書 022)勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド (ディスカヴァー携書 022)
著者:勝間 和代
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2008-03-01)
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勝間さんの主張は「努力をするとより幸せになれる」に尽きる。だから勝間さんは「自己啓発の女王」なのだと。


「やればできる」VS「やってもできない」

一方、精神科医香山リカさんは「努力したくないひとがいてもいいじゃないか」という立場だ。

これに対する勝間さんの反論は「やればできる」で、そのために本を一冊書いている。

やればできる―まわりの人と夢をかなえあう4つの力やればできる―まわりの人と夢をかなえあう4つの力
著者:勝間 和代
ダイヤモンド社(2009-12-04)
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結局勝間ー香山論争は議論がかみ合わないままだという。

勝間さん、努力で幸せになれますか勝間さん、努力で幸せになれますか
著者:勝間 和代
朝日新聞出版(2010-01-08)
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橘さんは、”こころは遺伝する”、”知能の70パーセントは遺伝で決まる”というような、一つ間違うと差別主義者としてバッシングされるような主張を注意深く展開し、「やってもできない」という事実を認め、そのうえでどのように生きていくのかの「成功哲学」をつくっていくべきだと主張する。

この議論には筆者も感じるところがある。


努力できることが才能である

というのは松井秀喜の「不動心」で紹介されていた話で、松井秀喜が父親から教わったモットーに、福井県加賀市で晩年を過ごした硲(はざま)伊之介という洋画家、陶芸家の「努力できることが才能である」という言葉があるのだ。

不動心 (新潮新書)不動心 (新潮新書)
著者:松井 秀喜
新潮社(2007-02-16)
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まったくその通りだと思う。

たとえば毎日電車で通勤していて、ほとんどの人が座ると寝るか、ゲーム機や携帯電話でゲームするかで、車両の中のせいぜい1-2割くらいの人しか本を読んでいない。

電車の中で寸暇を惜しんで勉強する「努力できる人」は、向上心があるので放っておいても成長するだろう。

だが残りの8割の人に「やればできる。通勤時間で本を読め!」と鼓舞しても、たぶんのれんに腕押しだろう。「ほっといてくれ。おまえのしったこっちゃない」と言われるのがオチだ。

だから勝間流の「やればできる」ではなく、香山さんや橘さんが言う「やってもできない」を基にした成功哲学という考えには納得してしまうのだ。


カーネギーの本だって読んでいる人は少数派

この本でもカーネギーの「道は開ける」と「人を動かす」が、自己啓発や自己コントロールの代表作として紹介されている。

道は開ける 新装版道は開ける 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10)
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人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
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以下は橘さんの議論に触発された筆者の意見だ。

カーネギーの本は、世界でベストセラーとなっており、たぶん全世界で数千万部売れていることだろう。

日本でもシリーズ合計で1千万部近くは売れていると思うが、それでも1億3千万人の1千万である。

知人にプレゼントするために一人で何冊も買っている筆者のような人もいると思うので、図書館で借りて読んだ人を入れても読者としては1千万人もいないかもしれない。

このブログの「カーネギー」の項目で、様々な人がカーネギーの本から多くを学んでいることを紹介しているが、これだけ多くの人が推奨していても読む人は少数派なのだ。

「道をひらく」で松下幸之助は「向上心のある人は必ず成功するな」と言っている。向上心のある人は少数派だから頭角を現し成功するのだ。

道をひらく道をひらく
著者:松下 幸之助
PHP研究所(1968-05)
販売元:Amazon.co.jp
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この本の目次

上記の論点がこの本の肝で、その他の点については目次をみれば、大体感じがわかると思う。ここをクリックしてアマゾンのなか見!検索で目次をみてほしい。

この本の結論の「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」とは何かは、目次をみれば大体わかると思う。「好きな仕事で、自分で事業をする」がキーワードだ。

「好きを仕事に」は決して楽ではなく、残酷な世界である。これについては、映画「アンヴィル!夢をあきらめきれない男たち」という50過ぎの売れないロックンローラーのドキュメンタリー映画を紹介している。
 


アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~ [DVD]アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~ [DVD]
出演:アンヴィル
SMJ(SME)(D)(2010-04-14)
販売元:Amazon.co.jp
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「好きな仕事」で儲けるのは至難の業だ。

橘さんは、前作「貧乏はお金持ち」を参考にして欲しいというが、「好きな仕事」で稼ぐ方法が「貧乏はお金持ち」や「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」に書いてあるわけではない。書いてあるのはヒントだけである。

貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する貧乏はお金持ち──「雇われない生き方」で格差社会を逆転する
著者:橘 玲
講談社(2009-06-04)
販売元:Amazon.co.jp
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あくまで自己解決で、それゆえ世の中に成功者は少ないのだ。


最後に参考になった点を2点紹介しておく。

★能力主義が徹底している外資系の会社に応募するときには、履歴書には学歴、資格、職歴しか書かないという。これが世界の潮流となった「道徳的に正しい」能力主義の結果であり、それゆえ「自己啓発の女王」勝間和代が必然的に生まれたのだと。

★この本のなかで、「影響力の武器」というチャルディーニの本が紹介されている。面白そうな本なので、今度読んであらすじを紹介する。

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
著者:ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房(2007-09-14)
販売元:Amazon.co.jp
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あまり目新しい情報はないが、「やればできる」、「やってもできない」の議論は考えさせられる点が多く、参考になった。


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Posted by yaori at 00:57│Comments(1)TrackBack(0) ビジネス | 橘玲

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この記事へのコメント
影響力の武器は、古い書籍ですが、今でもマーケティングにおいてもバイブル的な本ですよね。私も机のそばに常においてます。
Posted by ベンジャミンフランクリン大好き人間 at 2013年04月18日 23:10