2011年04月26日

えこひいきされる技術 絶滅危惧種?の伝説の編集者・島地勝彦さんの本

えこひいきされる技術 (講談社プラスアルファ新書)えこひいきされる技術 (講談社プラスアルファ新書)
著者:島地 勝彦
講談社(2009-11-20)
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伝説の編集者で、集英社の「週刊プレイボーイ」、{PLAYBOY」「Bart」などの編集長を歴任した島地勝彦さんの本。

以前紹介した中島孝志さんの「本は絶対、一人で読むな!」に紹介されていたので、読んでみた。


柴田錬三郎・今東光

島地さんは編集者になりたての時に「眠狂四郎」を生み出した柴田錬三郎さんの担当になった。

眠狂四郎無頼控 (1) (新潮文庫)眠狂四郎無頼控 (1) (新潮文庫)
著者:柴田 錬三郎
新潮社(1960-08)
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われら九人の戦鬼(上) (集英社文庫)われら九人の戦鬼(上) (集英社文庫)
著者:柴田 錬三郎
集英社(2005-07-20)
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柴田蓮三郎さんに”えこひいき”され、集英社でも小説を書いて貰った。それから今東光さんに”えこひいき”されて「週刊プレイボーイ」で「極道辻説法」というコラムを書いてもらった。

極道辻説法 (集英社文庫)
著者:今 東光
集英社(1983-06)
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毒舌 身の上相談 (集英社文庫)毒舌 身の上相談 (集英社文庫)
著者:今 東光
集英社(1994-05-20)
販売元:Amazon.co.jp
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開高健

後でまるで双子といわれた開高健さんに「週刊プレイボーイ」の人生相談コーナーを頼んだ時は、「こんなに好きなんです」と叫び、開高健さんを押し倒し、馬乗りになって接吻した。

口に舌を入れてのど仏をなめ、「おおーちょっと、シ、シマジ君、強姦はいかん。強姦はー」ということで「人生相談」のコーナーを書いて貰ったという。

プレイボーイの人生相談 1966-2006プレイボーイの人生相談 1966-2006
集英社(2006-10-16)
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開高健さんとは「水の上を歩く」という共著まで出した。

水の上を歩く? 酒場でジョーク十番勝負 (集英社文庫)
著者:開高 健
集英社(1993-01-20)
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柴田錬三郎さんは、開高健さんの「ロマネ・コンティ・一九三五年」を読んで、「あいつは文章がうまいねえ」と評していたという。

ロマネ・コンティ・一九三五年―六つの短篇小説 (文春文庫)ロマネ・コンティ・一九三五年―六つの短篇小説 (文春文庫)
著者:開高 健
文藝春秋(2009-12-04)
販売元:Amazon.co.jp
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開高健さんには、島地さんが「週刊プレイボーイ」の編集長に昇格したときに、「編集者マグナカルタ」という文を貰ったという。その内容は次の通りだ。


編集者マグナカルタ9章

読め。
耳をたてろ。
眼をひらいたままで眠れ。
右足で一歩一歩歩きつつ
左足で飛べ。
トラブルを歓迎しろ。
遊べ。
飲め。
抱け、抱かれろ。
森羅万象に多情多恨たれ。

補遺一つ。異性に泣かされろ。

右の諸原則を毎食前食後、
欠かさず暗誦なさるべし。

御名御璽
開高健


島地さんはこの三人の人生相談をまとめた本も出している。

乗り移り人生相談 −柴田錬三郎・今東光・開高健、降臨!!乗り移り人生相談 −柴田錬三郎・今東光・開高健、降臨!!
著者:島地 勝彦
講談社(2010-04-02)
販売元:Amazon.co.jp
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塩野七生

ローマ在住の塩野七生さんには、心のこもったみやげもの攻勢で、塩野さんに”えこひいき”され、新潮社の牙城だった塩野文学の入門書ともいえる「痛快!ローマ学」を書いて貰った。

痛快!ローマ学 (痛快!シリーズ)痛快!ローマ学 (痛快!シリーズ)
著者:塩野 七生
集英社インターナショナル(2002-12-05)
販売元:Amazon.co.jp
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資生堂名誉会長の福原義春さん

読書家で知られる資生堂名誉会長福原義春さんにも”えこひいき”され、いろいろな本を教えて貰ったという。福原さんは「だから人は本を読む」という本を書いている。

だから人は本を読むだから人は本を読む
著者:福原 義春
東洋経済新報社(2009-09-11)
販売元:Amazon.co.jp
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福原さんの推薦する本に「世界の測量」という傑作があったという。

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語世界の測量 ガウスとフンボルトの物語
著者:ダニエル・ケールマン
三修社(2008-05-23)
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科学書のようなタイトルだが、植木屋のせがれの大数学者・ガウスと貴族出身の博物学者・フンボルトの交流を描いた物語だ。図書館で借りたので、今度あらすじを紹介する。


交渉は第一声のぶちかましが必要だ

「交渉は第一声のぶちかましが必要だ」という章では、ジャック・ダニエルのタイアップ広告のときに一緒になったコマーシャルカメラマンの大御所・操上和美さんのことを書いている。

島地さんが、テネシー州ナッシュビルに近いリンチバーグの蒸留所に操上さんと一緒に行ったとき、先方の広報担当に何が見たいか聞かれて、操上さんは「ジャック・ダニエルの墓が見たい」と言ったという。

ジャック・ダニエルは女にモテモテで一生独身で過ごした。死んだ後女達が墓場でかち合ってもケンカしないようにイスを二つ置くように遺言したそうだ。

その場所でコマーシャル写真を撮影したら、ちょうど雪が降ってきて最高の場面を撮れたという。ジャック・ダニエルのコマーシャルは覚えている。



リンチバーグのジャック・ダニエル醸造所には、筆者も行ったことがある。

リンチバーグはドライカウンティのため酒は売れないので、醸造所ではレモネードしか出なかったのが印象に残る。

女にモテモテという話はマユツバだと思う。というのはジャック・ダニエルは風采のあがらない小男だったからだ。

筆者もジャック・ダニエルが好きだが、島地さんはジャック・ダニエルを毎晩愛飲していたという。

「ジャック・ダニエルはよく飲んでいるか?」と広報の人に聞かれ、「朝、シャワーを浴びたあと、脇の下にジャック・ダニエルを付けるんだ。ヒゲを剃ったあとにもジャック・ダニエルを付ける。誕生日にはバスの中にジャック・ダニエルを数滴垂らすんだ」と言ったという。

広報の人はびっくりして、帰りに社長室にあったジャック・ダニエルの古い大きなボトルと、千坪の樫の木林まで貰ったという。


田中角栄元秘書の早坂茂三

田中角栄元秘書の早坂茂三さんの話も面白い。

田中角栄が亡くなった時に、田中真紀子は早坂茂三さんを葬儀場に入れなかったという。その早坂茂三さんに頼んで書いたもらった追悼文が紹介されているので、引用して紹介しておく。

「田中角栄が昭和9年3月15日、たった一人で東京にやってきた。15歳。吃音で対人赤面恐怖症の少年が越後から13時間かけて上野駅に着いた。

少年が上京するとき、母親ははなむけの十円札を少年の胴巻のなかにしのばせて送り出した。

そのころ角栄の姉さんの一人は、戦前の日本の女としてはもっとも辛い商売をやっていた。この姉さんが毎月おふくろにハトロン紙の封筒でお金を送ってきた。よれよれの一円札に糊を付けててこで真っ直ぐに伸ばして、丁寧に二つ折りにして半紙に包んで封筒のなかにいれた。

田中は54歳の若さで総理大臣になった人だけど、ある日総理官邸の天井の低い執務室で、その話をぼくにしてくれた。『あのときに姉がおふくろに送ってきた一円札を封筒から抜いて舐めてみたら、姉の涙で札が塩辛かっただろう』ーそういって、しばらくじっと窓の外を見つめていた。

田中角栄も無名の若者だった。角栄が若い人に色紙を書くとき、好んで書いた言葉がある。”末ついに海になるべき山水も、しばし木の葉の下をくぐるなり”」



絶滅危惧種の編集者

ノウハウ本のようなタイトルだが、内容はノウハウ本ではない。伝説の編集者・島地さんと作家とのディープなつきあい方がわかって面白い。

しかし、作家とこのようなつきあい方をする編集者は、もういないと思う。その意味では絶滅危惧種の編集者の本と言うべきなのかもしれない。


幻冬舎見城さんとの違い

蛇足ながら、筆者の感想を一言だけ付け加えると、編集者と作家の編集上のやりとりが紹介されていれば、もっと良かったと思う。

以前紹介した幻冬舎の見城社長の本にあった編集者のやりとりのあらすじを紹介しておく。

編集者という病い (集英社文庫)編集者という病い (集英社文庫)
著者:見城 徹
集英社(2009-03-19)
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「編集者は作者とギリギリの勝負を挑むが、創作しているのは作者である。

見城さんは日本一の偽物になろうと決めたという。

何百人という本物の表現者を相手に、偽物としての栄光を手にしようと誓ったのだと。編集者は自分が感動できて、それを世にしらしめたいと思うからやっていける。

見城さんが編集した作品は朱がやたらと入っていたという。

「こういうせりふを言う人は、こういうセックスはしません」とか、「赤く染めたカーリーヘアーの女が一服するときに吸うたばこはセブンスターじゃなくて、ハイライトじゃないでしょうか」とかいった具合だ。」


あるいは見城さんは、別の絶滅危惧種編集者なのかもしれない。

今回のあらすじは本の紹介ばかりで、まるでアフィリエイトサイトの様になって申し訳ない。いずれにせよ楽しく読める本である。


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Posted by yaori at 23:21│Comments(0)TrackBack(0) 趣味・生活に役立つ情報 | 成功哲学

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