2011年06月12日

塩野七生 痛快!ローマ学 「ローマ人の物語」総集編

痛快!ローマ学 (痛快!シリーズ)痛快!ローマ学 (痛快!シリーズ)
著者:塩野 七生
集英社インターナショナル(2002-12-05)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ローマから日本が見える (集英社文庫)ローマから日本が見える (集英社文庫)
著者:塩野 七生
集英社(2008-09-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

「ローマ人の物語」シリーズを書き続ける作家塩野七生さんの「ローマ人の物語」総集編。以前紹介した集英社インターナショナル社長の島地さんの「えこひいきされる技術」で紹介されていたので読んでみた。

えこひいきされる技術 (講談社プラスアルファ新書)えこひいきされる技術 (講談社プラスアルファ新書)
著者:島地 勝彦
講談社(2009-11-20)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

当初「痛快!ローマ学」がムック本で2002年に発売され、写真などの装丁を変えて「ローマから日本が見える」というタイトルで単行本と文庫本で出版されている。

違う本かと思って両方図書館で借りたが同じ本だった。図書館で借りたからよかったが、これがアマゾンで両方注文していたらガックリくるところだった。一つの原稿をタイトルを変えて、3回も出版するのは問題ではないかと思う。

実は筆者は塩野さんの作品はこのブログで紹介した「絵で見る十字軍物語」以外読んだことがない。あまりに大部すぎてどこから読んだらいいのかわからないので、手を付けていないというのが実情だ。

絵で見る十字軍物語絵で見る十字軍物語
著者:塩野 七生
新潮社(2010-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

その意味では食わず嫌いの人向けに最適な入門書・総集編だと思う。

この本に塩野さんの古代ギリシャ・ローマの指導者の通信簿が載っていて興味深い。

scanner060













出典:「痛快!ローマ学」201ページ

この通知簿の評価が高い人の「ローマ人の物語」を読めば良いと思う。

一番評価が高いのはカエサルと都市国家アテネの黄金時代を築いたギリシャのペリクレスだ。


ローマの強さ

ローマの強さは「敗者を同化する」点にあったと塩野さんは説く。ローマ帝国は次の5層構造でできており、これを歴史家アーノルド・トインビーは「政治建築の傑作」と呼んでいたという。

1.ローマ
2.ラテン同盟(ローマ市民権あり)
3.ムニチピア(地方自治体)ローマ市民権はない。しかし投票権、被選挙権を除けばローマ市民権と同等の権利あり。
4.ソーチと呼ばれる同盟国 ソーチの支配層にはローマ市民権取得を勧める
5.コローニア(植民地というよりは辺境の防御拠点)パリ、リヨン、ケルンなど

被征服国の国民をローマ人と同化することで、ローマ帝国は長く続いたのだ。

「すべての道はローマに通ず」ということで、帝国の道路を整備した。これは軍事的な理由もあった。戦争があれば、軍隊を迅速に移動するためだ。

scanner062





出典:「ローマから日本が見える」268−269ページ

この地図のローマ帝国の版図はカエサル時代に達成された。塩野さんはカエサルこそローマ帝国のグランド・デザインを書いた人物だと評価し、歴代の指導者の中でもベストに挙げている。「ローマ人の物語」でもカエサルのことを書くために2巻を費やしたという。

しかしカエサルはブルータス他の元老院の反対派に暗殺されてしまう。

Gerome_Death_of_Caesar




出典:Wikipedia

カエサルの遺言でその後を継いだのがオクタヴィアヌス、後のアウグストゥスだ。

アウグストゥスは自分から権力を望むというそぶりは一切見せず、元老院から権限を与えられて、最終的に様々な権限を自分に集中して皇帝の地位についた。塩野さんはアウグストゥスの皇帝の地位に就くまでの巧妙な深慮遠謀を説明していて面白い。

アウグストゥスはローマの税制をつくり、それが300年続いた。

次の表の通り、既に売上税や相続税が入っているとは驚きだ。

scanner063





出典:「痛快!ローマ学」157ページ

「奴隷解放税」は自由の身になった奴隷が自分の価値の5%を税金として収めるもので、無差別の奴隷解放で治安が悪化するのに歯止めを掛ける意図だったという。

塩野さんは日本人が「ローマ人の物語」を書く意義を、西洋のローマ史はキリスト教に影響されているからだと説く。日本人の方が宗教観なしに、欧米人よりずっと公平にローマ史を描けるのだと。

今後「ローマ人の物語」を読むに際して、基礎知識として役立つ本だった。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。




Posted by yaori at 00:29│Comments(0)TrackBack(0) 小説 | 自叙伝・人物伝

この記事へのトラックバックURL