シェア (共有)からビジネスを生みだす新戦略
著者:レイチェル・ボッツマン
日本放送出版協会(2010-12-16)
販売元:Amazon.co.jp
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以前紹介した「フリー」に続く独特な表紙のNHK出版協会による最新のインターネット本。
フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
販売元:Amazon.co.jp
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大量消費文化の終焉?
最初に太平洋ゴミベルトのことが書いてある。太平洋の真ん中には巨大な漂流ゴミがある。沿岸各国から流れ出たゴミが太平洋の真ん中で漂流しているのだ。
アニー・レオナードは製造・流通システムから送り出されるすべての材料のうち、6ヶ月後に北米で使われているモノはわずか1%だと"The Story of Stuff"という本で指摘している。残りの99%はいずれゴミとなるのだ。
The Story of Stuff: How Our Obsession with Stuff is Trashing the Planet, Our Communities, and Our Health - and a Vision for Change
著者:Anne Leonard
Constable(2010-05-27)
販売元:Amazon.co.jp
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人々の消費ぐせを象徴するのがクレジットカードだ。
クレジットカードは目の前で現金を渡さないので、モノを買う行為とお金を払う行為が「デカップリング」=分離する。
そうすると人々は要らないモノまで買ってしまう。何を買ったかも思い出せない支払いがたくさんあるのだ。
新しい消費の流れ
大量消費時代から、新しい消費の流れが生まれつつある。新しい流れを象徴するのが、ホワイトハウスの家庭菜園だ。
オバマ大統領はホワイトハウスのサウスローンを家庭菜園に変えた。第2次世界大戦後はじめてホワイトハウスに家庭菜園ができた。「地産地消」の広がりを象徴する動きだ。
オバマの選挙参謀はフェイスブック創始者
オバマのネット選挙参謀を務めたのが、以前あらすじを紹介したフェイスブックのなかでも紹介されている創始者の一人のクリス・ヒューズだ。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
著者:デビッド・カークパトリック
日経BP社(2011-01-13)
販売元:Amazon.co.jp
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MyBarackObama.com(今はbarackobama.comとなっている)とVote for Changeという2つのサイトを立ち上げた。
オバマの選挙活動に協力するとポイントがもらえるシステムで、オバマへの個人献金を過去最高レベルにまで集めた。
この話の「クリーム=最もおいしい話」は、若い世代の投票率を過去最高に上げたことだ。
新しい消費の3パターン
この本では新しい消費の流れの3パターンを多くの例を使って説明している。
1.プロダクト=サービス・システム
「所有より利用」だ。車を買うよりカーシェアする動きがカリフォルニア州はじめ、各地で広がっている。
カーシェアリングのZipCarは入会金75ドルと1時間あたり8ドルの利用料をとる。2009年は自動車販売は40%落ち込んだが、ZipCarの売り上げは1億3千万ドルに増えた。
マツダはフォードとの合弁会社の生産工場から撤退することを発表した。北米の車販売が落ち込んでいるようだ。カーシェアの動きが大都市中心に広まれば、米国の車販売は減っていく一方になるかもしれない。
2.再配分市場
要らなくなった赤ちゃん用品を別のものに交換する。
引っ越しに使う段ボールはほとんどが一度しか使われない。ユーズドカードボックス.comは使用済み段ボールを販売している。段ボールのマッチングサービルも行っている。Free Cardboard boxes.com
3.コラボ的ライフスタイル
モントリオールの自転車シェアbixi(バイクとタクシーの造語)は、市内に多くのbixiステーションをつくって、自転車の乗り捨てができるシステムをつくった。それぞれの自転車にはGPSとRFIDチップがついていて、どこにあるかトレースできる。
ホテルのタオルの再利用も仲間意識を強調して効果を上げている。「お客様の75%はタオルを2度以上お使いになっています」とメッセージを添えるだけで、再利用率は大幅にアップした。
マイケル・デルの弟のアダム・デルは、シェアードアースを立ち上げた。土地とタネと器具を提供するから、耕してくれる人を募集したところ、大きな運動=ムーブメントとなったのだ。
もちろんアンドリュー・カーネギー(このブログで頻繁に紹介しているデール・カーネギーではなく、こちらがカーネギー・ホールのカーネギー)が全米に建設した図書館もシェアの先駆者だ。カーネギーは米国を中心に世界で2、500以上の図書館を建設したという。
個人同士のお金の貸し借りを仲介するzopa.comもある。
CouchSurfingは素人同士の自宅に泊まらせるホスピタリティサービスだ。
bartarcard.comなどの物々交換サービスもある。
とても全部紹介できないくらい新しい消費の形が盛りだくさんで、消化不良になりそうなくらいに紹介されている。
フリーのように目からウロコという新しい発想ではないが、まさに日本語の「もったいない」という考えが世界に広がっているのではないかと感じる。
最新の世界の動きを知る上で参考になる本である。
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