孤舟
著者:渡辺 淳一
集英社(2010-09-24)
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渡辺淳一の定年後小説。
渡辺淳一の作品なので、「失楽園」とか「化身」のような要素があるのかと思っていたが、そういった場面はほとんどない。
失楽園〈上〉 (角川文庫)
著者:渡辺 淳一
角川書店(2004-01)
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化身(上) (講談社文庫)
著者:渡辺 淳一
講談社(1996-03-14)
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女性誌「マリソル」の連載小説だったそうで、ある意味なるほどと思う。
marisol (マリソル) 2011年 07月号 [雑誌]
集英社(2011-06-07)
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筆者のポリシーとして、読んだ時面白くないから小説のあらすじは詳しく紹介しない。以下簡単にあらすじを記しておく。
主人公は62歳の元広告代理店常務という設定で、社長派に属していないために、大阪の子会社社長の内示を断り、60歳で定年退職する。
筆者は昔IT子会社に出向していたときに、事業パートナーだった大手広告代理店の役員とは親しくさせて頂いたから、なんとなく身近に感じる。
退職してからは、家でいわゆる「粗大ごみ」化して、あいかわらず奥さんに「フロ」、「メシ」を繰り返す。そのうち奥さんはストレスで頻繁に外出するようになる。
定年退職してから年金生活者となったので、小遣いも月5万円奥さんから渡されるだけ。ゴルフにも行けず、他に行くところもないので、週に数回図書館などに行き、暇を持て余す生活をする。
子どもは就職して会社の寮に住む長男と、同居している会社員の長女の二人。主人公と奥さんの間を取り持つのが長女だったが、口争いが原因で長女は自分でワンルームマンションを借りて自分で住み始める。
奥さんと二人きりとなった生活がいかにもありそうな話ばかりで、妙にリアルだ。渡辺淳一はこんな作風もあったのかと、その観察眼に驚かされる。
年代も近い筆者には身につまされる話が多い。
この本を読んで、やはり食事は自分でつくるとか、自活力をつけなければいけないとか、小遣いを奥さんから支給されるようになったらおしまいだなとか、いらんことを考えてしまう。
渡辺淳一らしい面では、奥さんから100万円の軍資金を得て会員制デートクラブに登録し、27歳のOLと付き合う話が唯一の色っぽい展開だ。それとて「マリソル」の連載なので、「アバンチュール」という章題がついてはいるが、たかが知れている。
筆者もいずれ同じ立場となる。反面教師となり、楽しめる小説だった。
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