2011年07月11日

原子炉時限爆弾 反原発論者 広瀬隆さんの福島問題が起こる前の予言書

原子炉時限爆弾原子炉時限爆弾
著者:広瀬 隆
ダイヤモンド社(2010-08-27)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログでも紹介した反原子力発電論者・広瀬隆さんが2010年8月に出した原発事故「予言書」。

東電の福島第1原発事故が起こって、アマゾンでも売り切れが続いていた。そのものズバリのタイトルから、現在でもよく売れているようだ。

広瀬さんは福島原発の事故が起こってから、一躍有名になった。大手マスコミにはほとんど登場しないものの、朝日ニューススターなどのCSには出演しており、最近では原発反対を訴える社民党の福島瑞穂党首との対談がYouTubeにアップされている。



300ページ余りの本だが、論点は極めてシンプルだ。

広瀬さんの主張は、日本に原発が建設されだした当時は、大陸移動説(プレートテクトニクス理論)が定説として確立していなかった。だから現在の大半の原発の立地は大陸移動説を考慮しないで建設が決まった。

断片的な地質調査だけで、1968年に確立したプレートテクトニクス理論を考慮しないで「安全」という結論を出し、地球科学について集団的無知のまま全く進歩していないという。

日本列島は4方向から北米プレート、ユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピンプレートのぶつかる構造にあり、日本全国どこでも地震が起こる可能性がある。

特に最も危険なのは、3プレートが重なり合う静岡県だ。東海大地震が予想されている静岡県御前崎にある浜岡原発で大事故が起こる可能性はほぼ100%である。

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出典:本書31ページ

原子力発電所は、原子炉建屋とタービン建屋から成っており、温水・冷却水を循環させるパイプは全長何十キロメートルにもなる。この配管のどこか一部でも地盤隆起で断裂すると、原子炉の冷却は不能となる。

BoilingWaterReactor




沸騰水型原子炉(出典:Wikipedia)

PressurizedWaterReactor




加圧水型原子炉(出典:Wikipedia)

さらに今回福島原発で起こったようなステーション・ブラックアウト(原発内完全停電)でも冷却は不能となる。

実は2010年6月17日に地震が起こり、福島第一原発2号機で電源喪失事故が起こってあわやメルトダウンという事態となっていた。しかしちょうどサッカーのワールドカップの最中だったので、メディアはほとんど報道しなかったのだ。

津波が起これば、原子炉建屋の物理的なダメージの他に、引き波で原子炉の冷却用海水が失われる。また取水口からの水路もダメージを受けて冷却水が取り入れられないことが予想され、これでも原子炉の冷却は不可能になる。

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出典:本書91ページ

さらに原子炉はコンピューターで制御されているので、大地震でコンピューター自体がダメージを受けることもありうる。そうなると原子炉を緊急停止させる制御棒がコンピューター故障で、挿入できないおそれもある。

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出典:本書71ページ

広瀬さんは、日本で原発事故が起こると日本の国全体がほとんど再起不能なダメージを受けることを、すでに1960年4月から国はわかっていたと指摘する。

科学技術庁の依頼を受けて日本原子力産業会議が、1960年に「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」というレポートで予測していたのだ。

実はこの、「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」というレポートは既にネットで公開されている

この本では、レポートの被害予想図が紹介されている。

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出典:本書16ページ

このレポートの結論は、農業制限区域は日本全土、被害額は1兆円以上となっている。しかしこの1兆円は被災者保障が死亡85万円、立ち退き農家35万円という当時の金額をベースとしているので、今では100兆円を上回ることは間違いない。

しかもこのレポートは1966年に日本初の商業用原子炉として稼働し1998年に廃炉された小型(16.6MW)の東海村の1号機を対象にしており、いまや日本には54基のもっと大型の原発があるので、被害予想は数百兆円になるだろうと広瀬さんは予測する。

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日本の原発所在地(出典:本書152−153ページ)

他にも次のような危険性を指摘している。

★「高レベル放射能廃棄物は100万年監視しなければならない」

NUMO(原子力発電環境整備機構)の地層処分は子供だましの宣伝だ。

★青森県六ヶ所村再処理工場では日本全体を汚染する能力がある高レベル放射能廃液が貯まっている。

★六ヶ所村には大断層が走っている。

★”もんじゅ”の失敗は100%保証済み。

★プルサーマルが加速する原子炉の危険性
 ウラン燃料と比較したMOX燃料の放出放射能は非常に大きい。(対数目盛であり、1目盛りが一桁)

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出典:本書257ページ

★行き場を失った高レベル放射性廃棄物

さらに広瀬さんは、「あえて本書ではひと言も述べないが」と前置きして、「再処理・増殖炉・プルサーマルと、これほどまでにプルトニウムに固執する残る別の政治的な理由があるとすれば、読者ご賢察の通り、日本の核武装計画である。憲法を改正して日本が先制攻撃できるようにし、原爆を持ちたがる政治家が、国会に山のようにいることを忘れてはならない」と語る。

最後に広瀬さんは、次のように締めくくっている。

「天災は忘れた頃にやってくる」(寺田寅彦)

「日本人は、なぜ死に急ぐのか?」

「為せば成る 為さねばならぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」(上杉鷹山)

「救うのはあなただ!」


まさに「予言書」の感がある。広瀬さんは、ガチガチの反原発論者だと今まで思っていたが、理由のあるガチガチ論者である。

広瀬さんの議論は結局NIMBY(Not in my back yard)に過ぎないと思うが、広瀬さんの議論に論理的に反駁することは難しいと思う。

これに対抗するには、原子力は危険もあるが、原子力の平和利用こそ20世紀から持ち込まれた人類の課題であり、日本でも立地と万全の安全対策で原子力発電に取り組むことは可能だとというしかないと思う。

考えさせられる本であった。


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Posted by yaori at 22:41│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション | 環境問題

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